【富士宮市】地名阿幸地の由来にもなった『悪王子神社』~富士山噴火防止を祈念して火の神を祀った神社~
国道139号の東阿幸地交差点から県道158号線を西へ約100mほど進むと、右側に阿幸地区公会堂があります。公会堂の入口には、金色の文字で『悪王子』と書かれています。
なんだか傲慢な王子様が住んでそうなイメージが漂う公会堂の西側には、『悪王子神社』と掲げられた石鳥居があり、奥には閑静な住宅地の一角に赤々とした鳥居が見えました。
建立は大正6年9月。奉献者は大宮町第三消防組と記されていました。
石鳥居をくぐって公会堂脇を歩くと、歩く博物館の看板があり、『祭神は力が強い王子「火之御子神」で、富士山の噴火を沈めてくれる神だと言われている(悪=強い)。地名の阿幸地はこの神社に由来する』と記されていました。
悪王子の悪は『悪い』という意味の悪ではなく、『強い』という意味なんですね。そして悪王子の名が現在の地名『阿幸地』の由来になったとは驚きです。
境内には赤鳥居が立ち、その後ろに1対の楠木が圧倒的な存在でそびえています。
この楠木は富士宮市の保存樹に指定されています。
拝殿は現代的で、シャッターが閉まっていました。裏の神殿は新しさの中にも猛々しさを感じるようでした。
悪王子神社のご祭神である「火之御子神」は「火之迦具土神(ヒノカグヅチノカミ)」とも呼ばれています。
火を司る神である「火之迦具土神」(呼びづらいのでここではカグヅチと呼びます)は、誕生の時から火をまとっていたため、生まれる際に母に火傷を負わせ殺してしまいます。
これに激怒した父はカグツチを切り殺してしまいます。(おいおい、いくら奥さんを愛していたからって生まれたての我が子を手にかけるなんてなんてひどい父親なんだ!と思いたいところですが、ここは神話なのでさらっと流します)
切られたカグツチの血から、岩石の神、火の神、水の神、雨の神、雷神、そして多数の山の神が生まれたという神話が残っています。
これは火の神であるカグツチの血が火山の噴火を連想させ、それに伴う自然現象を起こしたと考えられたからだそう。
人々に恩恵をもたらす火は、人間にとって大事なものを焼き尽くし、灰にしてしまう脅威でもあり、この両方の意味を持つカグツチは人々に感謝と恐怖を感じさせる、威厳のある神=悪王子として富士山噴火防止の神として祀られたのではないでしょうか。
ふと気が付くと石鳥居の前には黄色のチェーンで囲まれた防火水槽があり、その奥には消防の倉庫がありました。
阿幸地の由来にもなった『悪王子神社』。ここ最近地震が多発し不安が続いているので、その強さに肖ろうと『富士山噴火が起こらないように』と手を合わせました。
悪王子神社
住所:富士宮市阿幸地町434-1
アクセス:国道139号の東阿幸地交差点から県道158号線を西へ約100mほど先の阿幸地区公会堂の裏手