フラワーデモに伊藤詩織さん、石川優実さん、元日テレアナ藪本雅子さんら 「今の刑法、変えて当たり前」
9月11日に行われた、6回目のフラワーデモ。3月に相次いだ性犯罪の無罪判決への抗議を発端に、毎月11日に行われている静かなデモだ。
今回は全国で17カ所の開催となった(雨天のため、大阪など4カ所が中止)。
雷雨の後、開催時刻の19時頃に雨がやんだ東京・行幸通りには約200人が集まった。心地よい風が吹く中、「#kutoo」発起人の石川優実さんや伊藤詩織さんらがスピーチを行った。
■石川優実さん「みんなで声をかけあっていきたい」
最初にスピーチに立ったのは職場での女性に対するヒールのあるパンプスの強制をやめ、フラットシューズを選ぶ権利を求める「#kutoo」を始めた、石川優実さん。石川さんは、「#kutoo は靴の問題でもありますが、根底に女性差別の問題があると思って活動しています」と訴えた。
「#metoo と#kutoo がつながっていると思うのは、バッシングがすごく多いこと。#kutoo で一番言われたのが、『強制なんかされていないでしょ?』と。#metoo のときに『抵抗できたでしょ?』と言われるのと、まったく同じだと感じています。
抵抗できない状況をつくったのは相手なのに、それが女性のせいにされてしまう。なぜか声を上げた方が責められる。この現象がおかしいということが気づかれない限り、運動のハードルが高くなっているのではないでしょうか。
ネット上では(バッシングに)対抗すると、『放っとけよ』『流せよ』と言われるんですけど、このままじゃダメだと思っています。それによって運動するのを諦めた人がいると思います。勇気を出した人が潰されて、状況が変わらないことが続いてきたと思うので、みんなで助け合って、声をかけあっていきたい」
この日終了した「#kutoo」の新聞広告掲載のためのクラウドファンディングには、561人から200万円以上が集まった。
■伊藤詩織さん「#私がそれを着たいから」
続いて、伊藤詩織さんがマイクを持った。フラワーデモに参加するのは2回目だが、どちらも雨だったといい、「晴れ女のはずなのですが」と笑いを交え、優しい表情で参加者に語りかけた。
「今日、実は被害に遭ったときの服を着てきました。この服を着ることに抵抗があったので、ずっと着ていなかったけれど。
あなたの着ていたものが悪かったから、服が挑発的だったから、下着はこうだったんでしょう。そういった言葉が尽きなくて」
海外では、性暴力の被害者が着ていた当時の服を展示し、それがごく日常で着るような服だったと示すプロジェクトがあったことや、昨年アイルランドで10代の被害者に対して「Tバックを身につけていたから合意だったのだろう」といった言葉が発せられた事例などを紹介。(※ 参考記事:レイプ裁判で少女のTバックが取り沙汰され Twitter上で抗議の下着写真投稿が広まる)
「どんな服を着ていても、下着であっても、それが合意になるわけがない。でもまだ日本の今の法律では、何が合意か、その部分が抜けてしまっている。(中略)その犯罪は起きてもしょうがないこと、そう言われているような気がします」
「今日からは何を着ていても、どんな格好でも、それは合意ではない。それをシェアしたくて今日ここに立ちました」
ツイッターでもアクションを起こしていくことを明らかにし、参加者に、ハッシュタグの言葉を何にするか問いかけた。決まったのは、「#私がそれを着たいから」。このハッシュタグで今後もツイートを続けていくという。
関連:どんな服や下着を着ていても性的同意にはならない。「#私がそれを着たいから」に込めた思い(BuzzFeed)
■「検討会メンバーに当事者目線を」
このあとスピーチに立った被害当事者の女性は、「(フラワーデモで語られる被害当事者の言葉を)どういうかたちで残していけたら、この社会は変わるだろう。来年3月には(法改正に向けての)検討委員会のメンバーが決まる。メンバーには、当事者の目線で話してくれる人が少ないのが現状。それをなんとかしたい」と語った。
■藪本雅子さん「ひとりひとりの声をもっと大きく」
元日本テレビアナウンサーの藪本雅子さんもスピーチに立った。藪本さんは今年6月、自身のブログで中学生の頃の性被害を告白した。フラワーデモに参加するのは5回目だが、スピーチを行うのはこの日が初めて。
「もう私も黙っている場合じゃない、腹をくくって話をしたいと思いました。40年近く前に女優を目指していたとき、信頼していた人から性暴力被害に遭いました。
まだ中学生。セックスが何をするかもわからない子どもでした。脅迫とか暴行とかはありませんでした。ただ私は泣くしかなかったという状態です」
その後、自分を責め続け、摂食障害など荒れた時期もあった。自分が「性暴力の被害者」と自覚したのは、つい最近のことだったという。
「去年、人権に関する仕事をする中で、(被害当事者団体の代表である)山本潤さんの著書を読んで、これはまさに私だと思いました。そこで初めて、性暴力の被害に遭ったと認識しました。被害に気づくまでに時間がかかるのは普通のこと。幸せなはずなのになぜ自分が嫌いでしょうがないのか、そのわけがようやくわかりました」
「(山本潤さんらと)ロビー活動をしていて思うのは、今の刑法は変えて当たり前と思うけれど、変えるハードルが高い。ひとりひとりの声は小さいけれど、それをもっともっと大きくしないといけない」
■男性の当事者からも
デモの後半では、男性の被害当事者からのスピーチも目立った。
■「共に歩く姿勢を見せてくれたら」
最後にスピーチに立った女性は、小学生の頃、同級生の男子児童たちから被害に遭ったことを語った。当時、在日コリアンの女子と仲良くしていたことで、クラスの中で自分たち2人だけが孤立し、その状況を狙われたという。
被害後、それまでは遠巻きに見ているだけだったクラスの女子が、心配して声をかけてくれた。
「もしも、女の子たちが、最初から彼女と私を2人きりにしないで、共に歩く姿勢を見せてくれていたら、周りが味方をしてくれたら、どんなに良かったか。
私が言いたいのは、みんなに正義感を持ってほしいということ。海外では、移民など外国人に対するヘイトクライムが起こる中で、安全ピンをつける安全ピン運動が始まったそうです。
(ヘイトクライムなど差別に遭う人たちが街に出るときに)みんなが安全ピンをつけていたら、どうだろう」
隣国への心ない言葉がネットに蔓延している現状に触れ、「ヘイトをする人たちに居場所はないということを示していけたらどうだろうと思います」と締めくくった。誰かを孤立させる差別は性暴力を含む暴力につながることを示唆するスピーチだった。
関連:トランプ氏が勝利したアメリカで、多くの人が「安全ピン」を身につけている理由(HUFFPOST)
(※ 記事内の写真はすべて筆者撮影)
(※ スピーチはスピーカーの許可を取ったものを掲載)