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今年からスマホ確定申告が開始 便利な反面、注意点も

小澤善哉公認会計士・税理士
(写真:アフロ)

 30分待ち、1時間待ちは当たり前――。と言っても、今流行りのラーメン屋やパン屋の行列の話では有りません。

 寒い時期になるとやってくる所得税の確定申告の季節。3月15日の期限が差し迫る頃には、税務署で確定申告書の提出待ちの長い列が出来るのが、毎年の恒例行事となっています。

 でも今年から、この混雑によるイライラを避ける道が少しだけ開けました。スマホによる確定申告が新たに認められるようになったからです。

スマホで申告できる内容はまだ限定的

 スマホ(やタブレット)による確定申告(以下、「スマホ申告」と言います)の手順は、次の通りです。

 まず、インターネットで国税庁の確定申告書等作成コーナーのスマホ版にアクセスします。「作成コーナー」などと検索すれば、すぐにたどり着けます。

 作成コーナーの画面に入ると、申告内容や提出方法についての簡単な質問についての回答がいくつか求められますが、ここで注意したい点が2点有ります。

 注意点の1つ目は、スマホ申告が出来るのは、医療費控除やふるさと納税の還付など、比較的単純な申告内容に限られる点です。

 それ以外の申告内容については、残念ながら現時点ではスマホ申告は出来ません。たとえば、2か所以上から給料をもらっている、自宅を売却した、副業で不動産収入がある、株の損失を来年に繰り越したい、など申告内容が少しでも複雑になるとスマホ申告では対応できないのです。

 国税庁の同コーナーのパソコン(PC)版の画面であれば、幅広い申告内容に対応可能ですので、パソコンなどでそちらにアクセスしてみて下さい。

スマホ申告にはIDとパスワードが必要

 注意点の2つ目は、IDとPW(パスワード)が必要とされている点です。

 スマホ申告では、提出方法を選択しなければなりません。提出方法には、「e―Tax」と「書面」の2種類の方法が有ります。

 このうち、「e―Tax」はスマホからデータを送信するだけで申告が完結する方法、「書面」はスマホで作成したデータを紙に印刷してから、税務署に持参や郵送によって提出する方法です。

 後者「書面」を選んだのではスマホだけでは申告が完結しないため、なるべくなら前者「e―Tax」で提出したいところです。しかし、「e―Tax」を利用するには、IDとパスワードが別途必要です。

ID・パスワード取得は税務署へ出向く必要が

 ID・パスワードを取得するためには、面倒でも一旦税務署に出向く必要が有ります。

「いつでもどこでもスマホで申告」と税務署のポスターやパンフレットでうたっているにもかかわらず、スマホだけでは完結せずに、結局、税務署に行かなければならない点は改善の余地が有るでしょう。

 ID・パスワードは、管轄の税務署だけではなく日本全国どこの税務署でも発行してくれますので、たとえば勤務先の近くの税務署など、自分が行きやすい税務署を自由に選ぶことが出来ます。ちなみに確定申告シーズンは、住宅街に有る税務署よりもオフィス街に有る税務署のほうが、幾分空いているように思います。

 税務署でID・パスワードの交付を受ける際には、運転免許証、マイナンバーカード、公的医療保険の被保険証などの本人確認書類が必要となりますので、絶対に忘れないようにして下さい。

 税務署では、対面による本人確認を行った後に、その場でID・パスワードを記載した書類を発行してくれます。そこに記載されているID・パスワードは、今回の確定申告だけではなく来年度以降も使用できます。来年以降は、ID・パスワードを取得するために税務署に出向かなくてもいいわけです。税務署で受け取った書類は、なくさないようにしましょう。

 なお、前年度に確定申告書作成会場等で、IDとパスワードをすでに交付してもらったという方は、スマホ申告のために新たなID・パスワードを交付してもらう必要はありません。

その他の提出方法

 税務署の窓口に申告書を直接持参するのは難しいという方には、前記で紹介した方法のほかに、郵送で提出する方法(消印日が提出日となります)や、マイナンバーカードとICカードリーダライタの2つを使う方法、税務署に設けられた「時間外文書収受箱」に申告書等を投げ込む方法も有ります。

 期限ギリギリになって慌てないようにするためにも、時間に余裕を持った早めの申告を心がけたいものです。

公認会計士・税理士

法人・個人の税金をはじめ、相続、会計、法律、経営などジャンルを問わず相談できるオールラウンドプレイヤー会計士を自負。「人の役に立つ仕事がしたい」「毎日ドキドキワクワクしたい」という思いで、日々仕事にまい進中。「なぜ犬神家の相続税は2割増しなのか」「ひとめでわかる株・FX・不動産の税金」(いずれも東洋経済新報社刊)など著書多数。1990年東京大学経済学部卒業。1997年に7年間勤めた監査法人を辞めて独立開業、現在は銀座で小澤公認会計士事務所を開設している。国土交通省「合理的なCRE(企業不動産)戦略の推進に関する研究会」ガイドライン作成ワーキング・グループ委員を歴任。

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