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ワシントンで「毛沢東」国際シンポジウム――日本軍と共謀した事実を追って

遠藤誉中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士
今年9月9日、没後40周年を迎える「中国建国の父」毛沢東(写真:アフロ)

今年9月20日、ワシントンDCの記者クラブで「日中戦争中に日本軍と共謀していた毛沢東」に関する国際シンポジウムが開催される。毛沢東没後40周年記念に際し、遂にアメリカが動いた。国際世論は形成されるか?

◆アメリカの大手シンクタンクProject2049が主宰――米議会議員も参会

動いたのはアメリカの大手シンクタンク「Project(プロジェクト)2049」だ。これは共和党系の流れをくんでおり、会長は共和党のジョージ・ブッシュ前政権時代(2001年~2009年)に「国務次官補代理(東アジア・太平洋担当)」(2003年~2005年)を務めていたランディ・シュライバー氏である。彼の正式の名前はRandall Schriver だが、一般にRandy Schriver と呼ばれており、ランディ(Randy)は言うならば親しみを込めた愛称のようなものらしい。

そのランディ・シュライバー氏は昨年、アメリカの外交専門誌「THE DEPLOMAT(ザ・ディプロマット)」(8月31日号)で、“China Has Its Own Problems With History(中国は自分自身の歴史問題を抱えている)”として、「中国自身が中国共産党の歴史を捏造している」ことなどを指摘していた。昨年9月3日に軍事パレードを行い、「中国共産党こそが日中戦争時代に日本軍と勇敢に戦った」とする毛沢東神話をでっち上げていることに対する批判も、この論文の中には含まれている。

そのような視点をすでに持っていたシュライバー氏は、きっと、8月31日付の本コラム「人民が党の真相を知ったら、政府を転覆させるだろう――1979年、胡耀邦元総書記」で書いた辛こう年氏同様、拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』に目を留めてくれたのにちがいない。

実は、たまたま筆者は、この概要を“Discuss Japan― Japan Foreign Policy Forum”という日本の外交政策を論じるウェブ誌に英語中国語で書いていて、その英語版が目に留まったものと思われる。

その論文では、1939年前後、毛沢東がいかにして上海にある日本外務省の出先機関であった岩井公館と接触し、中共スパイを通して、「中華民国」重慶政府の国民党軍の軍事情報を日本側に高値で売り付けいていたかを書いた。毛沢東は「中華民族を裏切っていた」のである。これは拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』のエッセンスに過ぎないが、しかし、きっとシュライバー氏が自らの論文で書いた分析を裏付け、シュライバー氏の視点の正当性を証拠づける資料になったものと思われる。

シュライバー氏からの招聘状には「我々の分析を裏付ける強力な証拠を発見した功績に感謝する」旨のことが書いてある。

そこで、Project2049が主宰して、9月20日にワシントンDCにあるNational Press Clubで国際シンポジウムが開催される運びとなった次第だ。共和党系のシンクタンクだけあって、米議会議員や米政府高官なども参会するという。

筆者は“Seek Truth From Facts(実事求是):The Chinese Communist Party's War on History(中国共産党の「歴史」との闘い)”のパネル1"The Sino-Japanese War ―On the 40th Anniversary of Mao's Death(日中戦争――毛沢東没後40周年に当たり)"で講演することになっている。

詳細情報はここにある。筆者の講演タイトルは“Mao Zedong, The Man who Conspired with the Japanese Army(毛沢東、日本軍と共謀した男)” だ。

筆者の講演に対してコメントをしてくれるのが、「人民が党の真相を知ったら、政府を転覆させるだろう――1979年、胡耀邦元総書記」で書いた辛こう年氏なのである。

彼の名前の英文による表記はXin Haonian(シン・ハオニェン。中国語のピンインをローマ字化したもの)。

こうして、日本発の情報がワシントンDCと在米中国人を結びつけることになった。

会場となっているワシントンDCのNational Press Clubはアメリカで最も権威のある記者クラブだ。全世界の大手メディアが集まっている。

この日に発するメッセージは、必ず習近平国家主席の耳に入り目に留まることは確実である。習近平は必ず筆者が示す「毛沢東が日本軍と共謀していた証拠」を突き付けられるだろう。

それは客観的な証拠なので、誰にも否定はできないはずだ。

◆日本でもBSフジLIVE「プライム・ニュース」が9月8日に特集

今年の9月9日は、毛沢東没後40周年に当たる。

日本のメディアでは、なかなか大きく取り上げられることがなかった拙著『毛沢東 日本軍と共謀した男』の事実が、9月8日の夜8時から10時(正確には9時55分)まで、BSフジLIVE「プライム・ニュース」という番組で、2時間かけて詳細に検証されることになった。

