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高齢者の犯罪被害の実情をさぐる(2019年公開版)

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 高齢者の事例が多い振り込め詐欺。最近では各種対応も行われているが。(写真:アフロ)

オレオレ詐欺をはじめ、高齢者が刑法犯の被害者となる事案は多々生じている。その実情を、内閣府が2019年6月に発表した「高齢社会白書」をベースに、各種統計データから確認する。

まずは高齢者(65歳以上)が刑法犯の被害者として認知された件数の実情。刑法犯認知件数そのものが戦後最大を記録したのは2002年で、高齢者を対象とした件数もその年が最大値となる。それ以降は「件数」は減少の一途をたどっているが、全認知件数の高齢者比を算出するとむしろ増加傾向にある。

↑ 高齢者の刑法犯被害認知件数(高齢社会白書(2019年版)、万件)
↑ 高齢者の刑法犯被害認知件数(高齢社会白書(2019年版)、万件)

2009年には高齢者における認知件数・比率ともに多少ながら減ったものの、2010年以降は件数が減少する一方で比率は増加(つまり若年層の認知件数よりも減り方が緩やか)、2013年に至っては件数も前年比で増加しており、これが比率を大きく底上げ(前年比で1.1%ポイント増加)する形となった。

現時点で直近となる2017年における、全被害認知件数に占める高齢者の割合は14.8%に達している。つまり認知されている刑法犯による被害者全体の、約6.8人に1人は高齢者との計算になる。全人口に対する高齢者比率が増加しているのが主要因で、注視すべき状況ではある。

その高齢者が受ける被害としてもっとも多く認知されているのが、いわゆる「振り込め詐欺」。これは今世紀に入ってから大きな社会問題化しており、関係当局では2008年に入り本腰を上げて対策に取り組んだ結果(金融機関の「振り込め詐欺防止システム」の導入、犯罪性のある口座の凍結の促進や開設時の本人確認の厳格化、警察官立会や呼びかけなど)、2009年には一時的に大きく減少することとなった。

↑ 振り込め詐欺の認知件数・被害総額(高齢社会白書(2019年版))
↑ 振り込め詐欺の認知件数・被害総額(高齢社会白書(2019年版))

ただしグラフの注記にもある通り、「警察官などを装ってキャッシュカードを直接受け取る手口のオレオレ詐欺」をはじめ、官公庁職員や金融関係者を装ったタイプの手法など、容疑者側も手を変え品を変えているのが確認できる。また未公開株などの有価証券や外国通貨等の取引名目の詐欺も増加中。

2009年に大きく減った認知件数も2012年を底に再び増加に転じている(直近年の2018年では前年比で減少したのは幸いだが)。この増加の大部分はオレオレ詐欺と架空請求詐欺の増加を要因としている。社会情勢に即時対応する形による詐欺が増えているのも特徴の一つ。世の中に何か変化があったら、あるいは不特定多数が見聞きするような事案が生じたら、それに関連する詐欺(直接相対すること無く金銭を詐取する、この類のものは特殊詐欺と呼ばれている)が登場すると考えて、まず間違いない。昨今ではマイナンバーに関する事案だろう。

白書側ではこれら振り込め詐欺の認知件数・被害総額が急激に増加した背景には、その対象者の多くが高齢者、特に高齢女性の割合が多いことを挙げている。例えば振り込め詐欺の2018年中の被害者のうち60歳以上は83.7%を占め、オレオレ詐欺に限ると97.9%に達し、70歳以上の女性が79.8%との高い値を示している。このような状況は多分に高齢者そのものの増加によるものだが(女性の比率が高めに出ているのも、女性が男性よりも長寿であることから、高齢女性の数・比率が高くなるのが一因)、改めて注意喚起を行っている。

団塊世代の高齢化に伴い、退職金などの受領により多額の金融資産を所有するようになった高齢者人口の増加により、金銭に絡んだ刑法犯、特に振り込め詐欺の類による高齢者の被害が(手口・切り口は変化しつつ)増加していくことは、ほぼ間違い無い。容疑者サイドにしてみれば「カモがネギをしょってやってきた」状態に見えるのだろう。

このような事案の場合、仮に容疑者側が捕まったとしても、詐取された金銭が戻ってくることはあまり無い。それにより、多くの高齢者にとって数少ない命綱が絶たれることになる。本人はもちろん、周囲に高齢者がいる人は、十分以上に注意し、配慮を払ってほしいものである。

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グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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