女性看護士の「皮膚」を奪う北朝鮮式"美談"に批判殺到
北朝鮮国営の朝鮮中央通信は11月23日、全国で「青年美風熱誠者会議」が開かれたと報じた。
青年美風熱誠者会議 多くの地域と単位で
【平壌11月23日発朝鮮中央通信】青年美風熱誠者会議が黄海北道、黄海南道、慈江道、羅先市と平壌建設委員会、文化省、8・28青年突撃隊管理局の各青年同盟(社会主義愛国青年同盟)委員会で、それぞれ行われた。(中略)
各報告者と討論者たちは、(中略)下半身が不自由な生徒を数年の歳月おぶって通いながら教育者の真心を尽くし、渦巻く川の中に飛び込んで子どもを救った美風などを伝えた。
続いて、みなしごの実の父母になり、特類傷痍軍人の永遠な道連れになった複数の単位の青年同盟の活動家と青年の行いは、わが国の社会主義制度ならではのことであると語った。(後略)
北部の両江道(リャンガンド)でも大会が開かれたが、その内容に、地域住民からは怒りの声が噴出している。米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)が報じた。
朝鮮労働党両江道委員会は同月14日、恵山(ヘサン)市内の金正淑(キム・ジョンスク)芸術劇場で青年美風熱誠者大会を開いた。
中央が提唱し、2021年から各自治体や主要工場、企業所、協同農場でも行われるようになったこの大会だが、つらくて大変な仕事に率先して取り組んだ若者を称え、その美談を広く知らしめることで社会の手本にしようというものだ。
だが、その意図とは異なり、青年美風熱誠者大会の参加者は日本の植民地支配下にあった時代の「徴用工」と揶揄されていると、現地の情報筋は述べている。彼らは炭鉱や鉱山、塩田など、誰も行きたがらない職場に「志願して向かった」と称賛されるが、実際は強制連行されたも同然だからだ。
別の情報筋は、大会の様子をこのように評した。
「いくら嘘と詐欺がはびこっているとは言っても、これは度を超えている。」
「参加者の(嘘の)討論を聞いているとゾッとして鳥肌が立つほどで、聞くこと自体が罪であるように感じた」
例えば、今年7月の金正淑郡の金正淑邑中学校の火災現場に駆けつけた20代の看護師は、大火傷を負った生徒の命を救うために、自らの血を抜いて献血し、皮膚を剥ぎ取って移植したと熱弁を振るった。
(参考記事:響き渡った女子中学生の悲鳴…北朝鮮「闇病院」での出来事)
しかし、実際は「是が非でも生徒たちを助けよ」という金正恩総書記の指示があったため、金亨稷(キムヒョンジク)郡病院と両江道総合病院に務める35歳未満の男性医師と、26歳未満の女性看護師から、強制的に血を抜き、皮膚を剥ぎ取って移植に使ったという。血液や皮膚を寄贈する人が誰もいなかったからだ。
それをあたかも自らの意思で行ったかのように事実を捻じ曲げた嘘の「美談」に、会議参加者は怒りを禁じ得ず、周囲の人々に話したようだ。やがてこの話は地域全体に広がり、「なぜこんな大会をやるのかわからない」(情報筋)との批判の嵐が巻き起こっているという。