交通事故全体に占める自転車事故の割合はどれぐらいだろうか
自転車への注目が高まる中、その自転車を起因とした事故もまた論議の対象となることが増えている。交通事故全体に対し自転車事故の割合はどれぐらいで、変化はしているのだろうか。警察庁の公開報告書「平成28年中の交通死亡事故の発生状況及び道路交通法違反取締り状況等について」などから確認していく。
今件資料によれば、2016年の日本国内における交通事故全体の発生件数は49万9201件(前年比-7.0%)、死者数は3904人(-5.2%)。
今件事故発生件数と、公開データ内の「自転車交通事故件数(法令違反のありなしを問わず)」を合わせ、「自転車による事故が交通事故全体においてどのような位置づけ・比率にあるか」を示したのが次のグラフ。事故件数は自転車が第1当事者(最初に交通事故に関与した車両の該当者のうち、過失の重い側。同程度の時には負傷程度が軽い側)・第2当事者(最初に交通事故に関与した車両該当者のうち、第1当事者以外の人)となった件数。さらに自転車同士の場合は1件として数えている。
交通事故件数全体数同様に自転車による事故件数も減少を続けている。しかし自動車ほど啓蒙活動や安全対策が徹底していないこと、利用ハードルが低いこと(運転免許は要らず、子供でも技術を取得できれば運転できる)、そして自転車の高リスク利用者(若年層、お年寄り)が増加したことなど複数の要因から、減少率はゆるかやなレベルに留まっていた。
結果として「交通事故全体」に占める、「自転車交通事故の件数」比率は増加の傾向にあった。しかし2008~2009年の21.2%をピークとし、啓蒙活動などが功を奏しだしたのか、それ以降は減少傾向に転じている。2012年では6年ぶりに交通事故全体に占める比率が2割を切り、以降さらに低下を続けている。直近の2016年における18.2%は今世紀初頭の2001年の水準。
この流れは交通事故全体ではなく「死亡者数」に限定した場合でも、大体同じような状況を示している。ただし2008年以降の比率における動きはほぼ横ばいで推移しており、注意を要する状況となっている。
高齢者の死亡比率が高いのも特徴。直近では65歳以上で2/3超、60歳以上ならば7割を超えており、さらに増加の兆しがある点にも留意が求められる。
自転車と携帯携帯電話関連の自転車事故については、少なくとも今資料では特に統計はとられていない(言及は見られない)。しかし携帯電話を操作しながらの自転車運転(軽車両運転)は、道交法71条に基づき3か月以下の懲役か5万円以下の罰金が科せられる。もっとも具体的に事故を起こしてからでは、その程度の刑罰では済まない事例になる場合も多い。万一自転車運転中の携帯電話(特にスマートフォン)の利用で道交法の適用を受けたとしても、むしろ事故が発生する前に止めてもらったことに感謝すべき。
自動車やバイクと異なり、自転車は運転の際に免許も必要とせず、事故の際の当事者の保護装置(シートベルトやエアバッグ)も無く、利用者の多くが十分な保険に入っていない。自転車に乗る際にヘルメットはともかく、バイクに乗る時のような専用のライダースーツを着たり肘・ひざ当てを付ける人は(ロードバイクのような専用の自転車を駆る人以外は)滅多にいない。
自転車で事故が起きた際のリスクは、自転車の方が自動車よりも高いとする考え方もある。もちろん「運転をするな」と禁じるわけではないが、運転の際には「走りながらの携帯電話利用」などもってのほか。くれぐれも安全運転を心がけてほしい。
■関連記事: