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マニュアルフォーカスレンズでミラーレスカメラを楽しむ【カールツァイス Loxiaレンズレビュー】

塙真一フリーフォトグラファー
「筆者撮影」

オートフォーカスが当たり前の時代にあえてマニュアルフォーカスレンズをチョイスする

 最近のカメラはオートフォーカスで撮影するのが当たり前となっています。カメラメーカーやレンズメーカーが発売するレンズも、そのほとんどはオートフォーカス機構を搭載しています。ですが、一部のレンズではあえてオートフォーカス機構を搭載せず、その分、小型軽量ながら明るくて高性能な製品も存在しています。

 カールツァイス社が発売するソニー Eマウント用レンズとなるLoxiaレンズシリーズもそんなレンズの一つです。ソニーのα7シリーズなどに装着して、マニュアルフォーカスで撮影を楽しむというのがこのレンズです。もちろん、α7シリーズはオートフォーカスに対応したカメラですから、純正レンズはすべてオートフォーカス機構を搭載しています。カールツァイス社製EマウントレンズでもBatisシリーズはオートフォーカス対応です。一方、Loxiaシリーズはマニュアルフォーカスのレンズとなります。Loxiaシリーズの魅力はなんといってもコンパクトなボディと切れの良い解像力です。

 今回は5本あるLoxiaシリーズのうち、新製品となるZEISS Loxia 2.4/25(25mm F2.4)を中心に、ZEISS Loxia 2/35(35mm F2)、ZEISS Loxia 2/50(50mm F2)の3レンズを使ってみました。

ミラーレスカメラならマニュアルフォーカスも快適

 光学ファインダーを搭載する一眼レフカメラの場合、マニュアルフォーカスレンズのピント合わせはフォーカシングスクリーンをぼけ具合を見ながらおこないます。このため、マニュアルフォーカスで厳密なピント合わせをおこなうのはとても難しいのです。一方、電子ビューファインダーを搭載するミラーレスカメラの場合、ピントを合わせたい場所を拡大して表示したり、ピントが合った場所に色をつけて強調表示するピーキング機能などを使ってより確実にピントを合わせることができるのです。このため、一眼レフカメラよりもミラーレスカメラのほうがマニュアルフォーカスレンズとの相性はよいといえます。

 実際にソニーのα9やα7 IIなどに装着してみましたが、ピントが合っている部分を拡大できるフォーカスアシスト機能をオンにしておけば、ピント合わせ時にファインダー内の映像が拡大されますし、フォーカスピーキング機能をオンにすればピント位置が色づけで分かるようになります。これらの機能のおかげでマニュアルフォーカスだからといってピンぼけ写真になってしまうということは皆無でした。

 もちろん、オートフォーカスレンズとは違い、いちいちピントを合わせてからシャッターを押すという儀式は必要となりますが、じっくりと被写体に向き合って撮影できるという意味では、むしろマニュアルフォーカスのほうが写真を撮る楽しさが増える気もします。

目の前の景色を広々と写せる ZEISS Loxia 2.4/25

 まず、新発売の25mm F2.4ですが、ソニーの純正レンズとしてはこの焦点距離の単焦点レンズはラインアップされておらず、画角的に近いものはFE 28mm F2です。ただし、28mmと25mmでは広角感はずいぶんと異なるため、やはり純正レンズでこの画角の撮影をするには16-35mmなどのズームレンズを使うことになります。単焦点レンズならではの軽快感を味わいたい人や、広々としたスナップ写真などを撮りたい人には魅力的なレンズといえるでしょう。ただし、肉眼で見ている以上に広く写る広角レンズですので、しっかりと画面構成をしてあげることが大切です。αシリーズのピーキング機能を使えばより厳密なピント合わせがおこなえますが、広角レンズですのでそれほどシビアなピント合わせをおこなわなくてもピンぼけに悩まされることはありません。広角レンズの場合、画面内に太陽が入り込むことが多いですが、このようなシーンでもコントラストが低下することもなく、ゴーストもほとんど発生しません。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

実際に見ている以上に広く写るため、空と土手を大きく写しながら、点景のように人を配置しました。開放絞りのF2.4でもシャープ感に不安はありません。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

F8まで絞ると、ほぼパンフォーカスとなり手前から奥まできっちりと描写してくれます。

スナップレンズとして常用したいZEISS Loxia 2/35

 35mm F2ですが、これはスナップレンズとしてはとても使いやすい画角といえます。開放F値もF2となっており、極端なぼけというよりはナチュラルなぼけが得られるレンズです。広角レンズ特有の歪みもほとんどないため、被写体を選ばず気ままなスナップが楽しめます。レンズ自体のコントラストも高く、逆光でもしっかりとした描写が得られるのもこのレンズの魅力だと思います。

 汎用性の高さで1本を選ぶならこのレンズが良いかもしれません。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

目の前の景色をボーッと見ているときの画角に近く、ナチュラルなスナップが撮れます。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

開放F値となるF2でもぼけすぎることはなく、背景の形を残した心地よいぼけ味が特徴です。

古典的な味わいと現代的な写りが同居したZEISS Loxia 2/50

 50mm F2は、いわゆるPlanarタイプのレンズ構成を採用しています。古くからのカメラファンならPlanarと聞いただけでワクワクしてしまうかもしれません。4群6枚というシンプルなレンズ構成ながら、ピント面はシャープに、それでいてぼけは味わい深いものになっているのがこのレンズの特徴です。スナップでももちろん使えますが、気軽に景色を切り撮るには少し焦点距離が長すぎるかもしれません。主題がはっきりしていて背景をぼかし気味にしたいときに重宝するレンズです。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

寂しげな印象に仕上げたかったのでモノクロモードで撮影しました。ぼけも大きいためマニュアルフォーカスでのピント合わせも素早くおこなえます。

「筆者撮影」
「筆者撮影」

F2.2での撮影ですが、Planarタイプのレンズらしい特徴的なぼけとなりました。描写力の高さは現代レンズそのものですが、ぼけは古典的なレンズという印象です。

 マニュアルフォーカスレンズというと、ピント合わせも難しく、使いこなせないのではと思う人もいるかもしれませんが、ソニーのαシリーズなら電子ビューファインダーも高精細でとても見やすく、しかも拡大やピーキング機能もありますので、使いにくさを感じることはありません。むしろ、ZEISS Loxiaシリーズのコンパクトさと単焦点レンズならではの写りは、純正レンズにはない楽しさといえるかもしれません。

 純正レンズのラインアップに加えて、ZEISS Loxiaシリーズのマニュアルレンズをチョイスしてみるのもよいかもしれません。マニュアルフォーカスならではの少しのんびりとした撮影リズムもまた楽しいものです。

フリーフォトグラファー

東京都出身。人物をメインの被写体とするフリーランスのフォトグラファー。カメラ誌に写真や記事を寄稿するほか、役者、タレント、政治家などの撮影も行う。また、海外での肖像写真撮影、街風景のスナップ、夜の街を撮る「夜スナ!」をライフワークとする。写真展の開催も多数。

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