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「梅雨明けで"急に"暑く…」は熱波到来時に似たカラダの負荷に 警戒と対策を

永島計体温や体液の問題にかかわる科学者、医師
夏空(写真:GYRO PHOTOGRAPHY/アフロイメージマート)

8月の声を聞くとともに、梅雨明けが、そして暑い夏がやってきました。例年、この季節は熱中症が大きな話題になり、その被害者の数は様々な啓蒙活動にもかかわらず減っていく傾向にはありません。今年は、新型コロナ感染症の流行によって、大きな仕事や生活の様式が変化しています。これに伴い、熱中症の発症にも新たな要因が加わってくる可能性が予想されます。その対策をどうすれば良いのでしょうか?

 熱中症の発症リスクをあげる要因には、”急に”や”はじめて”という言葉が頭につくものがいくつかあります。熱中症は、環境要因に基づくものと、個体要因に基づくもの、その2つが関係したものがあります。環境の要因には気温や湿度、日射の影響があります。実際、これらの要因は、暑さ指数(WBGT)として日常生活のリスク予想に用いられています(日本生気象学会、日常生活における熱中症予防)。しかし、同じ気温や湿度でも、熱中症の発症リスクは、夏前の方がずっと高いのです。まさに、”急に”暑くなった、”急に”日差しが強くなった今は、熱中症のリスクが高い時期であると言えます。特に、健康上の問題はなくても、おこりうるリスクです。悪天候や感染症対策のための今までの運動不足を取り戻すために、”急に””しばらくやっていなかった”負荷の高い運動を再開することもリスクを高めることになってしまいます。新入生などは、部活動がやっとはじまって、”はじめて”やるスポーツに取り組むかもしれません。これも、リスクの一つになってしまいます。

 ”急な”暑さは、高齢者や、もともと健康に問題を抱える人たちに強い影響を及ぼします。暑さに対して体を守る身体的な能力(体温調節能)の問題も当然ありますが、季節にあわない衣服の選択をしていたり、エアコンの使用が適切に行われていなかったりする場合も多くみられるようです。いわゆる熱波は、日中の最高気温が例年より5度以上になる日が5日間以上続く環境を示しており、多くの高齢者が熱中症の被害者となります。このような状態でなくても、1週間前には例年の気温より低い日がつづき、急に暑さが平年並みに戻った今の状況でも熱中症のリスクは大きくなります。いわば、今は熱波がやってきているのと同じ状態だと言えなくはありません。

 実は暑さへの”なれ”、すなわち暑さに対する体の防御能力を獲得するには時間がかかることが知られています。日本のような四季のある場所に住んでいる人たちは、夏にはこの”なれ”を獲得し、冬になるとやがて失ってしまうことを繰り返しています。暑さへの”なれを”、科学用語では暑熱順化と呼びます。短期的にアスリートが暑さのなかで十分なパフォーマンスを維持するためのプログラムが提唱されてはいます。しかし、暑い中で1-2時間の運動を10日以上続けてやっと十分な効果が得られると報告されています。運動は暑さへの耐性を獲得する上で重要な要因ですが、一方で熱中症のリスクを上げる要因でもあります。

 健康で運動ができる人であれば、あまり暑くない早朝や夕方おそくに、少し息が切れるぐらいの軽いジョギングや、速足でのウオーキングが有効です。高齢者も、身体的な問題がなければ、毎日、時間帯を選んだ散歩をして軽く汗をかくようにすることでも暑さへの強さを導いてくれます。ただし、若い人も、高齢者も、その効果は暑さよりも遅れて得られることを忘れないようにしてください。

 熱中症や体温調節を学べる参考図書はこちら

体温や体液の問題にかかわる科学者、医師

体温は脈拍などとともに、バイタルサインと呼ばれる、ヒトの健康状態を反映する重要なカラダから発信されるシグナルです。また、ヒトのカラダの60%は水でしめられ、この水は様々な役割をはたしています。これらのヒトにとっての根源的な機能の基礎研究をするとともに、医師としていまだ解決を見ていない体温や水に関わる大きな問題である熱中症の解決方法を探索しています。

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