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「明るい遺書」から始まったSNS。今、中川翔子が吐露する思い

中西正男芸能記者
仕事への思い、自分への思い、そしてSNSへの思いを吐露した中川翔子さん

 ブログ、ツイッターなどのSNSで思いを発信し続け、昨年4月に立ち上げたYouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」は登録者数70万人を超えているタレントの中川翔子さん(36)。TBSドラマ「婚姻届に判を捺しただけですが」にも出演し活動の幅を広げてもいますが、いじめやSNSでの誹謗中傷について持論を展開する論客としても注目されてきました。ネットでの誹謗中傷が特に問題視される昨今ですが、今、中川さんが吐露した思いとは。

仕事ゼロからのYouTube

 去年の3月、4月から予定されていたお仕事が新型コロナ禍で次々にキャンセルになっていきました。結果的に、2カ月ほど仕事がゼロになったんです。

 お仕事を始めてからずっと不安はありました。「いつまでできるんだろう」と。今回は「ついに終わりの時が来たのか」と完全にふさぎ込んでしまいました。

 何もやることがない。先も見えない。その中で去年4月からYouTubeチャンネルを始めたんです。

 これまでもYouTubeへの思いがないわけではなかったんですけど、日々の忙しさに埋没するような形で、なかなか始められませんでした。

 でも、今回は四の五の言ってられないというか、本当に仕事がストップして。毎日YouTubeでゲーム実況をやる日々を過ごしていました。

 ただ、人間ね、何かやることがあると、なんとなく心が前を向くんですよ。どんどんYouTubeが楽しくもなってきて。YouTubeきっかけでウチの猫に番組からオファーをいただいたり(笑)、新たな動きも出てきたんです。そのうち、お仕事も少しずつ戻ってきて、何とか今こうやって話せているという状況です。

明るい遺書

 そもそもの話、私は全く自信がない人間なんです。しかもネガティブ。そんなクセが小さな頃からついちゃってるんです。

 基本的に「どうせ私なんか」と思い続ける十代で「どうせ無理だ」「人前に出るのも怖い」「コンプレックスだらけだ」という気持ちが常にありました。

 一方、本当は「アニメソングを歌いたい」「戦隊モノに出たい」とかあこがれもある。でも、そのあこがれが全くままならない。そんな十代を過ごしました。

 この仕事を始めても、そんな性格もあいまってうまくいかない。そこから始めたのがブログでした。

 当時はまだアイドルがいろいろなものをさらけ出す時代じゃなくて「趣味はお菓子作りと映画鑑賞です!」みたいな時代だったんです。

 実際、私もそういうアイドル像が好きだったので、そんなプロフィールを書いてはいたんですけど、実際は「お菓子なんて作ってないしな…」と(笑)。

 本当は漫画だったり、特撮だったり、好きなものがあるけど「こういうことが好きなんです」とは言えてませんでした。学校でも本当に好きなこと、本当の自分を出すと「キモい」と言われちゃう。オタクに対して厳しい時代でもありました。

 そんな中で仕事ももう風前の灯火だし、ブログでは本当の自分を出してみよう。そう思ったんです。

 仕事的にいつクビになってもおかしくない。もっと言うと、この世からいなくなることまで考えていた時期でした。正直な話。ずっと真夜中の感覚というか。

 そんな中で始めたブログだったんですけど、最初から一つだけ決めていたことがあったんです。これはツイッターなどのSNSにも引き継いでいくことなんですけど「書くのは、前向きなことだけにしよう」と。

 「これが好き」とか「これがいい」とかポジティブなことしか書かない。それをマイルールにしたんです。

 そう決めたのは、ブログを“明るい遺書”としてやろうと思ったからです。「これを書き残して死んだ場合、この“呪いの言葉”を人が見たら『うわ、暗い…』『キモッ』と思うだろうな」と考えて。せめて残るものには「これが好きだった」と前向きなことを残しておきたい。

 それくらい、ある種の覚悟があったし、だからこそ「これは何かを誉める“ゲーム”だと思おう」と案外すんなりその方向が定まった部分もあったと思います。

 ただ、このマイルールを作っておいて本当に良かったと今は思っています。というのも、そこに書いていたポジティブなことが次々にかなっていったんです。

 深海に行ってみたいと書いたら潜水艦に乗るお仕事が来たり、アニメソングも歌えて、「ポケットモンスター」関連のお仕事もいただけました。すぐじゃなくても10年くらい経ってから実現することもあって。あこがれの楳図かずお先生とも、お仕事でご一緒することにもなりましたし。

