平壌郊外の養豚場でブタが大量死、アフリカ豚コレラに感染か
韓国の漣川(ヨンチョン)で27日に発見されたイノシシの死体から、家畜伝染病「アフリカ豚コレラ」(日本で発生している「豚コレラ」とは別のもの)のウイルスが検出されたと29日、国立環境科学院が発表した。これでウイルスへの感染が判明したイノシシは16頭になる。
韓国で猛威を振るっているこのウイルス、公式な感染ルートは確認されていないが、感染はいずれも北朝鮮に面した軍事境界線に近い地域で起きていることから、イノシシが媒介となっているものと推測されている。そのため、韓国当局は野生のイノシシの駆除に乗り出している。
感染源と目されている北朝鮮では、慈江道(チャガンド)で今年5月、アフリカ豚コレラの発生が確認された。その勢いは止まっていないようで、平壌のデイリーNK内部情報筋は、平壌郊外のブタ牧場(養豚場)でブタの大量死が発生したと伝えている。
平壌郊外の寺洞区域の徳洞里(トクトンリ)にあるブタ牧場(養豚場)では9月初旬、13の豚舎のうちの1つで、ブタが大量死した。この養豚場全体では1万頭のブタが飼育されていたことから、700頭から1000頭のブタが死んだと思われる。
ここ以外でも2〜3ヶ所の養豚場で数千頭が死んでいるが、外部にはいっさい告知されておらず、診断と防疫当局への報告、防疫作業を内密に済ませた模様だ。そのため、市民は当局の豚肉販売禁止令を通じて、何かが起きたことを察するしかない。
平安南道(ピョンアンナムド)の情報筋は、防疫所から係官がやってきて豚肉販売を取り締まったことで、「病気が流行っている」との噂が立っているが、依然として売買は行われていると伝えた。黄海南道(ファンヘナムド)の情報筋も、現地の市場では表立って販売していないものの、商人が「豚肉は要らないか」と客引きをする形で販売が続けられていると伝えた。
米政府系のラジオ・フリー・アジア(RFA)は、豚肉販売禁止措置により、市場での豚肉の値段が高騰していると報じた。
咸鏡北道(ハムギョンブクト)清津(チョンジン)の情報筋は、市内のすべての市場で豚肉が高騰し、また、「中国から輸入された豚肉で感染が広がった」との噂が立ち、輸入が中止されたことで、品薄になったことも影響していると見ている。
禁輸措置は夏から始まったが、商人は命令に従わず豚肉を売り続けていたため、価格は比較的安定していた。豚肉販売に必要な「防疫検査確認証」はワイロさえ払えばいくらでももらえるため、感染が拡大した模様だ。
9月初旬までは1キロ1万2000北朝鮮ウォン(約156円)で売られていたが、今では2万北朝鮮ウォン(約260円)まで高騰した。アフリカ豚コレラウイルスはブタやイノシシの病気であるため、感染した豚肉を人間が食べても感染しないが、流通はウイルス拡散に繋がる。当局は豚肉販売の全面禁止措置を取ったものの、すでに手遅れだった。
豚肉価格の高騰に連動して、他の物価も上がっていると別の情報筋が伝えている。コメの価格は、秋の収穫に向けて上昇し、収穫が終われば下がるというのが例年の値の動きだが、今年は高止まりしており、ただでさえ不況に苦しむ商人や庶民を苦しめている。
(参考記事:北朝鮮「アフリカ豚コレラ検疫所」が風俗業に変身した理由)