【極度の潔癖症だったウルトラマンって誰?】未熟なスーパーヒーローが立ち向かった強者たちとは?
みなさま、こんにちは!
文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)と申します。
特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。
暑い7月もいよいよ中盤に・・・来る夏休みへの期待に胸が高まりますが、皆様いかがお過ごしですか?(私は夜の寝苦しさに翻弄され、何度も起きてしまい寝不足です)
さて、今日のテーマはスーパーヒーローの「成長」です♪
「なんか今日は核心的なテーマきたね」とご指摘を頂きそうですが、
そんなに難しいお話しは致しません。
ひとくちにスーパーヒーローといっても様々ですが、例えばウルトラマンや仮面ライダーといった日本を代表するヒーロー達。
彼らは人々の暮らしを脅かす怪物を打ち倒す、大いなる「強さ」を持っていました。
パンチやキックといった格闘技に加え、スペシウム光線やライダーキックをはじめとする強力な必殺技。限界まで戦い抜いたヒーロー達が最後に放つ大技に、テレビや映画を観ていた子ども達は心躍らせていました。
このように、肉弾戦に長け、必殺技を出すといったヒーロー達のお馴染みの姿ですが、彼らはどうしてそんなに強いのでしょう?
ヒーローに変身するのは私達と同じ人間なのに、なぜ動じることなく怖い怪物と戦えるの?
強さも勇気も、もちろんヒーローとなる上で大切な要素であると思いますが、これらの要素は誰しもがはじめから持っていたわけではありません。
地球を守ってきたヒーロー達は、物語の中でたくさんの戦いを経験し、その活躍を支える誰かとの交流を経ながら、強さと勇気を理解し、そして己の弱さを克服したことで、ヒーローへの道を駆け上がっていきました。
つまり、ヒーローだってはじめから完璧な超人ではなかったのです。
こうした完璧ではない、どこか人間臭さを感じる英雄や女神達の物語は、古代から人々によって創造されており、彼らの物語は世界各地の博物館やテーマパークにて、書物や美術品、演劇といった文化資源を通じて追体験することが出来ます。
ポリネシア・カルチャーセンター( Polynesian Cultural Center)
住所:55-370 Kamehameha Hwy, Laie, HI 96762
TEL:+1 800-367-7060
公式サイト:https://polynesia.jp/(外部リンク)
私もちょくちょくアメリカ本土を訪れたり、ハワイでよくロングステイをしていたので、アメリカの博物館でギリシア神話の世界観を楽しんだり、ハワイのテーマパークでポリネシアの文化や伝説に触れたりしながら、物語の中で奮闘する英雄や女神達に対し、想像の翼を広げていたものですが・・・。
今回は、現代の神話ともいえる日本のアニメや特撮等の「サブカルチャー」に焦点を当て、株式会社円谷プロダクション制作のウルトラマンシリーズ、そして株式会社東映アニメーション制作のプリキュアシリーズに焦点を当て、各シリーズに登場した2人のスーパーヒーローをご紹介します。
この2人に共通しているのは、「自分の弱さに打ち勝ったこと」。
強大な敵を前に恐怖を感じるだけに留まらず、汚れることを気にしたり、敵前逃亡したり、半泣きで戦ったり・・・。
そんな人間的な弱さが露呈していた2人が、どうやって名実共にヒーローとなれたのか?
その活躍を概観してみたいと思います。
☆本記事は「私サブカルチャーものにくわしくないわ」、「難しい話はちょっと・・・」というみなさまにもお届けできるよう、概要的かつ深すぎないお話を心がけておりますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。
【潔癖症のウルトラマン登場?】ウルトラの力を信じて一生懸命シュワッチ!ウルトラマンゼアスとは何者か?
さて、ここからは個々の作品に焦点を当てて、ヒーロー達をご紹介したいと思います。
最初の事例は、我が国を代表する国民的ヒーロー番組として定着しているウルトラマンシリーズからご紹介したいと思います。
みなさまはウルトラマンシリーズをご覧になられたことはありますでしょうか?