 なんかね、SNSの言葉って電子の海に漂っているようでいて、その人がそこに込めた思いは“お灸”みたいにじんわりと燃え続けるものだと思うんです。

 ポジティブな言葉はポジティブな熱を持って。誰かを攻撃するような言葉はそういう熱を持って燃え続ける。

 それで言うと、私はポジティブな言葉を残すことで、自分が救われたのかなと。SNSがあって良かった。心底、そう思います。

SNSとは

 一方、SNSで傷つくこともありました。

 仕事を辞めようということも何回もよぎったし「なんでここまで言われなきゃいけないんだ」ということもたくさんありました。追い詰められもしました。

 でも、それ以上に、やっぱり救われてるんですよね。私は。

 SNSのおかげで分かってもらえたことがあるし、辞めなくてもいいんだとも思えた。そして、生きててもいいんだとも思えました。

 私にとってSNSとは“生きた証”だと思います。

 SNSに書いてることって「言葉にまでしてわざわざ周りの人に言ってないこと」が多いんです。

 でも、そこの領域にこそ、その時に私が本当に思っていること。感じていること。その成分がたくさん含まれている気がします。

 ある意味、リアルにつながっている人たちよりも、実は細やかな思いを、言葉を伝えているのはSNSかもしれない。

 もしかしたら、直接は会ったことがない人にすごく生々しい思いを伝えているのかもしれない。不思議だし、それはそれで面白いなとも思いますね。

 YouTubeを始めて、ブログを始めた頃の「あれもやりたい、これもやりたい」というキラキラした感覚を味わっています。久々に「来た!」という感じで。

 今年8月にアップした水着の動画も、テレビでは絶対にやりませんしね。そもそも、そんなオファーが来ないですけど(笑)、それが鬼バズりして、ものすごく恥ずかしいんですけど、ものすごくうれしくて。

 なぜこれだけ反響をいただけたのか。多分、若い頃にやったらこんなことにはならなかったでしょうしね。ワイン的に熟成につながったならラッキーですし、でも、本当のところは何がどう作用したのか分かりません。

 でもね、一つ言えることは、今が一番楽しいということです。厄年ど真ん中ですけど(笑)。本当に楽しい。

 コロナ禍でもうダメだと思ったからYouTubeも始められたし、お仕事がなくなる感覚を心底味わって、今まで踏み出せなかった舞台にも挑んだ。それがまた今回のドラマにもつながって。

 ここにきても、こんな世の中でも、まだいろいろとつながってくれるんだなと。より一層、それが本当にうれしくて。

 ここからどうなっていくのか。私の壮大な夢はいつかシャンソン歌手になることなんです。

 なので、歌に説得力だとか貫禄だとかをつけるために、いろいろな愛を知り、傷つき、いろいろな味というか、それを身にまとうことが必要なんだろうなと。

 年齢を“レベル”という表現にして、毎年レベルアップを楽しんでいるんですけど、これからも良いレベルの重ね方をしていきたいと強く思います。

 “明るい遺書”として始めたSNSですけど、今は長生きしたいと思っています。すごく単純な考え方かもしれませんけど、私は長生きすればするほど良いことがあると思っているんです。

 もちろん、人間の命なんてどうなるか分からない。だけど、できれば長生きしたいし、出会えた全ての人にも長生きしてほしい。本気でそう思うんです。一緒にレベルを上げていきましょうと。心の底から、そう思うんです。

 だって、誰がレベル36で水着動画でバズるなんて思います(笑)?

 何があるか分からない。だからこそ人生は面白い。これからもそうであると信じて、生きていこうと思っています。

(撮影・中西正男)

■中川翔子(なかがわ・しょうこ)

1985年5月5日生まれ。東京都出身。子役として活動し、2002年からワタナベエンターテインメントに所属。04年、公式ブログ「しょこたん☆ぶろぐ」を開始。その後、フジテレビ「考えるヒトコマ」、TBS「王様のブランチ」などにレギュラー出演。06年、シングル「Brilliant Dream」でアーティストデビューを果たす。07年にはNHK「紅白歌合戦」に初出場。漫画、特撮、ゲームなどのサブカルチャーへの興味を全面に出した活動も展開し、自身のアパレルブランドも立ち上げる。19年には自身の経験を綴った「『死ぬんじゃねーぞ!!』いじめられている君はゼッタイ悪くない」を上梓。昨年、YouTubeチャンネル「中川翔子の『ヲ』」を開設。10月19日スタートのTBSドラマ「婚姻届に判を捺しただけですが」にも出演している。

芸能記者

立命館大学卒業後、デイリースポーツに入社。芸能担当となり、お笑い、宝塚歌劇団などを取材。上方漫才大賞など数々の賞レースで審査員も担当。12年に同社を退社し、KOZOクリエイターズに所属する。読売テレビ・中京テレビ「上沼・高田のクギズケ!」、中京テレビ「キャッチ!」、MBSラジオ「松井愛のすこ~し愛して♡」、ABCラジオ「ウラのウラまで浦川です」などに出演中。「Yahoo!オーサーアワード2019」で特別賞を受賞。また「チャートビート」が発表した「2019年で注目を集めた記事100」で世界8位となる。著書に「なぜ、この芸人は売れ続けるのか?」。

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1999年にデイリースポーツ入社以来、芸能取材一筋。2019年にはYahoo!などの連載で約120組にインタビューし“直接話を聞くこと”にこだわってきた筆者が「この目で見た」「この耳で聞いた」話だけを綴るコラムです。最新ニュースの裏側から、どこを探しても絶対に読むことができない芸人さん直送の“楽屋ニュース”まで。友達に耳打ちするように「ここだけの話やで…」とお伝えします。粉骨砕身、300円以上の値打ちをお届けします。

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