聞け、人民の声!――抗日戦勝軍事パレード
北京で軍事パレードが行われたことに関して、6億にのぼる中国のネットユーザが叫びを上げた。ここにこそ中国人民の真の声が反映されている。中国を知るためにも軍事パレードの分析にも、貴重な声を拾ってみた。
基本情報の解説も含めながら、ネットの声をご紹介する。
◆参加国に関して
本来、習近平国家主席は西側先進国を軍事パレードに招いて、中国人民に「ほら、どうだ、すごいだろう!」というところを見せ、中国共産党による統治能力と求心力を高めようとした。そのためまずは、AIIB(アジアインフラ投資銀行)に西側諸国を中国に引き寄せ、その流れの中で軍事パレードにも参加させようと狙っていた。ところが蓋を開けてみると西側先進諸国の首脳は一斉に不参加。「経済ではなびいても、軍事では一線を画す」ことが明瞭となり、習近平はメンツを無くした。そのことに関連した声を先ずご紹介する。
「中国が反ファシスト戦争勝利を祝うのなら、最も来なくてはならないのはアメリカだろう! 中華民国の最大の盟友はアメリカだったんだぜ。(中略)だというのに、その肝心のアメリカが来ていない。来たのは国際刑事裁判所で戦争犯罪人および反人類罪で逮捕状が出ているスーダンのバジル大統領だ! 反人類罪の容疑者と、少数民族の種族を根絶やしにしようという“国際犯罪者”(筆者注:習近平のこと)が並んでるよ。これが反ファシスト戦勝勝利祝典なのかい?」
「潘基文(パン・ギムン)って国連事務総長だろう? 国連って、バジルの逮捕状を執行することに決めたんじゃないの? このメンバーの“団結”って、なんだい?」
「安倍はたしかに来なかった。でも安倍の代理で、キャノンとソニーとコニカが参加してるよ。閲兵式で使ったカメラはすべて日本製。CCTVのテレビ中継は日本のソニーのカメラ、閲兵式のマイクはソニー、記念撮影に使ったカメラは3台がキャノン、2台がニコン。だって性能がいいだもん」
「30カ国の首脳が参加したって大宣伝してるけど、目立った国では西側から外されたロシアと、心変わりばかりしている韓国だけじゃないか。あとは、あってもなくても、どうでもいいような国ばかり。でもこれまで大金を注いできた甲斐があって、習包子(シー・バオズ)はようやく報われたと安心してるんじゃないかい?」(筆者注:包子は皮の薄い肉まんのこと。習近平(シー・ジンピン)が「自分がいかに庶民に近いか」を示すために、慶豊包子店に行って包子を食べたことから、「習包子」とか「包子帝」というあだ名が付いている。)
「故事にある“孤家寡人”とは、まさにこのことだ」
(筆者注:“孤家寡人”とは「大衆から浮き上がって孤立していること」を指す。昔の君主が自分のことを「孤」とか「寡人」と称したことから、この故事がある。)
◆習近平とファシスト(ヒトラー)と比較して
「もし反ファシスト戦争勝利なんて謳わなければ、ファシストって何のことか知らなくってすんだのに、ファシスト、ファシストってうるさいからネットでファシストの意味を調べてみたら、なんと、わが中共体制とおんなじじゃない?」
「ファシストが反ファシスト戦争勝利を祝っているよ」
「道路をふさぎ、ビルも娯楽施設も公園も病院さえも封鎖して、外出を禁止し工場も停止させる。ネットだって“壁越え”を厳重に封鎖して、メディアに強制的に閲兵式を絶賛させる。……ねぇ、ファシストって何だっけ? 教えて!」
(筆者注:壁越えとは、西側のネット情報を見ることができないように、国家が創ったファイヤー・ウォールである「万里の防火壁」を特殊なソフトを使って越え、西側諸国の情報を入手すること。)
「習包子(バオズ)は、自分の地位を高めるために民の血税を使って、反ファシスト記念日をファシスト復活日にしちゃったよ」(筆者注:軍事パレードを行うためには莫大な経費が掛かっている。ぜいたく禁止令を発布し、節約を呼び掛けながら、この浪費は許されるのかという書き込みは多い。)
◆人民の自由は?