ウルトラマンシリーズは株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』を起点とする特撮シリーズです。
1966年に『ウルトラマン』が放送され、M78星雲「光の国」からやって来た身長40mの銀色の宇宙人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。
『ウルトラマン』の放送終了後も、『ウルトラセブン(1967)』や『ウルトラマンタロウ(1973)』、V6・長野博さんが主演を務めた『ウルトラマンティガ(1996)』、つるの剛士さんが出演された『ウルトラマンダイナ(1997)』、杉浦太陽さん主演の『ウルトラマンコスモス(2001)』等、現在まで派生作品が制作され続けており、7月8日からは最新作『ウルトラマンブレーザー(2023)』(外部リンク)が放送中です。
さて、そんな半世紀以上に渡る長いウルトラマンシリーズの歴史において、本記事では特に異色だったウルトラマンをご紹介したいと思います。
そのウルトラマンとは、1996年公開の映画『ウルトラマンゼアス』に登場したヒーロー、ウルトラマンゼアス。
「顔が真っ赤っかだね」なんて声が聞こえてきそうですが、彼も立派なウルトラマンの一員。
強力な光線技も放てますし、華麗な身体技も有していますが、それは血と汗が滲んだ特訓の賜物。今回はそんなゼアスに焦点を当ててお話しをしたいと思います。
ウルトラマンゼアスは、地球から299万光年の彼方にあるZ95星雲「ピカリの国」からやって来たウルトラマン。汚れてしまった地球をキレイにする使命を帯びて地球へやってきました。
歴代のウルトラマンはM78星雲「光の国」から地球を守るためにやって来たのに対し、ゼアスは地球をキレイにするために「ピカリの国」からやってきたという・・・なんとも異色な背景を持っていました。
ゼアスは普段、ガソリンスタンド「M・Y・D・O(マイド)」の見習い店員・朝日勝日(実は超宇宙防衛機構「M・Y・D・O(マイド)」の見習い隊員)として働き、怪獣が出現すると電動歯ブラシ型の変身アイテム「ピカリフラッシャー」で歯を磨きながら変身します。
歯ブラシで変身する点を除けば、ここまでは歴代ウルトラマンと変わらないのですが・・・実はこのウルトラマンゼアス、ウルトラマンとして活動する上で致命的かつ固有の弱点を持っていました。
それは、「極度の潔癖症」だったのです。
体が少しでも汚れていると最大限のパワーを発揮することが出来ず、完全無菌状態でなければ光線技(スペシュッシュラ光線)の威力を発揮できないという、なんとも困った弱点を持っていたのです。
さらに、ゼアス自身も一人前のウルトラマンではなく、光線技もまだまだ未完成。
先述した初代ウルトラマンに憧れて練習を重ね、光線技を体得していますが、鏡の前で練習をしてしまったために構え方が逆になってしまったり、人知れず大渓谷の中で光線技の練習を重ねるも光線が思わぬ方向に飛んでしまい、ゼアス自身に光線が跳ね返った挙げ句、よろけた拍子に泥水で手を汚してしまい、崖から流れる水で手を洗浄・・・。
「ただの間抜けじゃないか!」なんて声が聞こえてきそうですが、ゼアス自身もこの状況を敵の宇宙人(ベンゼン星人)に察知され、「ウルトラマン一族の落ちこぼれ」と揶揄されてしまいました。
しかしこのゼアス、上述した困った弱点を有する反面、勇気を出せばメチャメチャ強いという二面性も秘めていました。
ゼアスは、同じ職場で働く女性隊員(星見透隊員)に思いを寄せているのですが、ある日透隊員がベンゼン星人にさらわれてしまいます。透隊員を助けるため、勝人はゼアスに変身するために、電動歯ブラシ(変身アイテム)で変身を試みるのですが、顔が汚れていることを気にして変身ができません。「ダメだ!ダメだ!ダメだ!」と自棄になる勝人は透の言葉を思い出します。
「そんなの気のせいです。そんなの自分に負けてるだけです。私、ちょっとの汚れくらい平気な男の人が好きです。」(透)
透の言葉に奮起し、勝人とは気力を取り戻します。「よぉーし!やるぞぉー!透ちゃーん!」
その後、勝人は無事ウルトラマンゼアスに変身し、透をさらったベンゼン星人達に戦いを挑み、華麗なキックやチョップといった身体技を駆使し、さらに訓練したスペシュッシュラ光線の発射にも成功します。その結果、ゼアスは透を救い出すことが出来たのでした。
