尖閣諸島問題に関心がない人は1/3強、その理由は…
尖閣諸島問題に関心がある人は6割を超える
内閣府は2017年10月、尖閣諸島に関する世論調査(※)の結果概要を発表した。その公開資料から尖閣諸島への関心度合いなどを確認する。
尖閣諸島は行政的には沖縄県石垣市の一部であり、南西諸島西端に位置する魚釣島、北小島、南小島、久場島、大正島、沖ノ北岩、沖ノ南岩、飛瀬などから成る島々の総称。戦後発効したサンフランシスコ講和条約で国際的に日本領帰属として確定しており、歴史的にも国際法上も疑うことなく、日本固有の領土である。ところが1960年代後半に東シナ海で石油埋蔵の可能性があることが指摘されて「以降」、中国や台湾が領有権を主張し始め、外圧や実力行使を繰り返している。
なお現時点ではすべてが無人島で、久場島(及び周辺小島)は私有地、その他は国有地となっている。
その尖閣諸島(問題)について関心があるか否かを聞いたところ、強い関心を持つ人は28.4%、どちらかといえば関心がある人は33.8%となり、合わせて62.2%が関心派との結果が出た。
逆にどちらかといえば関心が無い人は22.1%、強く関心が無い人は12.8%となり、合わせて34.9%が無関心派に属する形となった。今調査対象母集団における尖閣諸島そのものの認知度は91.3%なので、「尖閣諸島を知っているが、興味関心は無い」人が3割近くいる計算になる。
2014年に実施された前回の調査結果と比較すると、関心派の大幅な減少、無関心派の増加が確認できる。情報取得は主に4マス、特にテレビやラジオなどの電波媒体に寄るところが大きいので、それらのメディアでの取り扱われ方が質・量ともに劣化したのだろうか。
関心派と無関心派、それぞれの心のうちは
関心派・無関心派それぞれにつき、その内容・理由を尋ねた結果が次以降のグラフ。まずは関心派の関心内容だが、「我が国の尖閣諸島に対する領有権の根拠」を挙げる人がもっとも多く、55.0%との結果となった。
次いで「歴史的経緯」や「中国・台湾の主張」「日中関係に与える影響」「日本及び中国・台湾以外の各国・地域の態度」が続く。見方を変えれば今件問題に関して広報・啓蒙・公知を行う場合、これらの要件に重点を置いて情報を提供すれば、多くの「知りたい」「確認したい」との需要に応えることができることになる。
また「他の人の意見や考え」「研究成果・論文」への回答値が低いのにも注目したい。この結果からは他の個人やグループなどの主張や意見に興味はなく、関連問題における事実、実情を知りたい、興味があるといった関心派の認識が透けて見える。
一方、無関心派が関心を示さない理由として挙げたのは「自分の生活にあまり影響がない」で、56.4%。次いで「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会がなかった」が30.3%と続いている。
尖閣諸島問題は国レベルの事案だが(日本国としては「尖閣諸島に関する領有権の問題」そのものがそもそも論として存在しないとの見解であることに注意)、一人一人の立ち位置から見れば、直接生活には関係の無い範ちゅうの話と受け止められるのも無理はない。
ただしこれは周辺海域の施政権にも関わる問題となり、対応次第では同諸島以外の問題にも連鎖反応が生じるリスクも大いにある(東シナ海ガス田問題が好例)。要は「尖閣諸島だけの問題で、自分の日常生活には影響がない」と回答者が考えているに過ぎない、見方を変えれば回答者の認識・情報が不足していることになる。この点では第2位の回答「尖閣諸島に関して知る機会や考える機会がなかった」も近いものとなる。
第3位以降の「内容が難しい」「紛争や武力衝突など負のイメージを連想する」は、個々の心境・性質によるところもあり、仕方のないものとの判断もできる。しかし第1位・第2位の理由は、多分に啓蒙・情報公知不足によるところが大きい。
「内容が難しい」の項目で回答率が漸増する動きを示していることから、情報収集をしたものの、その内容に難儀して関心を失った事例が増加している可能性がある。これらの動きもあわせ、今調査の調査要目にある「(調査目的として)尖閣諸島に関する国民の意識を調査し、今後の施策の参考とする」を誠実に、そして確実に実行することを期待したい。
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※尖閣諸島に関する世論調査
2017年8月3日から13日にかけて、全国18歳以上の日本国籍を有する人3000人に対し、調査員による個別面接聴取方式によって行われたもので、有効回答数は1771人。前回(2014年実施)までの調査では20歳以上を対象としていたのに対し、今調査からは18歳以上を対象としているため、2014年分までと2017年分以降との間に厳密な連続性はないことに注意が必要。
(注)本文中の各グラフは特記事項の無い限り、記述されている資料を基に筆者が作成したものです。