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異例の規模の日銀リークとの見方について

久保田博幸金融アナリスト
(写真:つのだよしお/アフロ)

 3月25日にブルームバーグは「異例の規模の日銀リーク、真剣な調査」という表題のコラムをアップしていた。

 「19日午後に日銀が金融政策の大転換を発表した時には、誰も気にしなかった。日銀が何をするのか、細部まで誰もが既に知っていたのだ。」

 確かに事前にブルームバーグも含め、日経新聞やロイター、共同通信、時事通信などから日銀の政策修正に関する報道が相次いだ。

 これについてはリークというよりも、大きな政策転換となり、過去の経験も踏まえて、日銀が慎重に準備を進めた結果とみたほうが良いと思う。

 今回は金融政策を異常なものから正常なものに戻す作業ではあったが、マイナス金利解除に関して、内田副総裁が以前に0.1%の利上げと表現していたこともあり、これは金融引き締めのひとつと認識されていた(私はそうは思わないが)。

 金融緩和はサプライズであったほうが市場への効果は大きいとされ、金融引き締めは反対に市場に織り込ませ、市場の動揺を軽減させることが重要になる。

 コラムでは下記のコメントがあった。

 「会合が始まる前から、変更を示唆する国内メディアの報道が続いていた。だが特に注目すべきは、日銀が国会質疑を除いて対外発言しないとしたブラックアウト期間入りした後に行われたことだ。」

 日銀が複数メディアへの説明を行っていたのは、ブラックアウト期間前であり、報じたタイミングがブラックアウト期間入りとなってしまっただけかと思う。

 メディアから出たことを中心に書かれていたが、それよりも注目すべきは、2月8日の内田副総裁の講演、29日の高田審議委員の講演、3月7日の中川審議委員の講演内容となろう。

 これまでのこの三者の言動などから、今回の政策修正のキーマンはやはり内田副総裁であると思われる。高田委員や中川委員は内田副総裁の動きに同調していることが多いとみていた。

 このため、この三者によって、3月19日に向けた流れを作り、そこにメディアの報道を合わせて市場のコンセンサスを得ようとしたと考えられたのである。

 こういったことは日銀のみならず、FRBやECBも行っていよう。ECBのラガルド総裁は6月の利下げを示唆していたが、これもリークというのであろうか。

 ただし、ひとつの報道だけは個人的にリークであった可能性を指摘したい。それはこのコラムにあった下記のことである。

 「同日午前、会合の半ばごろの時間には、NHKは植田総裁がマイナス金利政策の解除など大規模な金融緩和策の転換についての議案を提案し、議論の取りまとめに入ったと伝えた。」

 これについてはもしや執行部が、とその瞬間思ったが、考えてみるとこれは議長案が提示され、それを政府出席者が担当大臣に確認するための休息時間に行われた可能性が極めて高い。実は同様の事例は過去にもあったとされる。

 そうであれば政府関係者経由で、NHKがその情報を掴んだ可能性も否定はできない。そうであれば、これはリークとなるのではなかろうか。

金融アナリスト

フリーの金融アナリスト。1996年に債券市場のホームページの草分けとなった「債券ディーリングルーム」を開設。幸田真音さんのベストセラー小説『日本国債』の登場人物のモデルともなった。日本国債や日銀の金融政策の動向分析などが専門。主な著書として「日本国債先物入門」パンローリング 、「債券の基本とカラクリがよーくわかる本」秀和システム、「債券と国債のしくみがわかる本」技術評論社など多数。

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