上述してきたこの映画『ウルトラマンゼアス(1996)』。本記事では主人公のウルトラマンゼアス(朝日勝人)に焦点を当てていますが、作品全体はギャグと遊び心に溢れた作品です。勝人が所属する特捜チームである「M・Y・D・O(マイド)」ですが、なんと当チームを率いたのは、ご存知「とんねるず」のお二人でした。隊長の大河内神平を石橋貴明さんが演じ、副隊長の小中井仏吉を木梨憲武さんが演じていたのです。さらに隊員の武村岩太は東北楽天ゴールデンイーグルス監督を務めた大久保博元さんと、かなり個性的かつ破天荒な性格の隊員・隊長達が集結し、怪獣相手にドタバタ劇を起こしていました。
また悪役のベンゼン星人も鹿賀丈史さんが演じている等、非常に豪華なキャスティングが結集して物語が展開されておりますので、「ウルトラマンファンだけど本作はまだ未見!」という方や「ウルトラマン観たことないけれども、お話しのネタに観てみたい!」という方にも是非お勧めの作品です。約60分という短めの映画なので、バラエティ番組を観るように気軽に視聴してみてはいかがでしょう♪
【ゼアスの戦いは終わらない?】今度の敵は黒いウルトラマン!ゼアスがアンディ・フグからヒントを得た一撃必殺の大技とは?
さて・・・上述してきた『ウルトラマンゼアス』の物語ですが、彼の活躍はここで終わることはありませんでした。好評を得た『ウルトラマンゼアス(1996)』はその後、次回作『ウルトラマンゼアス2 超人大戦・光と影(1997)』が公開されました。
舞台は、前作『ウルトラマンゼアス』の物語から1年後ー。
かつてゼアスと激しい死闘を繰り広げたベンゼン星人の妻・レディベンゼン星人(演:神田うの)は、地球征服の野心とウルトラマンゼアスの抹殺のため、戦闘ロボット「ウルトラマンシャドー」を送り込む。南極を舞台にシャドーはゼアスと対決するも、その能力に怯えたゼアスは残虐な殺人技「シャドー・メリケンパンチ」を顔面に喰らい、片目を負傷してしまう。
「戦いが怖くなったんです」(勝人)
この戦闘をきっかけに、戦いへの恐怖を刻まれてしまった勝人は「M・Y・D・O(マイド)」を離れ、ウルトラマンゼアスになることさえ放棄してしまう。そんな時、勝人は「心を鍛えよ」という父からのメッセージを受け、空手道場「正道会館」の門を叩く。師範代(演:アンディ・フグ)が披露したかかと落としに感銘を受けた勝人は、その技を教えて欲しいと師範(演:角田信朗)に頼み込む。正道会館は勝人の強い思いを受け入れ、勝人はかかと落としの特訓を開始するのだった。
一方、市街地に出現したウルトラマンシャドーは人々の心をコントロールし、自らの基地(シャドー・アイランド)に連れ去ってしまう。連れ去られた人々の中には透も含まれていた。
「勝人さん・・・地球を守って。あなたは・・・あなたは・・・」
「僕は・・・僕は・・・ウルトラマンゼアス!!」(勝人)
さらわれた透の声を聞き奮起した勝人は、師範に与えられた課題を完成させる。
「お前はもう、自分の力を信じることが出来る。」(師範)
勝人はゼアスに変身し、捕らえられた人々が収容されたシャドー・アイランドへ向い、ウルトラマンシャドーと再戦。もはや怯えながら戦ってきたかつてのゼアスではない。ゼアスは師範代から着想を得た大技「ウルトラかかと落とし」をシャドーに打ち込み、さらに新技「クロス・スペシュッシュラ光線」を放射し、強敵・ウルトラマンシャドーを破壊した。レディベンゼン星人は地球を我が物とするためにまたやって来ると言い残して地球を去る。ゼアスの活躍により人々は救出され、その後も勝人は「正道会館」での鍛錬に励むのだった。
ギャグやおふざけが随所に散りばめられた前作とは打って変わり、本作は全体的にシリアスかつ正統派の格闘技映画として制作されています。また、故・アンディ・フグ氏の力強い格闘技や、空手家・角田信朗氏の名演技も堪能できるので、ウルトラマンファンのみならず、格闘技ファンにとっても必見の作品となっています。
このように、ウルトラマンゼアスは2つの物語を通して自らの弱点や心の弱さを克服し、歴代の先輩達と肩を並べる立派なウルトラマンとなったのです。
【ピカピカぴかりん♪じゃんけんポン♪】泣き虫だけどメチャメチャ強い!キュアピースと宿敵アカオーニの決着は?
