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【熊本で大暴れしたウルトラマンって誰?】憎しみと嫉妬に溢れた闇のウルトラマン達の魅力とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満(ふたえさく まさみつ)です。

特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて、日々活動をさせて頂いております。

早いもので11月に入り、今年も残り2ヶ月となりました。

皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さてさて、今回のお話のテーマは「光と闇」です。

この「光と闇」ですが、お昼のような明るさや、夜を彷彿とさせる暗さといった自然的なものではなく、清い正義感に満ちた光と、邪悪な闇という相反する2つの概念的なものとして捉えて頂けますと幸いです。

米国スーパーヒーロー映画『スパイダーマン3(2007)』の主人公スパイダーマンは自身が抱える善と悪の感情の狭間に悩み、ヒーローは完璧超人ではなく、時に悪へと染まる人間であることの危うさを描いていた。
米国スーパーヒーロー映画『スパイダーマン3(2007)』の主人公スパイダーマンは自身が抱える善と悪の感情の狭間に悩み、ヒーローは完璧超人ではなく、時に悪へと染まる人間であることの危うさを描いていた。

私達も日常生活において、まるで聖人君子のような人が悪の道へと走ってしまう行為を見たときに「闇堕ち」したという表現を用いることがありますが、人間は日頃営む社会生活において、何が正しくて何が間違っているかを自己判断し、行動に移す動物です。

しかしながら、本当に自分がやっていることって正しいのかな?いいことや悪いことってなんだろう?と悩むことも勿論ありますし、これは他の動物と比較して、高度な知性と文明を築き上げた人間の特権だと思います。

この何が善で何が悪なのかで生じる悩みですが、超人的な力を持った日本を代表するスーパーヒーロー、ウルトラマン達も同じだったようです。

日本を代表する円谷プロ制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』シリーズ。その人気は国内だけに留まらず、海外にも及ぶ。必殺技のスペシウム光線は、今やシリーズを象徴するアイコン的な役割を果たす。
日本を代表する円谷プロ制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』シリーズ。その人気は国内だけに留まらず、海外にも及ぶ。必殺技のスペシウム光線は、今やシリーズを象徴するアイコン的な役割を果たす。

巨大な姿に加えて空も飛ぶ上、光線を放つ等の強力な力を持ち、たった3分であらゆる天変地異を解決するウルトラマン。もはや神にも等しい力を持つ彼らですが、ウルトラマン達に変身しているのは人間であり、その人が野心や嫉妬といったマイナスの心を持ってしまったことで、ウルトラマンそのものが暴走してしまった事例も多々ありました。

そこで今回は、平成の世に制作されたウルトラマンシリーズの大傑作、『ウルトラマンティガ(1996)』に登場した2人の闇のウルトラマンに焦点を当て、彼らが歩んだ悲劇について概説して参りたいと思います。

『ウルトラマンティガ(1996)』は全52話のテレビ放送だけでなく、劇場映画も1作品公開されている。本記事で紹介する2人の闇のウルトラマンはテレビ、映画にてそれぞれ登場した(筆者撮影)。
『ウルトラマンティガ(1996)』は全52話のテレビ放送だけでなく、劇場映画も1作品公開されている。本記事で紹介する2人の闇のウルトラマンはテレビ、映画にてそれぞれ登場した(筆者撮影)。

☆本記事は「私ウルトラマンシリーズにくわしくないわ」、「難しい話はちょっと・・・」というみなさまにもお届けできるよう、概要的かつ深すぎないお話を心がけておりますので、お好きなものを片手に、ゆっくりご覧頂けますと幸いです。

【古代の光よ!僕を光に変えたまぇぇぇ!】3000万年の眠りから目覚めたウルトラマンが大暴走?!ニセモノ呼ばわりされた闇堕ちの巨人・イーヴィルティガとは?

