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2年ぶりにトロントに戻れることで大谷翔平の宿敵ブラディミール・ゲレロJr.が得られるメリットとは?

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
トロントに戻りさらに本塁打を量産しそうなブラディミール・ゲレロJr.選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

【ブルージェイズが2年ぶりに本拠地トロントで公式戦実施へ】

 ア・リーグ東地区で首位レッドソックスを8ゲーム差で追うブルージェイズに、2年連続ポストシーズン進出を目指しシーズン後半戦を戦う上で吉報が届いた。

 米主要メディアが報じたところでは、新型コロナウイルスの影響で本拠地トロントでの公式戦開催を断念してきたブルージェイズだが、カナダ政府からようやく許可が下り、7月30日からのロイヤルズ戦から同地で公式戦を開催できるようになった。

 ブルージェイズが本拠地球場の『ロジャー・センター』で公式戦を開催できるのは、2019年9月29日以来。ブルージェイズはMLB唯一のカナダを本拠地とするチームなので、2年ぶりにカナダに野球が戻ることになった。

【バッファローとフロリダのマイナー球場を間借り】

 昨年の新型コロナウイルス発生以来、ブルージェイズは厳しい立場に置かれてきた。

 コロナ禍で米国とカナダ間の往来がカナダ政府により原則禁止され、MLBが活動を再開し、60試合の短縮シーズン実施が決まった後でも、ブルージェイズのみならず他チームもカナダ入国が制限される中で、ロジャー・センターで公式戦を実施できるような状態になかった。

 そのため昨シーズンはマイナーリーグが中止されたこともあり、傘下3Aのバッファローの球場を代用。また今シーズンもここまでプリングトレーニング施設のフロリダ州ダンイーデンとバッファローでホーム試合を実施してきた。

 ただ今シーズンはマイナーリーグも活動を再開しており、両球場とも傘下チームがメインで使用しているため、逆にメジャーのブルージェイズがスケジュールの合間を使って間借りしている状態だった。

 またどちらもマイナーリーグの球場なので収容キャパシティが低く、ここ最近は他チームがフルキャパシティで集客数量になり、各球場が数万人を超えるファンを集結する中、ブルージェイズはずっと1万人未満に止まってきた。

【三冠王を狙うゲレロJr.選手にとっても大きなメリットに】

 今後は他チーム同様に数万人のファンの前で、しかも地元トロント市民の熱狂的な声援を受けながら公式戦を戦えるのだ。ブルージェイズは大きな後ろ盾を得ることになる。

 今後チームに勢いをもたらす可能性が大きく、ポストシーズン争いでも不気味な存在になっていきそうだ。

 ロジャー・センターで戦えることでブルージェイズが得られるメリットは、実はそれだけではない。

 現在大谷翔平選手と本塁打タイトルを争い、2012年のミギュエル・カブレラ選手以来の三冠王奪取も狙える位置にいるブラディミール・ゲレロJr.選手が、最大の恩恵を受けられることになりそうだのだ。

 というのも、ロジャー・センターはMLBの中で屈指の本塁打量産球場として知られている。ESPNがデータ化している2019年版の「ボールパーク・ファクター」によれば、ロジャー・センターの本塁打率は1.137でMLB1位にランクしているのだ。

 ちなみに2021年版では、ダンイーデンが1.456で同3位、バッファローが1.211で同8位と、これまで使用してきた球場も本塁打が出やすい球場ではあったが、ロジャー・センターに戻ることで、さらにゲレロJr.選手の本塁打攻勢に拍車がかかる可能性があるというわけだ。

 ただ今シーズンに関してはエンジェルスの本拠地球場の『エンジェル・スタジアム』も1.297で同6位と、比較的本塁打が出やすい球場ではあることも忘れてはならない。

 いずれにせよ、今後も大谷選手とゲレロJr.選手による本塁打王争いから目が離せそうにない。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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