産・官・民を巻き込み関西圏大学スポーツの変革に挑む「KCAA」が誕生へ
関西圏の大学スポーツ界に新しい風が吹こうとしている。来年度から18大学が集まり、「KCAA(Kansai Collegiate Athletic Allianceの略)」を創設し、産・官・民を巻き込んだ大学スポーツの変革に着手していくことになった。それに合わせ3月25日に関係者を集め、創設記念シンポジウムが開催された。
「KCAA」の正式名称は「大学スポーツコンソーシアムKANSAI」。関西圏の18大学が正会員として登録され、立命館大学の井坂忠夫教授が代表理事に就任し、4月初めに一般社団法人として登記される予定だ。本欄で昨年5月に関西圏の大学がスポーツコンソーシアム構想を検討していることをレポートしているが、昨年1年間で計7回の検討会を経て、今回具体化されることになった。
今回参加する18大学は、関西大学、同志社大学、関西学院大学、龍谷大学、近畿大学、追手門学院大学、大阪体育大学、大阪産業大学、摂南大学、武庫川女子大学、大阪工業大学、甲南大学、大阪電気通信大学、四天王寺大学、神戸学院大学、天理大学、びわこ成蹊スポーツ大学、立命館大学──となっている。
「KCAA」の究極的な目標は、「KANSAIを元気に!!ニッポンを元気に!!」だ。同組織が大学スポーツを通じて産・官・民を繋ぐプラットフォームの機能を果たし、様々な面から社会を活性化することを目指している。そして果たすべき役割として4つの柱を掲げている。
1)大学スポーツにかかわる多様なステークホルダー間の情報共有・連携・協力を促進するプラットフォームの形成
2)社会を牽引し、未来を託せる「人財」の育成
3)大学スポーツの振興と発展に資するスポーツガバナンスの構築
4)大学スポーツの社会的・事業的価値の向上
今後は理事・監事(計20名)による理事会と各大学に設置されたスポーツ・アドミニストレーションが出席するスポーツ・アドミニストレーション会議で運営方針を決定していくことになる。今回は立ち上げに計18大学が名を揃えているが、今後も正会員のみならず賛助会員(企業等)、パートナー会員(自治体や公益法人、学生団体などの互恵性がある団体)を随時募集し、最終的には正会員大学70校、賛助会員100法人程度の参加を目指している。
来年度はスポーツ庁も「日本版NCAA」を開設する予定で、大学スポーツ界は新たな時代を迎えようとしている。「KCAA」はその先駆け的な存在となり、大学スポーツを「する」「みる」「ささえる」「つくる」の側面から変革を推進していくものだ。また「日本版NCAA」開設後は同組織とも連携しながら事業展開していく予定だという。
大学スポーツはまだ手つかずの魅力ある市場だといえる。例えば「日本版NCAA」のモデル組織である米国の「NCAA」の場合、2017年の収入額が初めて10億ドル(約1050億円)を超え、MLBと同等の市場規模を誇る巨大組織までに成長を遂げている。アマチュアスポーツといえども産・官・民が参画でき、しかも十分な利益性が期待できる市場なのだ。
ただ日本の大学スポーツ界は「NCAA」とは事業形態が異なり、競技ごとに協会・連盟が運営を担っており一貫性がない。しかも人気競技以外は観客も集まらない“部活動の延長”という性質が強く、これらを大学スポーツとしてまとめ上げていくのは決して簡単な作業ではない。そんな中で「KCAA」はあえてスポーツ界の再編を図っていくのではなく、協会・連盟とも協力しながら3つのフェーズ(「コミュニティ作り、愛校心醸成」「スペクテイターを増やす・拡散する」「大学スポーツ・アスリートを起点としたスポーツ産業・健康コミュニティの創生」)をクリアしながら日本独自の発展を目指そうとしている。
まだ旗揚げしたばかりの組織なので今後どのような活動ができるのかは未知数だし、日本の大学スポーツが「NCAA」のような巨大市場まで発展できるとは到底思えない。ただ「KCAA」が産・官・民を繋ぐ接着剤になることで、大学スポーツの形態が大きく変わっていく可能性が極めて高くなっていくのではなかろうか。「KCAA」正式発足後の動向に注目していきたいところだ。