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日銀は18日の決定会合で動く?前回修正時の12月会合前との奇妙な共通点、推測の結果はYCC解除に

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 日銀は1月17、18日の金融政策決定会合で動くのかと問われれば、こうなってしまった以上、何もなしとの回答はありえなくなりつつあるため、動く可能性は高いと市場関係者ならずとも多くの人が見ているであろう。

 前回12月20日の金融政策決定会合では、国債買入額を大幅に増額しつつ、長期金利の変動幅を従来の±0.25%程度から±0.50%程度に拡大することとした。ありえないとされた(個人的には年度内修正はあると予想、いや期待していた)イールドカーブコントロールの調整を日銀が行ってきたのである。しかも全員一致で。これはどういうことだったのか。

 この12月のサプライズには予兆のようなものとなっていた記事があった。

 岸田政権が安定的な経済成長を実現するための政府と日銀の役割を定めた共同声明を初めて改定する方針を固めたことが12月17日に、複数の政府関係者への取材で分かったと共同通信が報じた。

 そして注意すべきは、12月22日のロイターの記事に次のようにあったことである。

 別の関係者によると、日銀が許容幅拡大に向けた根回しに入ったのは(12月の)決定会合の数日前。政策決定に関わる関係者が踏み込んだ対外発言を禁じられる「ブラックアウト期間」に入る直前だった。「審議委員への根回しも直前だったが、反対意見が出なかったのは政府と同様の問題意識を持っていたことの裏返し」と、この関係者は言う、とあった。

 この関係者とは文面から見て日銀の金融政策にかかわる事務方執行部あたりかとみられる。17日の共同通信の記事と関連付けると、政治的な配慮が働いたように思われる。しかもそのタイミングが、「ブラックアウト期間」に入る直前だったというところにも注意したい。

 日銀のブラックアウトルールとは、各金融政策決定会合の2営業日前(会合が2営業日以上にわたる場合には会合開始日の2営業日前)から会合終了当日の総裁記者会見終了時刻までの期間は、国会において発言する場合等を除き、金融政策及び金融経済情勢に関し、外部に対して発言しないというものである。

 そして今回、市場で急速に日銀の政策再修正観測が拡がったきっかけが、1月12日の7時45分の読売新聞の記事であった。

 読売新聞が「日銀、大規模緩和の副作用点検へ…年末の政策修正後も市場金利にゆがみ」と報じた。そこには「日本銀行は17、18日の金融政策決定会合で、大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」、「必要な場合は追加の政策修正を行う」ともあった。

 今回ブラックアウトに入るのは13日からとなる。その前に「大規模な金融緩和策に伴う副作用を点検する」との記事が出たのである。これは「副作用を点検させる」と読めなくもない。

 ブラックアウトルールとは、金融政策を決めるメンバーが政策決定会合を控え、金融政策マターについて発言することを禁じたルールとなる。つまりブラックアウト期間に入ると、金融政策を決める当事者達が、事前に出た記事に対して反論をしたり、市場の観測について否定することもできないことになる。

 たまたま?だったのかもしれないが、12月と同様のようなタイミングでの読売新聞の記事でもあった。

 実は1月6日にブルームバーグが、日本銀行は、昨年12月の金融政策決定会合で決めたイールドカーブコントロールの運用見直しの影響と効果を見極める局面にあり、現段階でさらなる修正を急ぐ必要はないとみているとの記事があった。

 複数の関係者からの話であったそうだが、この記事からみて日銀は1月17、18日の金融政策決定会合では、イールドカーブコントロールの運用見直しの影響と効果を見極めるため、政策変更はなしとしようとしていた可能性があった。

 12月においても、黒田総裁は12月6日の衆議院の財務金融委員会で、日銀が目指す2%の物価安定目標の実現にはまだ時間がかかるとして、金融政策の枠組みの見直しなどの議論は時期尚早だという認識を示していた。

 11月10日に岸田首相は官邸で黒田総裁と約40分間会談をしたが、ここで何かしら示唆があった可能性はあった。しかし、柔軟な政策修正までは黒田総裁が想定していたとはむしろ考えづらい。

 日銀が許容幅拡大に向けた根回しに入ったのは(12月の)決定会合の数日前というロイターの記事のほうが信憑性は高いのではなかろうか。

 ということで、今回も日銀関係者の発言ができない状況となる直前のタイミングで、何かしらの修正に向けた根回しが進められているのではとも推測できる。

 年末の政策修正後も市場金利にゆがみが生じており、点検した結果、無回答ということはないであろう。また、前回のように0.25%程度レンジを拡大といったことも意味はないというか歪みを増幅させるだけとなったことも立証されてしまっている。その結果、可能性として最も高いのは「イールドカーブコントロールの解除」ということになるのではなかろうか。

 あくまでこれは推測を重ねたものであり、著者の予測となってしまうのではあるが。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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