「一つの国家の本当の国威って、閲兵式によって示せるものじゃない。人民の自由とか、平等で公正な法治とか、一般民衆の尊厳と安心感を守ってこそ、国威って言うんじゃないの? こういうものが一切なくって、武器を持ちだすなんて、コンプレックスと自信がないことの表れでしかない」
「最もいい記念の仕方は、敗戦国の国民の生活より、戦勝国の国民の生活が良くなったことを示すことじゃないの?」(筆者注:日本国民の生活の方がいいということへの反語的表現)
「どんなにすさまじい閲兵式をやったって、あの天津大爆発で爆死した百数名の命さえ救えなかったじゃないか! 軍の力ってなに? あの爆発をもたらしたのは、この閲兵式で皇帝になっている“包子帝”が君臨する偉大なる中国共産党じゃないのか?」
「まるでファシストの手段で反ファシスト戦争勝利を祝っているみたいだ。(平和の象徴の)鳩の巣さえ締め出してるんだから。中華民国・国民党時代に蒋介石が閲兵式をやったことがあるけど(1934年)、みんな自由にワーッと集まって閲兵式を祝ったものだ。今はまるでヒトラーのときのように緊張している。草木皆兵(草も木もみな敵兵に見える)って言うけど、中国政府はまるで敵から防御するように人民から自分たちを防御している。何を怖がってるんだ?」
「ヒトラーには希特勒(シトラー)という文字を当てずに、今後は習特勒(シトラー)と書くべきじゃない?」
「毛沢東は日本が侵略してきて国民党軍を追い出してくれたことを感謝した。包子帝は大勢の客を北京に呼んで、存在しない戦勝を祝っている(筆者注:抗日戦勝の主力は国民党であることを指す)。閲兵ブルーで一瞬澄み渡った空を通して、ファシストって何なのかをよく見てみよう。温故知新っていうだろう?」
◆株式市場を皮肉って
「(閲兵式の)彼らは緑の帽子を被り、緑の服を身にまとい、(株価が下がることを表す)緑のろうそくチャートを手に持ち、青ざめた顔に千鳥足。彼らはパレードに参加するために、標高5,179メートル(上海総合指数の最高点)の山から転落してきた! ほら見ろよ、彼らの心は熱い。義侠心を極める者ならば、国のために株式市場を支えるのは当然であるという、かつてない決意を示している!
首長:股民(グーミン。株式市場の個人投資家)、ご苦労様!
股民:圏銭に金を搾られるために頑張ります!
首長:股民よ、みんな頑張って真っ黒に日焼けしたな!
股民:証監会(中国証券監督管理委員会)の方が黒いです!」
(筆者注:圏銭とは「上場企業が投資家の利益を顧みず株式発行などの手段により資本調達をすること」を指す。首長と股民の掛け合いは、習近平が閲兵式のときに車の上から中国人民解放軍に向けて「皆さん、ご苦労様!」と声をかけ、兵士が「人民のために頑張ります!」と回答する様をもじったもの。)
「まずは空売り(からうり)の軍勢、つまり空軍が登場し、股民の努力でやっと株市場が持ち直した途端、今度は海外の空売り勢力が登場する。そして国家隊がやってきて株市場を救うために(下支えするために)動き出し、空売りの軍勢が一斉出動したら、国家隊がまさかのドタキャンをした!!!」
◆天安門事件を指して
1989年6月4日、天安門広場に集まった民主化を叫ぶ若者たちを、人民解放軍が武力弾圧した。それを指示したのは共産党政権である中国政府。特に戦車で若者をひき殺したことに対して、ささやかな抗議を書き込んでいる。
「いまわれわれに向かってきているのは解放軍の戦車隊だ。彼らの精神は奮い立ち、意気軒高だ。戦車隊は抗日戦争では活躍していないけど、でも年齢が比較的高い北京市民は、この戦車隊の威力をみんなこの目で見ている。」
「20数年前に、若者たちがこの天安門広場に集まった。でも彼らは二度と戻ってくることはなかった。彼らはいま、その場所で眠っている。閲兵式の軍隊よ、武器よ、どうか静かに進んでくれ。彼らをもう一度踏みつけないでくれ、もう一度ひき殺さないでくれ。彼らは人民がここに戻ってくるのを待っている。目を閉じながら、後人のために道を示している。もう一度、ここに集う若者たちを守るために。」
まだまだあるが、今回はここまでにしたい。
(追記:中国のネットユーザーの書き込みなので、変更してはまずいと思ってそのまま翻訳したが、内容的に正確ではないので、最初の「声」に関して、その部分を削除し「中略」とした。省くのは許されると判断した。)