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ゲーム開発者カンファレンズCEDEC 2024、AIの活用から「推し活」まで #専門家のまとめ

多根清史アニメライター/ゲームライター
(写真:イメージマート)

日本最大級のゲーム開発者向けカンファレンス「CEDEC 2024」が、8月21日~23日に開催されました。エンジニアリングやゲームデザイン、アカデミックから基盤技術まで多岐にわたり、200以上のセッションを実施。クリエイターの体験談、大作タイトルに使われた新技術や秘蔵のノウハウも語られるほか、識者からゲーム業界への提言もあり。

それらは業界を超えた「ハイテクや現代社会の最先端」が凝縮されており、ゲーム開発者でなくとも視聴しておきたい講演が少なくありません。オープンワールドでのプレイ体験を快適にする苦労から今やゲームと密接に関連ある「推し活」まで、興味深いトピックスを選り抜きました。

ココがポイント

▼広大な地上フィールドや地底ダイブ時のロード負荷軽減や、空島の自由度を高めるための「積極的放置」

「ゼルダの伝説 ティアーズ オブ ザ キングダム」地底ダイブ時のロード時間短縮術は「そんなことまでやってるの!?」と思わず笑ってしまう工夫が満載(GAMER)

▼莫大なカードの組み合わせパターンや短期間での新カード追加のもと、手作業では不可能な検証にAIをフル活用

・『学マス』AIによってリリース前にレッスンを10億回、人力なら1900年分の検証を実現。バランスブレイカーを効率的に見つけ出すAI学習とデッキ探索【CEDEC2024】(ファミ通)

▼新規IPの立ち上げ/ワールドワイドな展開/ライトユーザーへの訴求を一挙三得でクリアすべく「ボーカル楽曲」を採用

・「塊魂」ボーカル楽曲は“禁じ手”戦略だった。制作の秘密が20年を経て明かされる【CEDEC2024】(GAME Watch)

▼推し活の基礎となる「神聖さ」や想像上の存在との「関係」は宗教と通じるものがあり、作り手・受け手にとって課題

・日本人の「推し活」と宗教との類似性,そこに潜む課題とは。「消費社会の宗教:ファンダム・カルチャー」聴講レポート[CEDEC 2024](4Gamer)

エキスパートの補足・見解

ゲーム開発現場へのAI導入は避けられない流れになっており、別のゲーム開発者カンファレンズGDCでは49%の参加者が「すでに生成AIツールを使っている」と回答していました

今回のCEDECでは、さらに進んで「どの分野がAI導入に不向きで、どこが向いているのか」まで踏み込んでいます。カードの組み合わせで進行するゲームであれば、莫大なパターンを検証できるAI向き。かたやゲームプレイの自由度を広げつつ、プレイヤーに違和感を抱かせない調整は人間がやるしかないという具合です。

そしてゲームキャラは推し活ビジネスの対象となり、想像上の存在にカネを貢ぐ領域にも差し掛かっている。ゲームは「合理化」と「心」が交錯する接点になっているのです。

アニメライター/ゲームライター

京都大学法学部大学院修士課程卒。著書に『宇宙政治の政治経済学』(宝島社)、『ガンダムと日本人』(文春新書)、『教養としてのゲーム史』(ちくま新書)、『PS3はなぜ失敗したのか』(晋遊舎)、共著に『超クソゲー2』『超アーケード』『超ファミコン』『PCエンジン大全』(以上、太田出版)、『ゲーム制作 現場の新戦略 企画と運営のノウハウ』(MdN)など。現在はGadget GateやGet Navi Web、TechnoEdgeで記事を執筆中。

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