トルコ大地震 JAXA「だいち2号」の観測から地図と重ね合わせて誰でもマップ作成が可能なデータ公開
トルコ南部で2月6日に発生した大地震の状況について、JAXAの地球観測衛星「だいち2号(ALO-2)」が観測し、建物の損壊など被害の広がりを地図と重ね合わせることが可能なデータが公開された。観測データはALOS-2が2月8日(現地時間12時40分ごろ)に観測したもので、シンガポール国立の南陽理工大学内にあるシンガポール地球観測所が解析を行った。データは広く無償公開され、Google EarthやGISソフトで利用できる。
2月6日の現地時間で午前4時すぎ、トルコ南部のシリア国境に近いガジアンテプ県でマグニチュード7.8の大規模な地震が発生した。大規模な余震が続き、WHOによれば被災者はトルコとシリア両国で最大で2300万人に上る可能性があるという。
大きな地震が続いているため被災地へのアクセス手段が限られ、被害の全容を把握することが難しくなっている。その中で各国の宇宙機関や衛星運用企業は人工衛星による広域の災害観測を進めている。JAXAの地球観測衛星ALOS-2は、レーダーで地上を観測し、発災前と後のデータを比較することによって建物の損壊など地表の大きな変化が発生した場所を分析することができる。
ALOS-2は2月8日にトルコのエルビスタン周辺からシリアのアレッポの南西側にかけて約600平方キロメートルの地域を観測した。観測データはアジア太平洋地域で災害の情報を共有する国際プロジェクト「センチネル・アジア」を通じて公開され、シンガポール地球観測所がNASAと共に解析を行った。発災前の2021年4月7日、2022年4月6日のデータと比較され、被害推定マップとして公開されている。
シンガポール地球観測所 トルコ・シリア地震データ公開
https://eos-rs-products.earthobservatory.sg/EOS-RS_202302_Turkiye_Syria_Earthquake/
解析されたALOS-2のデータは位置情報を持つ画像として公開されており、Google Earthで読み込んで解析できる「KMZ」および、QGISなどの一般的なGIS(地理空間情報システム)ソフトで利用できるGeoTIFF形式のファイルが含まれれている。ファイルをダウンロードして読み込むだけで利用できる。
被害の程度は黄色から赤への変化(赤いほうが発災前と比較して大きく変化しており、被害が大きいと推定される)として表されている。1ピクセルは30メートル四方に相当する。
観測データから、大きな被害が見られる地域は、都市部にも山間部にも広がっていることがうかがえる。植物に覆われたエリアでは解析の誤差が大きくなるという傾向はあるものの、支援ルートの計画作りや人口密集地以外の被害の把握に役立つ。都市では、トルコのカラマンマラシュ県の県都カフラマンマラシュやガジアンテプ県の都市イスラーヒエ、ヌルダージなどで大きな被害が見られる。観測範囲には、ガジアンテプ市やシリアのアレッポの一部も含まれている。
さらに米国の地球観測企業Maxarは、災害時の人道支援プログラム「オープン・データ・プログラム」で緊急観測画像を公開している。こちらは分解能が最高で30センチメートルと高精細な光学衛星画像で、現在は2月7日の画像を多数公開している。画像は位置情報の入ったGeoTIFF形式となっており、氏名とメールアドレス、所属(個人でも可)を登録すれば自由にダウンロード可能だ。Maxarの画像はALOS-2のデータ解析時にも利用されており、さらにALOS-2の被害推定マップとMaxar観測画像の重ね合わせが可能だ。
Maxar TURKEY AND SYRIA EARTHQUAKE 2023
https://www.maxar.com/open-data/turkey-earthquake-2023
GISソフトでALOS-2の被害推定マップとMaxarの2月7日の観測画像を重ねてみると、損傷が住宅または道路など都市のどのようなエリアに発生しているのか把握しやすくなった。情報は今後の支援ルートの計画や二次被害の低減などにつながる。地球観測衛星のデータは欧州宇宙機関の衛星なども含め、今後さらに公開される。こうした情報を積み重ね、被災地支援にあたる組織やメディアに届くことを願っている。