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信頼を取り戻すためには 不祥事が続いた京都ハンナリーズがスタッフ全員参加で行ったディスカッション

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
京都ハンナリーズの面々を前に講話を行う大河正明チェアマン(筆者撮影)

 所属2選手による海外遠征中の買春行為、窃盗犯罪と不祥事が続いた京都ハンナリーズは10日、Bリーグの大河正明チェアマンが出席の下、選手、コーチ、スタッフが全員参加して再発防止に向けたディスカッションを実施した。

 ディスカッションを前に挨拶に立った大河チェアマンは、Bリーグが発足し世間から注目を集める存在になったことで、選手の中で「人気」「実力」「報酬」において勘違いが生じてしまった面がないかと注意を促すとともに、今回の不祥事がリーグにある程度の影響を及ぼしたことを認めた上で、過去に起こったスポーツ界、企業での不祥事がどれほどのダメージをもたらしてきたかを説明した。

 その後チーム参加者全員が3つに分かれグループワークを行い、今回不祥事が起こってしまった背景や原因について意見交換し、最後にそれぞれのグループで話し合われた内容を共有し終了した。安田良平広報担当統括部長によれば、ディスカッションの中で「プロ選手としてバスケットをやらせてもらっている謙虚さや感謝の気持ちを持つこと」「プロ選手としてハンナリーズを背負っている自覚を持って行動すること」「選手、スタッフも言いづらいこともしっかり言い合って意思の疎通を図っていくこと」等の意見が出たという。

 最後まで参加した大河チェアマンは、今後も他のチームを対象に5回に分けて今回と同様の講習会を開催していく方針を明らかにした上で、以下のように話している。

 「僕は以前にJリーグにいましたし、Jリーグでは新人研修もしっかりやっていましたので、それを上手く取り入れながらBリーグ流にして新人研修だったり、2年前は全選手に向け研修をしたつもりでした。それとメンター制度を設けて常日頃から選手と向き合えるような制度設計をし、昨年から実施してたんですけれども、とはいえそれが結果として機能していなかったんだなと思っています。

 どこまでやったら100点になるかというと、きっと100点というのはないんだと思います。けれども何もしなくて50点で終わるのではなくて、何回か重ねることによって80点、90点に近づけていく努力は必要だと思います。こちらは同じ話をしたつもりでも聞いた方は忘れますよね。やはりこれを何度も何度も繰り返し、リーグからも言うし、選手と直にいるチームの方からも言ってもらい、同じ感覚を選手とスタッフが持つというのが大事だと思います」

 今回のディスカッションはハンナリーズを糾弾するためのものではない。こうした不祥事が起こった後で、リーグとして、またチームとして何をしていくべきかを意見交換しながら再確認していく場であった。大河チェアマンは挨拶の中でも、2020-21シーズンでの「入場者数300万人、バスケ市場規模300億円」というリーグ目標を提示した上で、ハンナリーズの面々に仕切り直して頑張っていこうと鼓舞している。

 もちろん不祥事を起こしてしまったハンナリーズの今シーズンは難しいものになるだろう。熱狂的なコアなブースターはともかく、いわゆる浮遊ファン層の信頼を取り戻しアリーナに足を運んでもらえるかは、すべて今後のチームにかかっている。もう済んだことを悔やんでも仕方がないし、前を向いていくしかない。そして残された選手、スタッフが一致団結し、コートの上で人々を喜ばせ、熱狂させていけるかだ。

 「今リーグの中で一番反省しているというか、非常に危機感を持ってやっているのはうちの選手たちだと思っています。今回チェアマンが来てグループワークをして、再確認できた選手が多かったと思います。失ったものは大きいと思いますが、信頼を取り戻せるようにみんなでハードワークしてしっかりコミュニケーションをとってやっていくだけです」

 まさに浜口炎HCの言葉がすべてだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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