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高齢者のネットアクセス環境を確認しよう

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 高齢者にもインターネットは生活に潤いを与えるツールに違いないのだが

パソコンメイン、従来型携帯も活躍中な高齢者のネット生活

インターネットがインフラとして急速に普及する一方で、数・人口比で増加する高齢層における技術ギャップが懸念されている。現状で高齢者はどれほどネットアクセス環境と面しているのだろうか。総務省が2015年7月に発表した「通信利用動向調査」の公開値を基に確認していく。

高齢者だけでなく調査対象母集団全体(6歳以上)では、自宅のパソコンでインターネットを利用している人は53.5%、自宅以外のパソコンを用いている人は21.7%。スマートフォンも含めた携帯電話でインターネットへのアクセスをしている人は61.6%に達している。

シニア層(今件では60歳以上と定める)においては中堅層と比べて従来型携帯電話によるインターネットの利用が多く、インターネットの利用をけん引している状態にある。そこで「携帯電話」を「従来型携帯電話(フィーチャーフォン)」と「スマートフォン」に分割し、詳細を確認したのが次のグラフ。

↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2014年末)(全体と高齢者限定)
↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2014年末)(全体と高齢者限定)

全体では47.0%にも達している「スマートフォンによるネットアクセス者」も、60歳以上では非常に大人しいものとなっている。そして70歳代後半まで含めて自宅パソコン経由の利用がトップではあるが、従来型携帯電話の利用率も非常に高い。80歳以上ではパソコンすら抜いている。

これは「今まで使っていた従来型携帯をそのまま愛用し続けている」「パソコンは利用ハードルが高いので遠慮しがち」「メールや簡単なソーシャルメディアへのアクセスが出来ればそれで十分」など、シニア側の利用実状が理由であると考えられる。

「それらの機能のみで十分ならば、どのみちすべての機能が使える、新型のスマートフォンでも特に弊害はないではないか」との意見もあろう。しかしスマートフォンは従来型携帯電話と比べて多機能=覚えねばならないことが多い。その上「タッチパネル製品が使いにくい」といった、シニア層ならではの問題点が理由として挙げられる(無論スマートフォンの普及がこの数年の間の出来事なので、「昔から愛用」の事例はごく少数のものとなる)。さらにいえば機能を使わなくても料金体系の上で、スマートフォンは従来型携帯電話と比べて割高になるのも、シニア層でスマートフォンが敬遠される一因でもある。

前年比を算出すると

2014年末においても、パソコンと従来型携帯電話が、シニア層にとって重要なインターネットへの窓口であることに違いは無い。しかし少しずつ情勢は変化を迎えている。次に示すのは前年2013年末の状態との差を算出したものだが、高齢層におけるインターネット事情の変化がすけてみえる。なお2013年から2014年にかけて区分などの変化が行われているため、2014年単独の結果とは年齢区分の上で少々異なる仕切り分けをしている。

↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2013年末から2014年末への変移)(全体と高齢者限定)
↑ インターネット機器としての個人の携帯電話やパソコン利用率(年齢階層別/2013年末から2014年末への変移)(全体と高齢者限定)

シニア層でも比較的若い世代、60代前半では従来型携帯電話の利用率がグンと下がり、その分スマートフォンとタブレット型端末の利用が上昇している。これらの世代でインターネット利用に関するシフトが若年層同様に起きていることが分かる。

一方で自宅パソコンに変化は無く、自宅外パソコンの利用率が下がっていることから、これまで高齢層が自宅以外(図書館などの公的機関だろうか)で利用していた層が、自前のネット利用端末としてスマートフォンを手に入れた状況が想像できる。

上記で触れたタッチパネル周りの問題に関して技術的な解決報道はまだ見聞きしていない。一方、料金体型とスマートフォンとの関係については、「使い勝手や外観は従来型」「OSなどはスマートフォン」「料金体系は従来型かそれに近い」様式を有する、ガラホなるカテゴリの端末が登場し、普及が始まっている。高齢者におけるインターネット利用事情にも、少なからぬ影響を及ぼしそうではある。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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