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「50-50クラブ」の裏で大谷翔平が樹立していたもう一つのMLB初の金字塔

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
MLB史上初の「50-50クラブ」を創設した大谷翔平選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【MLB史上初の「50-50クラブ」を創設】

 打者に専念したシーズンでも、大谷翔平選手がMLBに新たな歴史を築き上げた。

 現地時間9月19日のマーリンズ戦で3本塁打と2盗塁を記録し、遂に史上初の「50-50クラブ」を創設することに成功したのだ。またこの金字塔により、2年連続かつ史上2人目の両リーグでのMVP受賞を大きく引き寄せたと考えられる。

 というのも、記者投票の締め切りはポストシーズン開幕前までなので、今回の金字塔はMVP投票資格者に強烈なアピールになった一方で、対抗馬とされるメッツのフランシスコ・リンドア選手が腰痛によりここ数試合欠場を余儀なくされており、大谷選手にとってますます有利な展開になっているからだ。

【自身初の本塁打&打点の二冠王獲得もほぼ手中に】

 しかもこの日の試合は、ドジャースにとって12年連続のポストシーズン進出がかかった大事な試合だった。もちろん大谷選手にとっても、MLB移籍以来ずっと憧れ続けた夢の舞台に初めて立てるという一世一代の試合だった。

 そして大谷選手の集中力は、これまで以上に研ぎ澄まされていたように見えた。それを裏づけるかのように、この日の大谷選手は3本塁打と2盗塁のみならず、6安打、10打点の活躍を見せ、チームの大量20得点を牽引している。

 この快進撃により、打点部門でリーグ2位につけていたブルワーズのウィリー・アダメス選手を大きく引き離しており(現時点で11打点差)、自身初の二冠王獲得もほぼ手中にしようとしている。

 また試合前まで.978まで下降していたOPS(出塁率と長打率を足したもの)が、一気に1.005まで上昇していることもつけ加えておきたい。

 9月はやや打撃不振に陥っていた感が否めないが、改めて大事な試合、大舞台で強さを発揮できるカリスマ性を証明してくれたように思う。また「40-40クラブ」に到達した際も史上初めて同じ試合で2つ同時に王台をクリアしていたが、今回もまた同じ試合で達成してしまったことも、彼のカリスマ性に尽きるのではないだろうか。

 ポストシーズンを戦う上で重要になってくるのが、レギュラーシーズンの終え方だ。もちろん調子を上げた状態でポストシーズンに望むのが理想的であり、この日の快進撃はドジャースにとっても、大谷選手にとっても好材料でしかない。

【大谷選手が樹立していたもう一つのMLB初の金字塔】

 しかもこの日の活躍そのものが、実は50-50クラブに負けないほどのMLB初の金字塔だったのだ。

 MLBの記録関連を専門に扱う「OptaSTATS」によれば、1920年に打点が公式記録になって以降、「1試合10打点以上」、「1試合6安打以上」、「1試合5長打以上」、「1試合3本塁打以上」、「1試合2盗塁以上」のすべてのカテゴリーをクリアした初めての選手になった。

 しかもこの記録は、キャリアを通してクリアしているかどうかというものだ。それを大谷選手はたった1試合ですべてクリアしてしまったことに、ただただ驚嘆するしかない。

 試合後に「スポーツネットLA」で解説者を務めるジェリー・ヘアストンJr.氏は、以下のように大谷選手を称えている。

 「あらゆるスポーツを含め最高のパフォーマンスの一つだった。これまで各世代で活躍した選手たちに敬意を表しているが、自分の目にはショウヘイが史上最高のオールラウンド選手に映っている」

 打者に専念した今シーズンの活躍を見て、大谷選手の伝説は、彼が現役引退するまで毎年のように書き加えられていくように感じている。

 とりあえず初のポストシーズンでどんな活躍をしてくれるのか、胸を膨らませながら待つことにしよう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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