ここから『ウルトラマンティガ』に登場した2人の闇のウルトラマンについてのお話に入りますが、本題に入る前に少しだけウルトラマンシリーズについて解説をさせてください。

ウルトラマンシリーズは、株式会社円谷プロダクション制作の特撮ヒーロー番組『ウルトラマン(1966)』(及び特撮怪獣番組『ウルトラQ(1966)』)を起点とする特撮シリーズです。

『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。
『ウルトラマン(1966)』に登場した初代ウルトラマン。陸海空から現れる怪獣達を相手にウルトラマンは戦い、最後は必殺光線・スペシウム光線で退治する。しかし時には罪のない怪獣をいたわる優しさもみせた。

1966年に『ウルトラマン』が放送され、身長40mの銀色の巨人が巨大な怪獣と戦い、最後は必殺光線(スペシウム光線)で怪獣を退治するという物語はたちまち子ども達の心を掴み、最高視聴率42.8%、平均視聴率36.8%を記録する大人気番組となりました。

『ウルトラマン(1966)』の放送終了後も、『ウルトラセブン(1967)』(写真左より2番目)を筆頭に、多数のウルトラマン達が登場し、現在にかけてウルトラマンシリーズとして定着している(筆者撮影)。
『ウルトラマン(1966)』の放送終了後も、『ウルトラセブン(1967)』(写真左より2番目)を筆頭に、多数のウルトラマン達が登場し、現在にかけてウルトラマンシリーズとして定着している(筆者撮影)。

『ウルトラマン』の放送終了後も、『ウルトラセブン(1967)』や『帰ってきたウルトラマン(1971)』、『ウルトラマンタロウ(1973)』や『ウルトラマンティガ(1996)』等、現在まで派生作品が制作され続けており、現在は最新作『ウルトラマンブレーザー(2023)』が放送されています。

『シン・ウルトラマン(2022)』関連商品(筆者撮影)
『シン・ウルトラマン(2022)』関連商品(筆者撮影)

近年は、斎藤工さんや長澤まさみさん主演の映画『シン・ウルトラマン(2022)』の公開が記憶に新しい方も多いのではないでしょうか?

さて、そんな長いウルトラマンシリーズの歴史の中で、今回焦点を当てるのが、1996年に放送された『ウルトラマンティガ』。

『ウルトラマンティガ(1996)』より、ウルトラマンティガ。従来のウルトラマンのような赤と銀の色合いでなく、紫色を含めたカラフルな体色が特徴。滴を彷彿とさせるような頭部も独特である(筆者撮影)。
『ウルトラマンティガ(1996)』より、ウルトラマンティガ。従来のウルトラマンのような赤と銀の色合いでなく、紫色を含めたカラフルな体色が特徴。滴を彷彿とさせるような頭部も独特である(筆者撮影)。

本作は1996年(平成8年)から約1年間に渡り放送された、平成のウルトラマンシリーズ第1作。怪獣の出現や宇宙人の襲来等、地球を襲う未曾有の危機に対し、三千万年の眠りについていた光の巨人・ウルトラマンティガがピラミッド(超古代遺跡)から目覚め、地球の危機に立ち向かうという物語。

『ウルトラマンティガ』は、過去に登場したウルトラマン達が「M78星雲・光の国」という宇宙からやってきたヒーローであったのに対し、なんとピラミッドの中で3000万年も石像になって眠っており、ピラミッドが怪獣に破壊されたことを機に目覚めたヒーローという、平成という新たな時代に相応しい、全く新しいウルトラマンでした。

ウルトラマンティガの大きな特徴は、戦う相手に応じた3つの姿への変身。バランスに優れたマルチタイプ(中央)、力技に長けたパワータイプ(左)、俊敏性に長けたスカイタイプ(右)で構成される。
ウルトラマンティガの大きな特徴は、戦う相手に応じた3つの姿への変身。バランスに優れたマルチタイプ(中央)、力技に長けたパワータイプ(左)、俊敏性に長けたスカイタイプ(右)で構成される。

他にも、ウルトラマン史上初の色が変わるタイプチェンジ能力や、シリーズ初の女性隊長の登場等の新要素だけでなく、物語を通じてウルトラマンに変身する主人公(V6の長野博さん演じる特捜チームGUTSのマドカ・ダイゴ隊員)とヒロイン(吉本多香美さん演じる同僚のレナ隊員)のロマンスも描かれました。

そんなウルトラマンティガですが、彼は3000万年前の超古代文明を守護していた光の巨人。しかし、超古代文明を守っていたのはティガひとりではありませんでした。ティガ以外にもたくさんのウルトラマン達が地球に訪れており、地球を支配しようとする闇の勢力と戦っていたのです。ウルトラマンティガは闇の勢力との戦いを終え、石像となって3000万年の眠りについていました。つまり、他のウルトラマン達もティガと同様に、石像となってどこかで眠っていても不思議ではないわけです。

