Yahoo!ニュース

ホームラン競争を制したピート・アロンソは新人本塁打記録を更新することができるか?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
シーズン後半戦で新人本塁打記録更新の期待がかかるピート・アロンソ選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ゲレロJr.から主役の座を奪ったアロンソ】

 今年のオールスター戦のハイライトの1つは、間違いなくホームラン・ダービーだったろう。特に、史上最年少の20歳で参戦した、ブラディミール・ゲレロJr.選手の存在感は圧倒的だった。

 1回戦でいきなりラウンド新記録の29本塁打(これまでは2008年のジョシュ・ハミルトン選手が記録した28本塁打)を放ち準決勝に進むと、準決勝でも40本塁打を量産し、ジョク・ペダーソン選手と熾烈なサドンデス戦を制し、史上初の親子制覇に王手をかけた。

 そんなゲレロJr.選手の前に立ちはだかったのが、ピート・アロンソ選手だ。

 1回戦では地元インディアンスのカルロス・サンタナ選手と対決し、ファンからブーイングを受ける一幕もあったが、何とか1回戦を突破。そして準決勝でロナルド・アクーニャJr.選手を破った後、決勝でもゲレロJr.選手に競り勝ち、優勝賞金100万ドル(約1億1000万円)を獲得した。

 アロンソ選手といえば、2016年にメッツからドラフト2巡目指名を受け、今シーズンは開幕ロースター入りを果たし、先発一塁手として堂々のMLBデビューを飾った。チームは厳しい戦いを続ける中でも本塁打を量産し、現在30本塁打でナ・リーグ2位タイにつけ、文句なしでオールスター戦に選出。すでに新人王最有力候補といわれている存在だ。

 今回のホームラン・ダービーで、アロンソ選手の名は確実に全米中に広まることになっただろう。

【地元メディアは新人本塁打記録更新を予想】

 そんなアロンソ選手に対し、シーズン後半戦に大きな期待を寄せるメディアが存在する。スポーツ専門サイトの『the Score』はシーズン後半戦の予想記事を公開し、その中の1つとして、アロンソ選手が新人本塁打数記録を更新すると予想したのだ。

 現在の新人本塁打記録は、2017年にアーロン・ジャッジ選手が樹立した52本。その年のジャッジ選手も、シーズン前半戦で30本塁打を放ち、オールスター戦に選出。そしてホームラン・ダービーにも出場し優勝を飾り、その名を全国に知らしめた。まさに今年のアロンソ選手は、ジャッジ選手とまったく同じ道を歩んでいるのだ。

 現在のペースで本塁打を打ち続ければ、計算上はシーズン終了時点で55本塁打に到達することになり、記録更新圏内にいるのは間違いない。ただあくまでこのまま順調に推移すれば、という話だ。

 2017年のジャッジ選手も、1987年にマーク・マグワイア選手が樹立した49本の新人本塁打記録の更新に期待が寄せられていた。ところがオールスター明けから極度の打撃不振に陥り、8月終了時点でたった7本塁打しか上乗せできず、一時は記録更新は難しいと思われた(それでも9月に入り再び量産体制に入り15本塁打を放ち、新人本塁打記録を塗り替えている)。

 もちろんアロンソ選手もこのまま順調に打ち続ける保証は何もなく、記録更新は決して容易なことではない。

【カギを握るのはコンディション維持?】

 さらに気かがりなのが、コンディション維持だ。

 実はジャッジ選手の場合、MLB初昇格は2016年8月で、すでに前年に162試合のMLBの長丁場シーズンを経験した上で、新人王資格を残して2017年シーズンを迎えていた。

 一方のアロンソ選手は、まさにMLBは今シーズンが初体験だ。過去3年間のマイナー生活で、最多出場しているのは昨年の132試合。つまり9月の1ヶ月間は、アロンソ選手にとってまったくの未体験ゾーンなのだ。

 ただし2018年オフにアリゾナ秋季リーグに参戦、27試合に出場しているので、まったく9月に出場経験がないわけではない。ただマイナーリーグ終了から秋季リーグ開幕まで休養期間が存在するので、考察材料になりにくい面があるのも確かだ。

【全方向に打ち分ける高い長打力】

 もちろん不安な点ばかりではない。アロンソ選手のずば抜けた長打力は見逃すことができない。

 ホームラン・ダービーでも披露している通り、彼はジャッジ選手同様、全方向に本塁打を打ち分けることができる。今シーズンの30本塁打を見ても、センターを挟んで15本ずつ両サイドに打ち分けているのだ。

 MLB関連サイトの『Baseball Savant』が提供するデータをチェックしても、あらゆるコースから本塁打を放っていることが確認できる。それだけ穴が少ない選手だということが分かる。

 果たしてアロンソ選手は、ジャッジ選手の新人本塁打記録を破ることができるのか。シーズン後半戦の楽しみが1つ増えた。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事