昨年11月に拙著が出版されたのちに、テレ朝のお昼の報道番組「ワイドスクランブル」や同じく午後早目のフジテレビの報道番組「みんなのニュース」の「ふかぼり」コーナーで扱ってくださった。少なからぬメディアが中国に気を遣い、中国の顔色を窺って足踏みしている中、これを取り上げて下さったのは非常に勇気のある行動で、尊敬している。

ただ、時間が15分ほどで短く、必ずしも十分にご説明することはできなかったかもしれない。

このたびの9月8日のBSフジLIVE「プライム・ニュース」では、基礎知識も含めてではあるが、2時間まるまる毛沢東の解説に注いでくれるらしいので、ワシントンDCでパワーポイントによって示す「客観的証拠」も、かなりお示しできるのではないかと思っている。時間帯も異なるので、より幅の広い視聴者に毛沢東の真相を知っていただく機会になるかもしれないと期待している。

◆中国が日本に突き付け続ける「歴史カード」こそ危険

中国は1989年の天安門事件と1991年のソ連崩壊以来、中国共産党政権の連鎖反応的崩壊を恐れて愛国主義教育を開始し、日中戦争中に日本軍と戦ったのは中国共産党軍だったとして、突然歴史を塗り替え始めた。今では反ファシスト戦争のために戦った軍隊の最先鋒として共産党政権・中国を位置付けるようになった。

その傾向は習近平政権になってから一層顕著になり、対日強硬路線を人民に見せつけている。

背景には、反日デモをされたら必ず反政府デモになっていくことを十分に知っているので、反日デモを起こさせないようにするためという保身が一つにはある。

しかし、それよりも習近平政権が怖れているのは、中国共産党が、実は「日中戦争時代に日本軍と共謀して中華民族を裏切り、それによって強大化したのだ」という事実を人民が知ってしまうことである。

だから必死になって言論弾圧を強化し、「日中戦争時代、いかに中国共産党が勇猛果敢に日本軍と戦ったのか」という虚偽の事実を、これでもか、これでもかと前面に押し出している。

それが日本に対して突き付けている「歴史カード」の正体だ。

しかし日本人の心理として、戦後70年も(反省を込めて)平和を守り、中国のために国民の血税から膨大なODA予算を中国に注いで中国の経済発展を支援してきたというのに、こういつまでも「さあ、歴史を反省しろ!」として「歴史カード」を突き付けられ続けたのでは、中国を嫌いになっていくのは当然だろう。このままでは、その傾向を止めることはできない。

それはやがて、中国脅威論として、逆に戦争の火種を生んでいくだろう。

したがって、二度と戦争を起こさないようにするためにも、中国が毛沢東と中国共産党の歴史の真相を認めることは非常に重大なのである。

ただ、それを認めたが最後、中国共産党政権は、その瞬間に崩壊するので、事実を隠ぺいするために中国は覇権を強化する以外に、実は「退路がない」のである。だから南シナ海だけでなく尖閣を含めた東シナ海、そして一帯一路など、ひたすら覇権を拡張させている。「軍事的」にも、「経済的」にも、さらに孔子学院を全世界に広めたり世界文化遺産などの手段を使って「精神文化的」にも、その覇権は拡張するばかりだ。

それがいかに危険なものであるかは、説明するまでもあるまい。

このように、毛沢東の真相は過去の歴史ではなく、現在の日中関係そのものであり、未来の国際社会に潜む危険性をあぶりだしていることを、多くの人に理解していただきたいと切望している。

中国問題グローバル研究所所長、筑波大学名誉教授、理学博士

1941年中国生まれ。中国革命戦を経験し1953年に日本帰国。中国問題グローバル研究所所長。筑波大学名誉教授、理学博士。中国社会科学院社会学研究所客員研究員・教授などを歴任。日本文藝家協会会員。著書に『中国「反日の闇」 浮かび上がる日本の闇』(11月1日出版、ビジネス社)、『嗤(わら)う習近平の白い牙』、『習近平が狙う「米一極から多極化へ」 台湾有事を創り出すのはCIAだ!』、『習近平三期目の狙いと新チャイナ・セブン』、『もうひとつのジェノサイド 長春の惨劇「チャーズ」』、『 習近平 父を破滅させた鄧小平への復讐』、『毛沢東 日本軍と共謀した男』、『ネット大国中国 言論をめぐる攻防』など多数。

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