ウルトラマンティガは東北地方で発見されたピラミッドから蘇りましたが、実はもう一人のウルトラマンの石像が熊本県の地下深くにある超古代遺跡に眠っていました。

物語の舞台である熊本県。当県は後述する『ウルトラマンティガ』の物語の舞台となったほか、荒尾市にはかつてウルトラマンのテーマパーク「ウルトラマンランド」も開園した(現在は閉園、2023年筆者撮影)。
物語の舞台である熊本県。当県は後述する『ウルトラマンティガ』の物語の舞台となったほか、荒尾市にはかつてウルトラマンのテーマパーク「ウルトラマンランド」も開園した(現在は閉園、2023年筆者撮影)。

本記事の主人公・オルタナティブティガ(イーヴィルティガ)と狛犬怪獣ガーディ。3000万年前、良き相棒であったこの2体は長き眠りにつき、邪な人間の手で現代へと蘇ることになる(筆者撮影)。
本記事の主人公・オルタナティブティガ(イーヴィルティガ)と狛犬怪獣ガーディ。3000万年前、良き相棒であったこの2体は長き眠りにつき、邪な人間の手で現代へと蘇ることになる(筆者撮影)。

その石像の名は「オルタナティブティガ(仮称)」。オルタナティブティガは3000万年前、相棒の狛犬怪獣ガーディーと共に、超古代文明を守護していた存在でした。心優しい性格だったようで、ガーディーは忠犬として彼を慕っていたようです。そんな彼らも闇勢力との戦いを終え、ウルトラマンティガと同様に石像となって3000万年の眠りにつきました。

しかし3000万年後、ウルトラマンティガが目覚めたことを機に、ウルトラマンの石像の調査を開始した天才物理学者、マサキ・ケイゴはオルタナティブティガとガーディーの石像が熊本県の地下深くに眠っていることを突き止めます。

併せて、ウルトラマンティガとは何者であるかを徹底調査し、ウルトラマンの石像の成分や、人間がウルトラマンに変身するための条件、さらにウルトラマンティガに変身する人物を特定し、変身者であるダイゴに幾度も接触を図ります。

その結果、ダイゴは超古代人の遺伝子を強く受け継いでいたことでウルトラマンに変身できることを突き止め、熊本で自身の開発したロボット怪獣(地中鮫ゲオザーク)でダイゴを消耗させた挙げ句、超人になるために鍛え上げた体でダイゴを殴りつけ、変身アイテムであるスパークレンスを奪います。

ウルトラマンティガの変身の際、ダイゴが使用する神秘のアイテム「スパークレンス」。マサキは自身がウルトラマンに変身したいという野望のため、ダイゴからスパークレンスを奪った(筆者撮影)。
ウルトラマンティガの変身の際、ダイゴが使用する神秘のアイテム「スパークレンス」。マサキは自身がウルトラマンに変身したいという野望のため、ダイゴからスパークレンスを奪った(筆者撮影)。

「キレイだなあ・・・これだけが僕に足りなかったぁ。僕の体を光に変えてくれるシステム。」(マサキ・ケイゴ)

スパークレンスを奪われたことで、ウルトラマンの力がなければ自分は無力なただの人間なのかと苦悩するダイゴ。そんなダイゴのまえに現れたのは、子犬でした。子犬はダイゴにスキンシップを取り始め、子犬を追いかけたダイゴは洞窟の中にある「とある場所」へと導きます。その場所に行き着いたダイゴは呆然とします。そこにあったのは、ウルトラマンティガとよく似た巨人(オルタナティブティガ)と怪獣(ガーディ)の石像でした。

オルタナティブティガ(イーヴィルティガ)の姿は、ウルトラマンティガと瓜二つであるが全く別の存在。イーヴィルティガはデビューから現在まで、幾度も関連商品が発売された大人気キャラクターとして定着している。
オルタナティブティガ(イーヴィルティガ)の姿は、ウルトラマンティガと瓜二つであるが全く別の存在。イーヴィルティガはデビューから現在まで、幾度も関連商品が発売された大人気キャラクターとして定着している。

「巨人が・・・他にもいた?」(ダイゴ)

行き着いたダイゴを嘲笑うかのように姿を見せたケイゴは、「ダイゴがウルトラマンティガになったことで、自分は特別だと思い上がっている」と非難した上で、ケイゴとダイゴはウルトラマンになるための同じ遺伝子を持っていること明かします。