国民的特撮ヒーロー番組である『ウルトラマン』シリーズにおいて、未熟なウルトラマンが成長し、一人前のヒーローとして活躍するようになったのは先述したとおりですが、このようなヒーローの成長劇は、同じく国民的アニメ作品である『プリキュア』シリーズの世界でも発生していました。
本題に入る前に・・・みなさまは、プリキュアシリーズをご覧になったことはありますでしょうか?
プリキュアシリーズは東堂いづみ先生の原作で、2004年に放送が開始された東映アニメーション制作のアニメ作品『ふたりはプリキュア』に端を発するアニメシリーズです。
「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーのもとで誕生した『ふたりはプリキュア(2004)』は、性格の異なる2人の女の子が伝説の戦士・プリキュアとなり、邪悪な組織と戦う物語。
好評を博した本作はその後、『ふたりはプリキュア Max Heart (2005)』や『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』と派生作品が毎年放送されるようになり、以降も『Yes!プリキュア5 (2007)』や『スマイルプリキュア!(2012)』、『ヒーリングっどプリキュア(2020)』と世代を跨ぎながらシリーズ化され、現在放送中の『ひろがるスカイ! プリキュア 』において、プリキュアはシリーズ誕生20周年を迎えました。
さてさて、今回ご紹介するのは、プリキュアシリーズ第9作目『スマイルプリキュア!(2012)』。
本作は、「七色ヶ丘中学校」に通う5人の中学2年生の少女達が「伝説の戦士プリキュア」となって、世界をバッドエンドに染め上げようとする「バッドエンド王国」から地球を守る物語。
『スマイルプリキュア!』が放送されたのは、2012年から約1年間。ご存知のとおり、東日本大震災が発生した翌年であり、日本が辛く悲しい出来事に向き合い、前を向いて戦い続けていた時代でした。
そんな時代背景の中で誕生した本作は、ひとことで言えば「希望に溢れたウルトラハッピーな物語」だと思います。毎週放送が楽しみになるような明るく楽しい作風、個性豊かな5人のプリキュア達と、彼女達を支える妖精達、悪役だけれども憎めない「おとぎ話」をモチーフにした「バッドエンド王国」の幹部達(赤鬼、オオカミ、魔女)、そしてプリキュアと悪役達が織りなすバラエティ溢れた多種多様な内容・・・。
敵の発明品によって、プリキュアが小さくなったり、子どもになったり、透明人間になったり、ロボットにされたり、敵味方一緒にゲームをしたり・・・
私達大人も童心に還って、肩の力を抜いて安心して観られるような自由な作風であり、大好きな絵本のように何度も読み返し(観返したく)たくなるような作品です。
そんな楽しさいっぱいの『スマイルプリキュア!』ですが、先述したとおり5人のプリキュアが登場します。
絵本が大好きで、元気な明るい女の子であるキュアハッピー(星空みゆき)、バレー部に所属し、熱いハートをもつ大阪出身の少女キュアサニー(日野あかね)、泣き虫だけども芯が強く絵を書くことが得意なキュアピース(黄瀬やよい)、家族思いで姉御肌、まがったことが大嫌いなキュアマーチ(緑川なお)、生徒会の副会長で弓道部所属、知的美人のキュアビューティ(青木れいか)・・・
個性豊かな5人の中で、今回焦点を当てるのは、泣き虫のキュアピース(黄瀬やよい)。
彼女は泣き虫な性格かつ普段はおとなしい上、得意な絵を描くことについても、恥ずかしがり屋で人に見せられない。スポーツと数学が苦手で、「1+2+3+4」の答えが出せず苦戦したほか・・・
スーパーヒーローやスーパーロボットが大好きで、自分が好きなものについて熱く語り、ロボットアニメ「ロボッター」の玩具発売初日には長蛇の列に並ぶ等、やや「オタク気質」なキャラクターでもあります(私も変身ヒーローが大好きなので、かなり親近感が沸くタイプですが・・・)。
