投手陣の立て直しに成功し投打が噛み合ったソフトバンクがいよいよその本領を発揮する
【チーム差を見せつけたオリックス6連戦】
いよいよソフトバンクが、その本領を発揮し始めた。
開幕からロッテ3連戦、西武6連戦と2カード連続で負け越しを喫する厳しいスタートとなったが、開幕から1ヶ月経過し、7月20日現在でパ・リーグ首位の楽天に1ゲーム差の2位に迫っている。
元々他チームの追随を許さない選手層の厚さは誰もが認めるところだが、ここに来て投打のバランスが整い始め、いよいよそのチーム力を発揮し始めた感がある。
それを象徴するのが先週のオリックス6連戦だった。7月16日の第3戦こそ先発したバンデンハーク投手が3回途中で降板する乱調もあり敗れはしたものの、それ以外の試合では走攻守にわたりオリックスを圧倒。チーム差が如実に成績(5勝1敗)に出てしまったカードだった。
現時点ではチーム打率、チーム防御率ともに首位楽天がリーグ1位に君臨しているが、最近のチームの勢いはむしろソフトバンクが上回っているように思える。
【すっかり安定した投手陣】
開幕当初から大幅に改善されているのが、何といっても投手陣だ。出だしは先発投手が早めに崩れるケースが多く、中継ぎ陣をフル回転するような試合展開が多かったが、現在は先発陣と中継ぎ陣のバランスがすっかり整備されている。
下記の表をチェックして欲しい。これは開幕10試合と最近10試合の投手陣の登板状況を比較したものだ。「先発5回未満」とは先発投手が5回まで投げ切れなかった試合数で、「主力3投手登板数」は、今シーズンのソフトバンクの勝利の方程式ともいえる、高橋礼投手、リバン・モイネロ投手、森唯斗投手の合計登板試合数を表したものだ。
如何だろう。先発陣が安定して5回以上を投げられるようになり、それに伴い中継ぎ陣を温存できるようになったのが一目瞭然だろう。今や侍ジャパンでもエース格である千賀滉大投手の復帰も、その要因の1つだろう。
ちなみに最近10試合には、打球を足に直撃するアクシデントのため3回で降板した東浜巨選手の試合(7月17日)も含まれている。東浜投手はこれ以外の4試合ではすべて5回以上を投げている。
【厚みを増した中継ぎ陣】
さらに注目して欲しいのは、中継ぎ陣の起用法だ。
開幕10試合は大きく負け越ししていながら、主力3投手が延べ14試合も登板しているのに、最近10試合では8勝しているにもかかわらず、主力3投手の登板数はむしろ減っているのだ。これはつまり、勝ちパターンの試合でも主力3投手を温存可能な人材が揃ったということだ。
主力3投手以外にも実績を残す嘉弥真新也投手が存在していたが、そこに昨年から頭角を現した泉圭輔投手、川原弘之投手、新人の津森宥紀投手が計算できる投球を披露しており、調整で2軍に回った岩嵜翔投手の穴を完全に埋めている。
その甲斐あって最近では中継ぎ陣に余裕が出始めた証ともいえるのが、7月14日のオリックス戦で坂東湧梧投手が勝ちパターンの試合で1軍デビューを飾ったことだ。
【打線の援護も投手陣に好影響】
もちろん投手陣を立ち直られたのは、打線の援護があったからに他ならない。
開幕10試合での平均得点は3.6点だったが、最近10試合では5.1点まで跳ね上がっている。早めに得点のサポートを得られれば、その分だけ投手が楽に投げられるのは自明の理だ。
今シーズンの打線を象徴する存在は、昨年の左膝裏腱断裂の負傷から完全復活した柳田悠岐選手だろう。ここまでリーグトップのOPS1.227(MLBで使用される打者の指標で長打率と出塁率を足したもの。0.8以上で強打者といわれる)を記録するなど、打線を牽引している。このまま推移すれば、三冠王も狙えるような打撃を披露している。
さらに7月11日から、ベテランの中村晃選手が鮮烈に復帰したのも大きい。同17日のオリックス戦からウラディミール・バレンティン選手に代わり4番を任されるなど、しっかりクリーンアップの役割を果たしている。
さらに来日が遅れていたアルフレド・デスパイネ選手とジュリスベル・グラシアル選手がようやくチームに合流。今後さらに攻撃陣もさらに厚みを増すことになる。
投打の噛み合ったソフトバンクの快進撃が、いよいよ始まるのかもしれない。