その上で、ケイゴはウルトラマンとは人類を強制的に正しく導く神のような存在であると主張し、そのために自分がウルトラマンになろうとしていました。ダイゴから奪ったスパークレンスを特殊な装置にセットし、自身の変身を試みるケイゴ。

「やめるんだ!間違った心で光になったら!」(ダイゴ)

「人類という矮小な存在から僕は進化するのだぁぁぁ!はぁっっっはぁはぁはぁ!古代の力よぉぉ!僕を光に変えたまぇぇぇぇ!ひぃっかぁりぃよぉぉぉぉぉぉぉ!」(ケイゴ)

ケイゴは強制的にウルトラマンに変身し、オルタナティブティガ改め、「イーヴィルティガ」となります。イーヴィルティガはその巨体で熊本県内に出現し、その姿を見ていたのは熊本市民でした。呆然と見守る市民に対し、イーヴィルティガは呼びかけます。

イーヴィルティガは熊本に出現し、市民に向けてその「神々しい姿」を露わにする。一見順調にも見える彼の演説は偽りに溢れたものであり、彼自身もウルトラマンの力を制御できず暴走する(筆者撮影)。
イーヴィルティガは熊本に出現し、市民に向けてその「神々しい姿」を露わにする。一見順調にも見える彼の演説は偽りに溢れたものであり、彼自身もウルトラマンの力を制御できず暴走する(筆者撮影)。

「私は進化した人類だ。愚かしい旧人類は、私に導かれることだけが生き残れる道だ。」(ケイゴ)

一見イーヴィルティガが人々に呼びかけているかのように聞こえるこの音声、実はケイゴが周到に予め用意していた録音音声でした。それどころか、イーヴィルティガは突然苦しみ初め、あろうことか街を破壊しはじめます。

「見よ!私の神々しい姿を!私は神に近づいたのだ!私に続くのだぁ!」(ケイゴ)

虚しく市内に響き渡る音声。イーヴィルティガは完全に野獣と化し、暴走してしまいました。ウルトラマンティガと酷似した巨人の登場で当初は見守るだけだった特捜チームGUTSも怒り心頭。イーヴィルティガを「ニセモノ」と非難し、彼を攻撃します。

一方、ダイゴはケイゴが残していった自身のスパークレンスを取り戻すために奮闘します。スパークレンスの周りにはケイゴによってトラップが仕掛けられ、あろうことかダイゴを当地へ導いた子犬がその犠牲となってしまいました。ダイゴが横たわる子犬に手を添えると、その体は優しく輝きだし、光となって怪獣の石像と一体化します。怪獣の石像の正体は、かつてオルタナティブティガの友達であった狛犬怪獣ガーディでした。

間違った心を持ってしまった主人を取り戻すため、3000万年の眠りについていた狛犬怪獣ガーディは復活する。しかしその後に彼が辿った運命は、悲哀溢れるものとなった(筆者撮影)。
間違った心を持ってしまった主人を取り戻すため、3000万年の眠りについていた狛犬怪獣ガーディは復活する。しかしその後に彼が辿った運命は、悲哀溢れるものとなった(筆者撮影)。

「君は・・・あの巨人の友達だったんだ・・・頼む。あいつを止めてくれ。」(ダイゴ)

蘇ったガーディは、間違った心を持ってしまった主人を取り戻すために熊本市内に出現します。ガーディはイーヴィルティガに単身立ち向かいますが、ガーディの目的は主人のイーヴィルティガを止めること。破壊はやめよう、暴力はやめようというガーディの訴えは虚しくも、暴走したイーヴィルティガには届きません。涙ながらに訴えるガーディをマウントポジから何度も殴りつけるイーヴィルティガに、とうとうGUTSも怒りを爆発させます。

しかし、そんなGUTSをイーヴィルティガは蹴散らし、主力の戦闘機が墜落していく中・・。

事実上、もう一人のウルトラマンと戦うことになってしまったGUTS。奮戦も虚しく、悪魔であるイーヴィルティガに撃墜される。平和へのバトンを繋いだのは、本物のウルトラマンティガだった(筆者撮影)。
事実上、もう一人のウルトラマンと戦うことになってしまったGUTS。奮戦も虚しく、悪魔であるイーヴィルティガに撃墜される。平和へのバトンを繋いだのは、本物のウルトラマンティガだった(筆者撮影)。

「あぁ。きてくれたぜ!本物がぁ!」(シンジョウ:GUTS隊員)

