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”今めっちゃきてる” BLACKPINKロゼのコラボ曲「APT.」 「すご過ぎて”禁止令”」も!

「ア〜パトゥ アパトゥ」――。

このサビ部分が、次に「世界でくる」韓流コンテンツになる?

筆者自身、10月に韓国で長期取材を続けていた。ソウルで若い世代に「今何が流行ってる?」と聞くと、多くがこの「(APT.)」を挙げた。

ロゼ本人もめっちゃエンジョイしてる! インスタ付き同記事はこちらから!

10月18日に公開されたBLACKPINKのメンバー、ロゼが米国の人気アーティスト、ブルーノ・マーズとコラボレーションした新曲「アパート(APT.)」が、驚異的な記録を打ち立てている。

ロゼ自身が「お酒を飲んだ後に歌詞を書いた」というこの曲。韓国のお酒の席でのゲームから着想を得たという異色の楽曲だ。公開からわずか9日間でYouTube再生回数1.6億回を突破。世界最大の音楽配信プラットフォームSpotifyではグローバルチャートとアメリカチャートで同時に1位を獲得した。

「アパトゥゲーム」解説(韓国トレンド研究所)

英国での反響も顕著だ。イギリスのオフィシャルシングルチャート「TOP 100」では4位にランクイン。K-POP女性アーティストによる史上最高記録となった。韓国メディア・ニュースプリによると、レディー・ガガとブルーノ・マーズによる「Die With A Smile」に次ぐ順位で、世界的DJ、ペギー・グーの記録(5位)を更新する快挙という。

何が面白いのか。

まず分かりやすいのが、「単純フレーズが繰り返されるサビ部分の中毒性」だ。

「Apart=アパート」を韓国語式の「アパトゥ」と」発音する。

これをニュージーランド生まれ、オーストラリア育ちのバリバリの英語ネイティブたるBLACKPINKのメンバー、ロゼが歌い上げる。それだけでも「ギャップ萌え」。しかもコラボの相手ブルーノ・マーズ。彼もまた、歌詞のほとんどが英語という楽曲のなかでサビ部分の「韓国式英語丸出し」のフレーズをなんども口にする。

ギャップはそれだけではない。ロゼが所属するBLACKPINKは「カッコよくて自分自身をしっかりと主張できる女性像」を表現する時代のアイコンであり続けている。「ガールズグラッシュ」の代表格。ロゼはなかでも圧倒的な歌唱力で知られ、圧倒的なカリスマ性も発揮していただけあって、この「おもろいロック曲」のギャップがスゴい。

もうあまりにも韓国で流行りすぎていて…「韓国日報」はなんと日本の東京外国語大学の野間秀樹教授に「何が面白いのか」についてコメントを求めている。

「韓国語の濃音『ㅍ』と『ㅌ』がリズムに乗って繰り返される点が特徴的です。英語から来た外来語『アパート』が放つ魅力を十分に活かしている」

さらに野間教授は「韓国語が母語でない人も『アパート』の意味は小さな謎として残したまま、その音を楽しむことができる」とも。

とはいえ、こういう「バズる」コンテンツの成功は一筋縄ではいかない。批判がある。あるあるだ。影響力が強いがゆえのことだ。

「韓国日報」はこの楽曲が「韓国の受験生禁止曲」となっている様子を伝えている。お堅い公的機関が指定したのではなく「あまりにも中毒性が強いために、受験生が集中力を欠くほどに危険」ということ。韓国の大学入試は11月16日に最大のヤマ「修能(スヌン)」が控えている。

本気で警戒しているのは、マレーシアの方だ。同国の公衆衛生部が「APT.」について公式Facebookで警鐘を鳴らした。なんでも、この楽曲の英語部分の歌詞「キスする絵文字をスマートフォンで送る」「このアパートをクラブにしよう」といった歌詞について、「東洋の文化的価値観と相反する行動の正常化を示している」と指摘。若年層への影響を懸念する声明を発表した。

また、日本の楽曲との類似性を指摘する声も上がっている。「ニューシス」によると、2014年11月13日に発表された澤井美空の「ごめんね、いい子にできない」との類似性が指摘されているという。特に、「アパート」の"Don't you want me like I want you, baby?"というフレーズと、「ごめんね、いい子にできない」の「何かをすることもなく、行くところもないので」という部分のメロディーの類似性が議論を呼んでいる。ただし音楽業界からは「昔から多くの曲で使用されてきた一般的なコード進行に過ぎない」との反論が相次いでいる。

清濁併せ吞む、といった形でこの楽曲は成功を収めようとしている。音源配信を担当するYG PLUSの株価は、公開後わずか6営業日で140%以上の急騰を記録。市場関係者によれば「この楽曲関連銘柄の最大の受益株」として注目を集めているという。

韓国国内市場での反響も目覚ましい。音楽配信サービスGENIE MUSICの年齢別チャートでは、10代から50代以上まですべての年齢層で1位を記録。「50代以上」のチャートでは、通常この層で圧倒的な支持を得ているトロット歌手イム・ヨンウンの楽曲群(2位〜7位)を抑えての首位という異例の事態となっている。

韓国の音楽業界では、30日に発表予定の米ビルボードHOT100での順位も注目を集めているという。またこの楽曲、現在はデジタル配信のみだが12月6日には、この「アパート」を含むロゼの初のソロ正規アルバム「ROSIE」(全12曲収録)の発売が控えている。

世界的ヒットの勢いが、どこまで続くのか。音楽シーンの新たな潮流として、その行方が注目される。

吉崎エイジーニョ ニュースコラム&ノンフィクション。専門は「朝鮮半島地域研究」。よって時事問題からK-POP、スポーツまで幅広く書きます。大阪外大(現阪大外国語学部)地域文化学科朝鮮語専攻卒。20代より日韓両国の媒体で「日韓サッカーニュースコラム」を執筆。「どのジャンルよりも正面衝突する日韓関係」を見てきました。サッカー専門のつもりが人生ままならず。ペンネームはそのままでやっています。本名英治。「Yahoo! 個人」月間MVAを2度受賞。北九州市小倉北区出身。仕事ご依頼はXのDMまでお願いいたします。

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