セカオワ暗号はなぜ解けたのか! そもそもあれは暗号なの?
先週末、あるバンドのメンバが不思議な数字のイラストを公開し、芸能関係の大きな話題になりました。そのイラストが自分が交際相手との破局を表しているというのです。そのイラストと、その意味については以下の記事に詳しく書かれています。
このイラストをはじめてみたとき、最初は数字の書体に変化がなく、それに色がついているので、電気電子回路における「抵抗素子」のカラーコードかと思いました。直径数ミリ程度、長さ1センチに満たない円筒状の抵抗素子ですが、それらの抵抗値を見分けるために色分けされたリングが数本書かれており、それによって抵抗値がわかるのです。
表題のようにいくつかの記事では「暗号]という言葉が使われています。しかし、今回のような記号によって、そのグループや取り巻きの人たちのみで通じるような文字は、もはや「符丁」や「隠語」と言ったほうが、暗号よりも近いでしょう。一般的には、「暗号」という言葉が「符丁」や「隠語」を含み、特定の人だけが、その意味を解することができる通信手段と誤解されています。現実には、この特定の人を完全に制御できる方式だけが暗号なのです。簡単に言えば、明確な条件を満たす人(装置、機械)だけがその意味を解せられる方式です。「符丁」や「隠語」は、確かに誰でもその意味が分かるわけではなく、一部の人だけが解せられる、あるいは通じる方式ですが、その一部の人というのが具体的に誰々なのかは特定できません。「符丁」で一般的なのは、寿司屋で使う「あがり」や「がり」という言葉です。
暗号は解けない事が前提なのです。一部の人とは言え、解く権限が明確に与えられていない人が一人でも解ければ、もはや暗号ではないのです。現代の暗号は、その暗号の作り方や設計方針がたとえすべてわかっていたとしても、ある小さな秘密(数学的、通信技術的には数百から数千ビット、英数字に直せば数百字)を知っている人のみ、解けるのです。
今回の数字のイラストは誰でも意味が分かるわけではありませんでした。しかしすぐにその意味を解せられる人が現れて発表されました。それを知っている人は、以後誰でもこの「暗号」と呼ばれている記号は意味を解せる事が出来るのです。もはや「暗号」ではないのです。