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諸外国で新聞はどこまで信頼されているのだろうか

不破雷蔵グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  
↑ 新聞は社会に情報と文化をもたらす存在ではあったのだが…(写真:アフロ)

・アメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイ、日本では2018年時点で新聞は「普通」以上の信頼を受けている。

・インターネットの普及が進むに連れて新聞の役割は縮小していくと考えている人は諸国で半数以上。日本は唯一半数未満。中国やタイでは縮小していくとの意見が多い。

・経年推移ではインターネットの普及が進んでも新聞が果たす役割は今まで通り大きいとする意見は、アメリカ合衆国で増加する傾向にある。

文化の象徴、立役者を自称する新聞だが、インターネットとそれを扱う機器の普及に伴い、大きく利用価値や相対的存在意義の変質の中にある。諸外国ではどれほどの信頼を得ているのだろうか。新聞通信調査会が2018年3月に発表した調査結果「諸外国における対日メディア世論調査(2018年実施)」(※)から確認していく。

次に示すのは、調査対象国では新聞はどれほどの信頼を得ているのだろうか、との問いの回答結果。設問では単に「新聞」とのみの表記だが、その文脈から全国紙あるいは地方紙など法人が販売する、一定数以上の販売数を持つ新聞を対象としていると判断できる。まったくの信頼無しをゼロ点、普通を50点、全面的に信頼を寄せている認識ならば100点とし、自由採点をしてもらった上でその平均点を算出した結果が次のグラフ。今調査では日本は対象としていないが、2017年11月に実施された類似形式による「メディアに関する全国世論調査」(※※)の結果も併記する(調査方法が異なるので参考値以上の意味は無い)。

↑ 各国新聞の情報への信頼度(まったく無信頼ゼロ点、普通50点、全面信頼100点として自由採点した上で平均点)
↑ 各国新聞の情報への信頼度(まったく無信頼ゼロ点、普通50点、全面信頼100点として自由採点した上で平均点)

何が「普通」とすべきかは歴史的背景や価値観によるところが大きいが、すべての国で現状では普通以上の信頼は得ていることになる。もっとも欧米ではいくぶん信頼度は低め、アジア、特に日本では高めの値が出ている。新聞など従来型メディアに対する日本の信服感はかねてから知られているところであり、それが裏付けられた形となる。韓国が欧米並みに低めなのは意外だが。

「そこそこ、普通には信頼できる」との判断が示されている新聞だが、今後インターネットの普及がさらに進むに連れて、役割が縮小化する懸念がある。そのような状況が今後さらに進行していくのか、それとも今まで通り新聞は報道に大きな役割を果たし続けるのか、新聞の未来について思うところを述べてもらった結果が次のグラフ。「役割は今まで通り大きい」とする方向性の意見を合算し、過去の同様調査との比較をしたグラフも併記しておく。

↑ 将来の新聞の役割をどのように思うか「A:インターネットなどの普及で新聞の役割が小さくなってくる」「B:今まで通り、新聞が報道に果たす役割は大きい」(2018年)
↑ 将来の新聞の役割をどのように思うか「A:インターネットなどの普及で新聞の役割が小さくなってくる」「B:今まで通り、新聞が報道に果たす役割は大きい」(2018年)
↑ 将来の新聞の役割をどのように思うか(新聞が果たす役割は今まで通り大きい派合計)
↑ 将来の新聞の役割をどのように思うか(新聞が果たす役割は今まで通り大きい派合計)

今回の調査対象国の中では新聞への信頼度が一番低いイギリスでは、役割の縮小を唱える人が一番少ない(参考値の日本は除く)。一方で維持を回答する人もタイや中国に続く少なさで、「どちらともいえない」との回答が一番多い割合を示している。他国と比べて新聞への想いは複雑なようだ。「もっとしっかりしてくれ」との内面の想いがにじみ出ているようでもある。

役割は縮小化するとの意見はタイで8割超え、中国で7割超、アメリカ合衆国やフランス、韓国で6割前後。ただしアメリカ合衆国やフランス、韓国では役割の維持を主張する意見も約3割台を計上しており、新聞の権威継続を思う人が一定数いることが分かる。詳細は省略するが、年齢階層別動向を見ると、大よその国で若年層ほど役割の縮小を予見し、高齢層ほど役割は依然大きいままと認識している(中国では年齢階層別の違いはさほど無く、韓国では中堅層が一番役割縮小の値が高いなど、国ごとの事情も透けて見える)。価値観の年齢階層間における格差が表れているようだ。

日本では役割縮小の回答率はイギリスに近いものの、維持の回答率はフランスや韓国とほぼ同程度。調査手法が異なり単純比較はできないが、新聞に対する信奉心の強い日本らしい実態には違いない。

まだ4年分しか結果が蓄積されていないが、経年推移の限りでは、アメリカ合衆国と中国以外では「役割は大きい」との認識は縮小しつつあるように見える(直近年でいくぶん反発しているが)。新聞報道に関して周辺環境が真逆のように見える両国で、インターネットが普及を進めても新聞が報道に果たす役割は大きいままだとの認識が同じように増加しているのは、興味深い傾向ではある。

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※諸外国における対日メディア世論調査

直近年分はアメリカ合衆国、イギリス、フランス、中国、韓国、タイに対し、2017年12月から2018年1月に行われたもので、アメリカ合衆国・フランス・韓国は電話調査、イギリス・中国・タイでは面接調査で実施されている。調査地域は中国・タイは都市圏、それ以外は全国。対象年齢は中国以外は18歳以上、中国も同様だが70歳以上の回答者は1名のみのため属性別では除外されている。回収サンプル数は各国約1000件。過去の調査もほぼ同様の調査スタイル。

※※メディアに関する全国世論調査

直近分は日本国内において、2017年11月2日から11月21日にかけて住民基本台帳からの層化二段無作為抽出法によって抽出された18歳以上の男女個人5000人に対して、専門調査員による訪問留置法によって行われたもの。有効回答数は3169人。有効回答者の属性は男性1526人・女性1643人、18~19歳63人・20代274人・30代422人・40代567人・50代504人・60代601人・70代以上738人。過去の調査もほぼ同様の調査スタイル。

(注)本文中のグラフや図表は特記事項の無い限り、記述されている資料からの引用、または資料を基に筆者が作成したものです。

(注)本文中の写真は特記事項の無い限り、本文で記述されている資料を基に筆者が作成の上で撮影したもの、あるいは筆者が取材で撮影したものです。

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(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更を加えたものです。

グラフ化・さぐる ジャーナブロガー 検証・解説者/FP  

ニュースサイト「ガベージニュース」管理人。3級ファイナンシャル・プランニング技能士(国家資格)。経済・社会情勢分野を中心に、官公庁発表情報をはじめ多彩な情報を多視点から俯瞰、グラフ化、さらには複数要件を組み合わせ・照らし合わせ、社会の鼓動を聴ける解説を行っています。過去の経歴を元に、軍事や歴史、携帯電話を中心としたデジタル系にも領域を広げることもあります。

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