そんなやよいちゃんですが、ひょんなことから「プリキュア」に覚醒します。本作第3話にて、バッドエンド王国の幹部である「アカオーニ」が七色ヶ丘中学校を襲撃したことをきっかけに、やよいちゃんはキュアハッピー、キュアサニーに続く3人目のプリキュアとして覚醒します。プリキュアは変身時、何かしらの名乗りをするのがお約束なのですが・・・。
「ピカピカぴかりん♪じゃんけんポン♪ キュアピース!」(キュアピース)
・・・そうです。このキュアピース、なんと変身の名乗り時に視聴者に毎週じゃんけんを仕掛けてくるという、類い希かつ極めて希有なキャラクターだったのです。
「キュアピースだからいつもピースを出してくるんじゃないの?」
残念ながら違います。その日の放送によってグー、チョキ、パーと名乗り時のポーズが違うのです。キュアピース曰く、「私に勝てたらその日1日はスーパーラッキー」なのだとか。視聴者に毎週じゃんけんを仕掛けるキャラクターといえば、毎週日曜日の夕方放送の『サザエさん』が定番ですが、『スマイルプリキュア!(2012)』の放送は毎週日曜日の朝。
つまり、「日曜日にじゃんけんを仕掛けてくるやつがもうひとり増えた」状態だったのです。
それはさておき、無事に初変身を果たしたキュアピース(やよいちゃん)。切れの良い動きでポーズをとり、身構えたと思ったら・・・
「いやぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」(キュアピース)
なんと恐ろしい形相の敵に背を向け、半泣きで両手を挙げた古典的なポーズで敵前逃亡。
さらに雷を主体とした必殺技を得意としながらも、必殺技を出す度に自らが出した雷の音に仰天する等、可愛らしさが前面に出た(良い意味で)「あざとい」キャラクターでした。
当事件以降、キュアマーチ、キュアビューティも無事合流して「スマイルプリキュア!」の全員が揃い、バッドエンド王国との戦いに身を投じていくことになります。勿論キュアピースも活躍しますが、そのキャラクター性は健在。自ら進んでパンチやキックと言った徒手空拳技を敵に打ち込むことはほとんどなく他のメンバーと力を合わせるのが定番、毎回名乗りのじゃんけんは継続、必殺技の際は自分の出した音で驚くのがお約束でした。
「弱いじゃないか!」とご指摘を頂きそうですが、実はこのキュアピース。幾多もの戦いを重ねていく中で、彼女に秘められた潜在能力が発揮される時がきました。
それは、プリキュアの妖精である「キャンディ」がバッドエンド王国に連れ去られてしまい、この戦いに敗れれば二度と元の日常に戻ることはできないという覚悟のもとでの戦いでした。
キャンディ救出を引き受けたハッピーを除く、残る4人のプリキュア達は、なんと単独でそれぞれの幹部に勝負を挑むこととなります。
キュアピースの相手は、彼女が誕生するきっかけをつくったアカオーニでした。
「キュアピース!泣き虫のお前に俺が倒せるオニィ?」(アカオーニ)
「私泣き虫だけど、根性はあるもん!」(キュアピース)
しかし戦力の差は大きく、キュアピースが倒れ伏せる中・・・
「話にならないオニ」と歩を進めるアカオーニの足を、半泣きで掴むピース。
「いい加減にはなすオニ。・・・お前泣いてるオニ?泣き虫オニ?ウワッハッハッハッ・・・!」(アカオーニ)
「・・・痛い。怖い。でもここで逃げたら、皆と一緒にいられなくなっちゃうから。それが一番怖いから・・・絶対逃げない!」(キュアピース)
遠くで戦っている他の4人プリキュア達と心を合わせ、奮起したキュアピースはアカオーニに再び立ち向かいます。
「そこをどくオニィ!」(アカオーニ)
「絶対通さない!」(キュアピース)
キュアピースの電撃を喰らい、怒りに満ちたアカオーニは黄色い目を輝かせ巨大化します。
「プリキュア!ピース・・サンダーーーーーーーーーーーーー!!!!!」(キュアピース)
渾身の必殺技でアカオーニを破ったキュアピースは、それぞれ幹部を退けた他のプリキュア達と合流し、キャンディと共に元の世界へ帰ることができたのでした。
