米の値段「本当に高いの?」 調べてみた 値上げでも1杯40円
昨年1万5000円台、かつては2万円超えも
「(2024年産米の価格は)平年より割高感があるだろう」。今月上旬の記者会見で、坂本哲志農相がこう述べた。実際、米の取引価格やスーパーの店頭価格は値上がりしている。ただ、過去の価格や他の食品と比べると、単純に高いとは言えない。稲作はコスト高が経営を圧迫し、将来の作り手の確保が難しくなっている。 【グラフで見る】30年間の価格変化 米の価格は近年、需給緩和などを受けて低迷していた。新型コロナウイルス禍の21年産は、産地と米卸との相対取引価格が60キロ1万2804円まで落ち込んだ。24年産の新米は、昨夏の猛暑で米の出回る量が落ち込んだ影響から、既に生産者に支払う概算金は2~4割程度上がっている。23年産で同1万5000円台だった相対取引価格も上昇局面となっている。 一方、30年前の価格水準を見ると、今以上に高かった。かつて年間最大で100万トン以上の米を扱っていた全国米穀取引・価格形成センター(コメ価格センター)の価格を見ると、1993年産米の価格は同2万3607円で、90年代には2万1000円を上回る水準が続いていた。96年産までの消費税率は3%で、税別価格で比べればさらに高かった。
資材費は過去最高に高騰
今秋、米の価格が一定に上昇しても、他の食品と比べると依然、割安に映る。スーパーに並ぶ5キロ3000円の精米商品から茶わん1杯(精米65グラム)当たりの値段を算出すると、約40円となる。カップ麺が1個約200円、菓子パンが1個140円、ペットボトル飲料が1本(500ミリリットル)150円などとなる中、「米は値頃な良い食材」(大手小売り)だ。 この30年間で物価は大きく上がった。農業資材の価格も高騰しており、23年の農業物価指数では生産資材全体の数値が統計が残る1951年以降で最高となった。コストを吸収できず、稲作農家の離農を加速させる一因となっている。 農水省によると、2020年の水稲作付け経営体の数は71万3792で、10年間で約4割も減った。現在も減少傾向は続いており、米卸でつくる全国米穀販売事業共済協同組合は、このまま生産者が減り続けた場合、30年代には国内の米需要量を国産で賄いきれなくなると警鐘を鳴らす。 持続可能な稲作に向けて、再生産可能な価格の実現が求められている。物価高で節約志向が広がる。米の業界や産地は消費者の理解獲得が欠かせない。 (鈴木雄太)
日本農業新聞