世界は核軍拡に転換か 北朝鮮10発、中国30発を増強 核兵器配備増える
[ロンドン発]核兵器の近代化を進める米露は保有数を減らす一方で、北朝鮮10発、中国30発、インド6発、パキスタン5発とアジアの国々が核を増強していることが14日、スウェーデン・ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の年次報告書で分かりました。
核武装国はアメリカ、ロシア、イギリス、フランス、中国、インド、パキスタン、イスラエル、北朝鮮の9カ国。世界の核兵器数は1年前に比べ1万3400発から1万3080発に減ったものの、配備されている数は3720発から3825発に増えました。このうち米露を主とした約2千発は高度な作戦状態に置かれています。
米露は古くなった核兵器を解体する一方で、配備する核兵器数を1年前に比べ約50発ずつ増やしたとみられます。ロシアは多弾頭の大陸間弾道ミサイル(ICBM)と潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)の配備により核兵器の核備蓄を約180発増やしました。
台頭する中国は核兵器の大幅な近代化と備蓄拡大に邁進しており、インドやパキスタンも核兵器の備蓄を拡大しているとみられています。北朝鮮は国家安全保障戦略の柱として核開発を引き続き強化しています。昨年、北朝鮮は核実験や長距離弾道ミサイル実験を行わなかったものの、核分裂性物質の生産と短距離・長距離弾道ミサイルの開発は継続しました。
イギリスは先進国の中では唯一、保有数を215発から225発に増強しました。同国は「安全保障・国防・開発・外交政策の統合レビュー」でこれまでの核兵器を削減する政策を覆し、核兵器の上限を180発から260発に引き上げました。
SIPRI核軍縮・軍備管理・不拡散プログラムのハンス・クリステンセン上級研究員は次のように話しています。「世界の核兵器の総数は増加しているようだ。これは、冷戦終結以降、世界の核兵器を特徴づけてきた減少傾向が停滞していることを示す憂慮すべき兆候だ」
「今年2月のロシアとアメリカによる新STARTの土壇場での延長で安心でしたが、核の超大国間の核軍備管理の見通しは依然として明るくない。ロシアもアメリカも自国の安全保障戦略において核兵器の重要性は増しているようだ」
(おわり)