【名古屋市千種区】アートを通じた居場所づくりに取り組む「裸るヴァ」(覚王山アパート)
2019年3月に解散した、障害者のアート支援に取り組んでいた団体「アトリエ裸虫(らむし)」の活動を引き継ぐ形で立ち上がった「裸るヴァ」さん。メンバーは、作家さん3人とその母親たちの合わせて6名です。
覚王山アパートに参加されたのは昨年の10月のこと。その時すでに2025年3月に営業を終了するということは知っていたそうです。
お店のオーナーである、すえさんにお話をうかがいました。
「アトリエ裸虫」にいた頃に、厠画廊(カワヤガロウ)に作品を展示させてもらったことがありましたので、覚王山アパートは以前から知っていました。当時はお客さんとして来ていたのですが、売る側にも憧れみたいなものを持っていまして「私もここでお店をやれたらいいな」って漠然と思っていました。いろんなご縁があっての今ということですが、6月に覚王山アパートの玄関ギャラリーでイベントをやらせていただいて、10月からこのスペースに居ついちゃうみたいな形で入らせてもらいました。まさか、本当にできるとは思っていませんでした。
もちろん、最初は「私たちみたいな者が簡単に入っていいところなのか」みたいな思いはありました。私自身、覚王山アパートは覚王山の象徴ではないですけど、やっぱり覚王山を代表する場といったイメージを持っていましたし、覚王山が紹介される時には絶対アパートって入ってきますから。でも、ここの方たちがすごく温かく迎え入れてくれて。今は本当に最後の最後にかかわれたことをありがたく感じています。そして、「少しでも皆さんと同じ時間を過ごして、一緒に卒業したい」という気持ちでいます。
お店には、メンバーの作家さんたちが描いた文字や絵をプリントした雑貨だけでなく、干し野菜やカレーなど、ゆかりのある事業所で作られたものも並んでいます。
お店で売っているものは、基本的には私がここで作っています。他に、ゆかりのある作家さんや事業所が作ったものも置いています。
ここに来ていただくお客さんに、雑貨を見て「かわいいね」とか「おもしろいね」って言っていただけるのも嬉しいのですが、それだけじゃなくて私たちの活動のことも知ってもらいたいという思いもあるんです。
一生関わらないって方、知らないし興味を持つこともないという方ももちろんいると思います。ただ、「ああ、頑張ってるんだね」ということを少しでも感じていただけたらいいなと思っています。
「裸るヴァ」という団体名は、前身の団体から「裸」の文字を受け継ぎ、イタリア語で幼虫という意味の「Larva(ラルヴァ)」からヒントを得て付けられたもの。
「裸るヴァ」のメンバーとは「アトリエ裸虫」で知り合いました。子供と保護者という関係で通っていたのですが、いろいろあって無くなることになった時、子供たちの居場所が無くなるのは寂しいなと感じて「アトリエ裸虫」の代表に「同じような活動になるんだけど続けていきたい」と話をして「裸るヴァ」を立ち上げました。
障害者のアート支援という形で、絵を描いたり、イラストをシルクスクリーンで刷っていろんな作品にして販売したりしています。
メンバーと知り合ったことはもちろん、活動内容など、いろんなことを引き継ぎながら大切にしたいと考えています。ちなみに、団体の幼虫のイラストは「アトリエ裸虫」の代表だったトペコっていう名前の作家さんに描いてもらったものです。幼虫って、小さい存在ですけど作品になったりしてふわっと飛び立っていくとか、そんなイメージもあるんです。
今、毎日がすごく楽しい。
何か作っている方とか常連の方も多くて、そういう方ともお話ができてすごく楽しいです。お客様とのやり取りから新たなものが生まれたりも。
たとえば言葉。最初、「うまれてきてくれてありがとうございました」っていい言葉ねって言われるんですけど、実は「うまれてきくれてあがとございました」って書いてあるんです。障害者の方が思いを書くとこうなっちゃうってところに、みなさんすごく共感してくれて。「これのポストカードがあったらほしい」とかリクエストじゃないですけど、こういうのがあったらいいなっていうのを言ってくれたりして、「じゃあ、みんなに相談してみよう」なんて。
ここが無くなった後のことはまだ何も考えていません。また、イベントに参加したり、どこかに作品を置かせてもらったりして、そのまま前の活動に戻るのかな。それとも別のご縁があるのか。まだ何も決まってません。
店舗情報
店名:裸るヴァ
住所:名古屋市 千種区 山門町 1-13
営業時間:11:00~18:00
定休日:火曜日・水曜日(祝日、21日の縁日は営業)
※営業時間・定休日は覚王山アパートに準ずる