熊本市内の上空を飛行し、空からイーヴィルティガの顔にキックをお見舞いしたのはウルトラマンティガでした。ティガが現れたことで、最後の力を振り絞り立ち上がろうとするガーディにイーヴィルティガはとどめの一撃を加えます。ガーディは静かに目を閉じるのでした。

「大切な仲間を、どうしてこんな目に遭わせるんだ!」怒りに震えたウルトラマンティガはイーヴィルティガに戦いを挑みます。その実力差はほぼ互角。今回は怪獣や宇宙人が引き起こした戦いではなく、邪な人の野心が引き起こした戦い。まさに人の心が生み出した戦いでした。

相棒を殺害し嘲笑するイーヴィルティガ(マサキ)にウルトラマンティガ(ダイゴ)は怒りの炎を燃やす。熊本を舞台に2人の巨人の対決は互角の展開が続く。しかし最後に勝利したのは、光であり人であるティガだった。
相棒を殺害し嘲笑するイーヴィルティガ(マサキ)にウルトラマンティガ(ダイゴ)は怒りの炎を燃やす。熊本を舞台に2人の巨人の対決は互角の展開が続く。しかし最後に勝利したのは、光であり人であるティガだった。

ウルトラマンティガは最後の力を振り絞り、ついにイーヴィルティガを元のマサキ・ケイゴの姿に戻します。その後ウルトラマンティガはガーディの亡骸に立ち寄り、自身に力強く抱き寄せます。ティガはガーディの亡骸と共に、空へと飛び去っていったのでした。

戦いを終えたダイゴは熊本城内で、同僚であるGUTSの隊員達と合流します。そんなダイゴ達に知られず元気よく走り去る子犬の姿・・・それはガーディの魂だったのでしょうか。

熊本県を象徴し国際認知度も高い名城である熊本城。『ウルトラマンティガ』本編では当城を拠点にGUTSは活動し、ウルトラマンティガとイーヴィルティガの決戦を見守った(2023年筆者撮影)。
熊本県を象徴し国際認知度も高い名城である熊本城。『ウルトラマンティガ』本編では当城を拠点にGUTSは活動し、ウルトラマンティガとイーヴィルティガの決戦を見守った(2023年筆者撮影)。

【ウルトラマンティガは悪のヒーローだった?】憎しみと嫉妬に燃えた女性ウルトラマンが辿った悲劇とは?

光の巨人として活躍するウルトラマンティガと相反する存在として、闇の巨人と成り果てたイーヴィルティガが登場し、物語にさらに厚みが加えられていった『ウルトラマンティガ(1996)』・・・。

そんな『ウルトラマンティガ』も最終回を迎え、巨悪を倒したダイゴはウルトラマンティガへの変身能力を失い、レナをはじめとする特捜チームGUTSのメンバーのもとへと戻る・・・という形で全52話の物語を終えました。

『ウルトラマンティガ(1996)』最後の敵は闇の支配者である邪神ガタノゾーア。ティガは一度は敗北するも、彼を信じる世界中の子ども達の光を受け、最強のグリッターティガ(右)へと姿を変えて勝利する。
『ウルトラマンティガ(1996)』最後の敵は闇の支配者である邪神ガタノゾーア。ティガは一度は敗北するも、彼を信じる世界中の子ども達の光を受け、最強のグリッターティガ(右)へと姿を変えて勝利する。

しかし好評を博した『ウルトラマンティガ』は、その後映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』と題して、2000年に続編映画が公開され、本作ではダイゴ、ヒロインのレナ、そしてウルトラマンティガとかつて愛し合った元カノであるカミーラという女性との三角関係が描かれました。

映画『ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY』は、これまで描かれなかった光の巨人・ウルトラマンティガの謎を解明すると共に、ダイゴとレナの恋愛関係に決着をつける内容で公開されました。

闇の三巨人(左よりヒュドラ、カミーラ、ダーラム)とティガダーク(写真右)。かつてティガは最強の闇の戦士であり、カミーラとは恋仲にあった(筆者撮影)。
闇の三巨人(左よりヒュドラ、カミーラ、ダーラム)とティガダーク(写真右)。かつてティガは最強の闇の戦士であり、カミーラとは恋仲にあった(筆者撮影)。

本作の物語は、上述したテレビシリーズの最終回から2年後の世界を描き、結婚を目前に控えたダイゴとレナが平和な日々を過ごす中、南太平洋の超古代遺跡(ルルイエ)から3000万年前に封印された闇の三巨人(カミーラ、ヒュドラ、ダーラムから成る、悪い3人のウルトラマン)が目覚め、かつて仲間だったウルトラマンティガを再び仲間に引き込もうと画策します。

