Yahoo!ニュース

4マス全体への業種別広告費の10年間の変化をさぐる(2023年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
テレビCMでの新商品紹介などでよくあるビジュアル。出稿側の広告費の動向は(写真:イメージマート)

電通は2023年2月に日本の広告費に関する調査報告書「2022年 日本の広告費」を発表した。その内容を基に広告を出稿した業種の4マス(4大従来型メディア。テレビメディア、ラジオ、新聞、雑誌)全体における広告費の10年間での変化を確認する。

直近となる2022年における媒体別広告費前年比は次の通り。今回取り扱う4媒体ではラジオのみがプラス。

↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2022年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、前年比)(2022年)

↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2022年)
↑ 媒体別広告費(電通推定、億円)(2022年)

今報告書にはテレビメディア・雑誌・新聞・ラジオに対する、21に区分した広告主業種別の広告費の推移が掲載されている。2022年と2012年における対象メディアすべての値を抽出し、整理した上で並べてグラフ化したのが次の図。ただしテレビメディアでは衛星メディア関連は除かれている。

↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2012年と2022年)
↑ 業種別広告費(4マス全体、億円)(2012年と2022年)

単純な総額(4マス限定)では2012年が2兆7796億円、2022年が2兆2734億円と2割近くの減少。業種別で増加したのはエネルギー・素材・機械、不動産・住宅設備、情報・通信、金融・保険、外食・各種サービス、官公庁・団体の計6業種で、あとはすべて減少。東日本大震災の影響、相次ぐ政変、高齢化の進行(特に団塊世代の高齢化突入)に伴う社会構造の変化、インターネットやスマートフォンの普及によるメディアシフトの流れ、新型コロナウイルスの流行、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた物価高など、劇的な動きが生じたとはいえ、金額面における変容ぶりが改めて認識できる結果ではある。またこの時代の流れでどこまで(4マスへの)広告投資のウェイトが変わったのか、業種別の動向を推し量れる値となっている。

割合でもっとも増加したエネルギー・素材・機械(プラス33.1%)は262.4億円から349.3億円へと86.9億円の増加。具体的には「電気、ガス、ガソリン、紙、鉄鋼、化学材料、農業機器、建設・土木機器、工作機器、店舗用機材など」が該当し、ロシアによるウクライナへの侵略戦争で生じた物価高(特に資源価格の高騰)が大きく影響していそうな業種ではある。

10年間で半分以上に額を減らしているのはファッション・アクセサリー。ファッション・アクセサリーは具体的には「衣料品、生地、身回繊維品、靴、バッグ、傘、貴金属・アクセサリーなど」を指す。勢いのある業種とは言い難いが、ここまで減少するのは不思議な感もある。この業種の広告費そのものが減ったのではなく、インターネット通販への誘導で直接購入に結び付きやすいインターネット広告にシフトする形で4マスへの出稿が減ったと考えれば道理は通る次第ではある。

■関連記事:

【若者のパチンコ離れが進む…パチンコの利用動向推移をさぐる】

【ネット上の情報、新聞や雑誌と同じように信用できる?】

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

(注)記事題名、本文、グラフ中などで使われている数字は、その場において最適と思われる表示となるよう、小数点以下任意の桁を四捨五入した上で表記している場合があります。そのため、表示上の数字の合計値が完全には一致しないことがあります。

(注)グラフの体裁を整える、数字の動きを見やすくするためにグラフの軸の端の値をゼロではないプラスの値にした場合、注意をうながすためにその値を丸などで囲む場合があります。

(注)グラフ中では体裁を整えるために項目などの表記(送り仮名など)を一部省略、変更している場合があります。また「~」を「-」と表現する場合があります。

(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。

(注)「(大)震災」は特記や詳細表記のない限り、東日本大震災を意味します。

(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

不破雷蔵の最近の記事