日銀の連続指し値オペの毎営業日化で財政ファイナンスとの認識を強め、円や国債への信認が毀損される恐れが
日銀は4月20日に3月28日以来となる連続指し値オペの実施を発表した。期間は4月21日から26日まで。対象となるのは10年利付国債の364回、365回、366回。
応札・落札額は21日がゼロ、22日は4277億円、25日が7275億円、26日が9215億円となった。
4月26日には対象期間が日銀の金融政策決定会合期間中にも関わらず、27日と28日の連続指し値オペの実施を発表した。
応札・落札額は27日がゼロとなった。
28日は金融政策決定会合の二日目ということで日銀は細かな修正を行った。午前10時10分にオファーした指し値オペの締め切り時間を会合終了前となるであろう11時としたのである。そして、会合結果発表後でもある14時に二回目の指し値オペをオファーした。こうして指し値オペが決定会合結果発表時を跨がないように工夫していた。
28日の指し値オペでは前場の分で5816億円の応札・落札があった。
いずれにしても21日から28日にかけて、合計で2兆6583億円の364回、365回、366回を対象となる国債の買い入れを行ったことになる。
現在の10年国債は毎月あたりの発行額は2.7兆円となっている。3銘柄で8.1兆円となる。そのうちの2.7兆円と三分の一あまりを短期間のうちに日銀はオペレーションで買い入れた。
ちなみに日銀の購入先は直接の投資家ではなく、銀行や証券会社などである。
「オペレーション等の対象先公募・選定」 https://www.boj.or.jp/mopo/measures/select/index.htm/
生命保険会社などの投資家、これには銀行そのものも含まれるが、当然ながら10年国債を投資対象として運用しており、日銀のオペ対象の金融機関がすべて保有しているわけではない。
いずれにしても発行額以上の国債を日銀は買い入れることはできず、その前に行き詰まることが想定される。
さらに28日に日銀はこの連続指し値オペを毎営業日行うことを宣言した。5月2日以降、明らかに応札が見込まれない場合を除き、指値オペを毎営業日オファーする。さらに指値オペについて、オファー時刻を10時10分、応募締切時刻を15時30分(金融政策決定会合2日目は11時)とするタイムテーブルを新設した。これはすでに28日からスタートした格好となった。
欧米の長期金利が高止まりするなか、国内での物価上昇圧力が強まるなどすれば、日本の長期金利にさらなる上昇圧力が加わることになる。28日以降も日銀は連続指し値オペを継続せざるを得ない状況に陥る可能性は当然ある。
これに対して日銀はどのような対応をするのか。結論は毎営業日の連続指し値オペとなった。ただし、いずれにしても限界がある。そもそも市場実勢を無視した、このような買い入れそのものに意味は見いだせない。
さらに買入金額は無制限の指し値オペということが財政ファイナンスと認識されかねないものであるが、今回の毎営業日実施によって財政ファイナンスの色彩が色濃くなる可能性が出てきた。
10年国債は毎月入札にて発行される。次回5月債は10日に入札が予定されている。発行日は翌営業日なので11日となる。状況次第では5月10日までに10年の364回、365回、366回はほとんど日銀に吸い上げられてしまっている可能性がある。
そしてあらたに5月11日に366回が2.7兆円程度供給されるが、外部環境次第では入札で落とした業者はそのまま日銀のオペに持ち込む可能性も当然あろう。いったん業者を経由したとはいえ、これはほぼ財政ファイナンスとなりうる。
これに対しても日銀は何かしら細工をし一見、財政ファイナンスとは見えにくくさせるかもしれないが、結果として財政ファイナンスとなりうる。
注、日銀は28日夕方発表のオペ紙で、買入対象銘柄の残存期間が重複する利付国債の入札日(流動性供給入札を含む)には、原則としてオファーしませんとした。
日銀は展望レポートにて2022年度のGDPをプラス2.9%、消費者物価指数(除く生鮮)をプラス1.9%と予想している。これは景気が悪化していたり、デフレであったりする内容ではない。消費者物価指数(除く生鮮)をプラス2.0%でなく1.9%とするあたりに作為も感じられるが、とにかくも非常時などではないことはたしかであろう。
それにもかかわらず非常時の金融政策を継続するというには、経済実体と乖離した政策を取っていることになる。我々が本来もらえるはずの金利を日銀が奪い取っている格好とも映る。
日本の欧米の金融政策の方向性の違いで円安が加速し、28日にドル円は一時131円台をつけた。円はユーロやポンドなど他の通貨に対しても売られており、円安というか円売りであった。
日銀の無限無制限連続指し値オペを市場参加者が財政ファイナンスと捉えることとなれば、円や国債の信認を毀損しかねない。今回の円安はそれも意識した動きでもあったのではなかろうか。