石ころ、石器、石油(2)
また同時に重要なのはサウジアラビアの長期的な国益の計算である。同国には無尽蔵として言及されるほどの膨大な石油埋蔵量がある。したがって、できるだけ長く石油を世界が輸入し続けることがサウジアラビアの国益である。もし、価格を過度に引き上げて新エネルギーの開発に拍車をかけてしまえば、それは国益に反する。良く使われる言葉に「石器時代が終わったのは、石ころがなくなったからではない」がある。つまり、より便利な青銅器や鉄器が使われるようになって、石器は廃(すた)れた。石ころが無くなったからではなかった。同じように石油が大量に地下に残っていても、それに代わるエネルギーが開発されれば、石油の時代は終わる。新しいエネルギーの開発を邪魔し、その時代の到来を遅らせるためにも、石油価格を余りに引き上げるのはサウジアラビアの国益ではない。という判断から同国は増産によって石油価格を抑制してきた。
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