ウルトラマンに変身するのは等身大の人間。ティガダークへの変身時に使用するブラックスパークレンス(左)と、カミーラ変身時に使用するスパークレンス(写真右、筆者撮影)。
ウルトラマンに変身するのは等身大の人間。ティガダークへの変身時に使用するブラックスパークレンス(左)と、カミーラ変身時に使用するスパークレンス(写真右、筆者撮影)。

「暗い遺跡の中で、あなたのことだけを考えていたわ。あなたのこと、ずっと愛していたから」(カミーラ)

3000万年前、実はウルトラマンティガは闇の巨人「ティガダーク」であり、超古代の文明に破壊と混沌をもたらした存在かつ、カミーラとは恋人関係にありました。しかし、ティガはユザレと呼ばれる女性との邂逅で改心して光の巨人となり、ユザレと協力して闇の三巨人を3000万年に渡り封印していたことが明らかになります。

しかし、現代人であるダイゴにとって愛している女性はレナひとり。レナを守る意思を示したティガ(ダイゴ)に対し、カミーラは激昂します。

「そんな女のために!3000万年前は・・ユザレ!そして今は・・・。でも、これでなにもかもが吹っ切れたわ。思う存分、お前を・・・殺せる。」(カミーラ)

ダイゴは3000万年に渡るティガの因縁に決着をつけるため闇の三巨人と戦い、勝利します。

「光・・・私も、欲しかった。」(カミーラ)

人間の姿に戻ったカミーラはダイゴに手を握られ、息絶えます。

その後、ダイゴとレナは結ばれ、「火星移住計画チーム」の一員として宇宙へと旅立つのでした。

「頑張れよ・・・後輩。」ダイゴは、妻のレナと共に火星へと旅立つ。旅立つダイゴ達を前に、初々しく頭を下げたのは、後にウルトラマンダイナと呼ばれるアスカ・シン(演:つるの剛士さん)という青年だった。
「頑張れよ・・・後輩。」ダイゴは、妻のレナと共に火星へと旅立つ。旅立つダイゴ達を前に、初々しく頭を下げたのは、後にウルトラマンダイナと呼ばれるアスカ・シン(演:つるの剛士さん)という青年だった。

このように、本作は『ウルトラマンティガ』という物語の完結編でありつつ、ダイゴとレナという関係に物語の主軸を置きながら、それに干渉する第三者(元カノのカミーラ)を登場させることで、恋の三角関係も描かれていることが特徴でした。

ちなみに本作品は国内の興収でも成功を収めただけでなく、海外市場でも好評を得ていたようで、アメリカではラブストーリー仕立てと、次々に強敵を撃破する展開(ティガがダーラム、ヒュドラ、カミーラとそれぞれ順に打ち倒していく)に喝采が送られたほか、フランスを筆頭とする各国でも本作のプロモーションが展開された等、目覚ましい躍進を遂げていたそうです(DVD「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」冊子より)。

いかがでしたか?今回は「光と闇」をテーマに、『ウルトラマンティガ(1996)』に登場した2人の闇のウルトラマンについてご紹介しましたが・・・実は、本作の主人公であるウルトラマンティガも闇堕ちしていた時代があったのです。

ウルトラマンティガの意思を継ぎ、地球の守りについた新たなヒーロー・ウルトラマントリガーの前に現れたのは、かつてのイーヴィルティガを彷彿とさせる闇の巨人・イーヴィルトリガーだった(筆者撮影)。
ウルトラマンティガの意思を継ぎ、地球の守りについた新たなヒーロー・ウルトラマントリガーの前に現れたのは、かつてのイーヴィルティガを彷彿とさせる闇の巨人・イーヴィルトリガーだった(筆者撮影)。

ウルトラマンは神ではありません。救えない命があれば、届かない想いもあります。変身する人間の意思ひとつで光にも闇にもなり得るウルトラマンの力。ティガの後にもたくさんのウルトラマン達が続くことになりますが、彼らは時にウルトラマンの力に慢心し、チームワークを乱した事例も多々ありました。しかしそんな未熟さから立ち直り、さらに強い存在へと成長、昇華していくヒーロー達の姿を描いていたことも、ウルトラマンシリーズの魅力のひとつなのかもしれません。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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