「キャンディを取り戻して、みんなで一緒に帰る。」その強い思いによって強敵を打ち破ったキュアピースの姿は、間違いなくスーパーヒーローでした。
つまり、キュアピースは本気を出せばメチャメチャ強いプリキュアである上、彼女だけでなく「スマイルプリキュア!」の各メンバーが、幹部級の悪役を叩きのめす程の強力な力量を秘めていたのです。
他のプリキュアシリーズや『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』をはじめとするスーパー戦隊シリーズ等、複数のヒーロー達が1グループになって敵と戦う作品は「皆で力を合わせて、お互い足りない部分を補い合い、共通の敵をやっつける」のが醍醐味ですが、あえてそれを実行せず、単独で強い敵をやっつける展開は珍しいものでした。
その後、キュアピースとアカオーニは本作終盤にて再戦することとなり、キュアピースはアカオーニが変化した怪物(ハイパーアカンベェ)と一騎討ち・・・最終的にパワーアップしたキュアピースを含むメンバー5人全員の必殺技を受けて、アカオーニは戦意を喪失します。
実は、アカオーニをはじめとするバッドエンド王国の幹部達は、もともと絵本の世界「メルヘンランド」で暮らす妖精であり、おとぎ話の悪役であることから皆に嫌われてしまい、そんな孤独な気持ちをつけ込まれてバッドエンド王国に身を投じた存在でした。
彼らの悲しい事情を汲み取ったプリキュア達は幹部達との戦いをやめて、「友達になり、一緒に遊ぼう」と呼びかけます。プリキュア達の優しさに心を打たれたアカオーニ達は本来の姿に戻ります。アカオーニの正体はメルヘンランドの妖精「オニニン」だったのです。
プリキュア達はバッドエンド王国との戦いを終えたことで、地球は元の平和な世界に戻り、オニニン達が暮らすメルヘンランドも救われたのでした。めでたし、めでたしー。
『スマイルプリキュア!(2012)』の物語はここで終わりますが、本作で描かれたキュアピースとアカオーニの因縁は、弱虫だったキュアピースがアカオーニを倒すまで強くなったことに留まりません。
敵側の事情を抱擁し、敵ではなく友達として受け入れていくー。
他者を許すこともプリキュアの強さの証である。キュアピースをはじめとするスマイルプリキュアの煌々たる姿は、放送終了から10年経過した現在も、その活躍を見守っていた人々のキラキラした大切な思い出として輝き続けていることでしょう。
いかがでしたか?
今回は、円谷プロ制作の『ウルトラマンゼアス(1996)』、東映アニメーション制作の『スマイルプリキュア!(2012)』の2作品に焦点を当てて、ヒーローの成長についてお話ししてきました。
ヒーローの魅力とは、人々の生活を脅かす悪を叩きのめす力だけではない。誰かを助けたい、守りたいという気持ち。そして相手を許すという気持ちも、ヒーローの強さの形であることがここまで読んでくださった皆様に少しでも伝わりましたら幸いです。
最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。
上記でご紹介した作品ですが、『ウルトラマンゼアス(1996)』と『ウルトラマンゼアス2(1997)』はTSUBURAYA IMAGINATION(外部リンク)にて配信中です。また、『スマイルプリキュア!(2012)』もamazonプライムビデオ(外部リンク)で配信中のほか、TOKYO MXで毎週木曜日夜7時34分から再放送中です(外部リンク)。百聞は一見にしかずですので、是非ご覧になってみてくださいね♪
・田中一喜、『てれびくんデラックス愛蔵版 ウルトラマンゼアス超全集』、小学館
・西巻篤秀、『てれびくんデラックス愛蔵版 ウルトラマンゼアス2超全集』、小学館
・上北ふたご、『プリキュアコレクション スマイルプリキュア』、株式会社講談社
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