Yahoo!ニュース

9月のロースター枠拡大でMLB初昇格の期待がかかる超目玉選手

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
父が殿堂入りした年にMLBデビューの期待がかかるブラディミール・ゲレロJr選手(写真:USA TODAY Sports/ロイター/アフロ)

 9月のロースター枠拡大を目前に控えたMLB。この時期のファンの関心事の1つが、どんな若手有望選手たちがMLBに昇格してくるかだ。そんな中、多くのメディアから大きな注目を集めている超目玉選手が存在する。ブルージェイズ傘下3Aバッファローに在籍しているブラディミール・ゲレロJr選手だ。

 もうMLBファンならこの名前を聞いただけで一目瞭然だろう。つい先日殿堂入りしたばかりのブラディミール・ゲレロ選手の息子なのだが、プロ入り以来現在まで2世選手として順調に父親を彷彿させるような才能を披露し続けているのだ。

 2015年に外国人枠選手としてわずか16歳ながら契約金390万ドルでブルージェイズ入り。父のような強肩やスピードはないものの当時から非凡な打撃センスが高く評価され、MLB公式サイトの有望選手ランキングで4位に入る逸材だった。

 2016年からプロデビューすると順調にマイナーのレベルを上げていき、3年目の今シーズンは招待選手としてメジャー・キャンプにも参加しオープン戦にも4試合出場を果たし、2Aニューハンプシャーで開幕を向かえた。そこでも開幕から快進撃を続け、一時期故障で戦線離脱したこともあったが、61試合に出場し打率.402、14本塁打、60打点の成績を残し、7月31日には3Aバッファローに昇格している。

 3A昇格後もその勢いは留まるところを知らず、4試合連続本塁打を含め8月11日までは打率.400以上をキープしていた。現在はやや下降気味だが、それでも21日現在で17試合に出場し、打率.339、4本塁打、7打点の好成績を残している。

 実はゲレロJr選手があまりに打ち続けているため、彼の記録に関してMLB公式サイトも注目している。ここまで今シーズンのマイナー通算打率(2A、3A、及びリハビリ出場したルーキーリーグ、1Aを含む)は.389を維持。残り試合の成績次第では57年ぶりにプロ選手としてシーズン打率.400を達成できるかもしれないのだ。こちらも大きな関心事になっている。

 ゲレロJr選手のポジションは3塁なのだが、マイナーながらあまりに順調に打ち続けるため、ブルージェイズ・ファンから主力のジョシュ・ドナルドソン選手を放出し、ゲレロJr待望論まで飛び出すほどだった。それほど地元ファンは彼のMLB初昇格を待ち望んでいる状況だ。

 ただ現時点でゲレロJr選手は40人枠に入っておらず、ロースター枠が拡大されてもMLB昇格はできない。もちろんプロ3年目の19歳であり、無理して昇格させる必要は無い。だが今シーズンの彼は明らかにチームの期待を上回る打撃を披露しており、後はブルージェイズの判断に委ねられている。仮に40人枠に入りMLB初昇格を果たすことになれば、21歳でMLBデビューを飾った父を超えることになる。

 ところでゲレロJr選手に関して、個人的に懐かしい思い出がある。2002年シーズンのことだが、当時吉井理人投手と大家友和投手の2人が在籍していたため、たびたびエキスポスの取材に回っていたのだが、顔を出す度に試合前のグラウンドに姿を現す幼い少年がいた。選手の子供であることは明らかだった。

 その少年はとにかく野球が好きで、暇さえあれば選手やコーチ相手に野球に興じていた。特に彼の相手をしてくれていたのがアンドレス・ガララーガ選手で、自分の練習以外は少年の投手役を務めていた。しかも幼い割には鋭い打球を飛ばしていたので興味を抱き、チーム関係者に確認したところ、ゲレロ選手の息子でまだ3歳であることを知らされた。

 その瞬間、3歳とは思えないその体格と野球センスの高さに驚かされたのを今でも鮮明に憶えているのとともに、その時から少年の野球に対する執着心とガララーガ選手をコーチ役にしている恵まれた環境から、いつしかMLB選手になるのではと感じていた。なので2015年にブルージェイズ入りが発表された時は“遂に来たか!”と嬉しくなったし、前述したここまでの活躍は自分の期待をさらに膨らませていった。

 今はMLBの舞台でゲレロJr選手を直接取材できる機会が訪れるのを夢見るばかりだ。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

菊地慶剛のスポーツメディア・リテラシー

税込550円/月初月無料投稿頻度:月3、4回程度(不定期)

22年間のMLB取材に携わってきたスポーツライターが、今年から本格的に取材開始した日本プロ野球の実情をMLBと比較検討しながらレポートします。

※すでに購入済みの方はログインしてください。

※ご購入や初月無料の適用には条件がございます。購入についての注意事項を必ずお読みいただき、同意の上ご購入ください。欧州経済領域(EEA)およびイギリスから購入や閲覧ができませんのでご注意ください。

菊地慶剛の最近の記事