石油価格を巡る三国志、ロシア対サウジ対米国
OPEC加盟国とロシアなど非加盟産油国からなる「OPECプラス」は3月6日にウイーンで会合を開いた。会合ではサウジアラビア率いるOPEC側が、原油価格の維持のために減産強化を働きかけたのに対し、これをロシアが拒否したことで原油価格を取り巻く状況が一変した。
ロシアが何故、原油価格を維持させるための協調減産を拒んだのか。それは米国のシェールオイルを意識したものされる。
日本の外務省のサイトにキッズ向けに「世界いろいろランキング」というページがある。キッズだけでなく大人にも役に立ちそうだが、このなかで「1日あたりの原油の生産量の多い国」というのがあり、これによると2017年のトップスリーは、3位がロシア、2位がサウジアラビア、そして1位はアメリカ合衆国(米国)となっていた。
水圧破砕法を利用したシェールオイルの生産が広まったことで米国は、サウジアラビアとロシアを追い越して世界最大の産油国となったのである。ただし、シェールオイルの採掘費用は比較的高い。このため原油価格が大きく下落すると採算割れとなる懸念が出る。
これを意識してか、サウジアラビアは2014年に増産によって原油価格を大幅に下落させ、シェール生産者潰しを狙った。しかし、結果は失敗した。今回はサウジアラビアではなく、ロシアがそれを狙って動いたということになる。ロシアとドイツをつなぐ天然ガスパイプライン建設計画をめぐる米国政府の制裁措置に対抗したものではないかとの見方もあった。
ロシアの協調減産拒否を受けて、サウジアラビアは原油価格維持を諦め、むしろ価格の主導権を握るべく、増産の意向を示した。
サウジアラビアの国営石油会社サウジアラムコのナサール最高経営責任者(CEO)は10日、同国が4月の原油供給を日量1230万バレルに引き上げると発表した。サウジアラビアのここ数か月間の生産量は日量970万バレルであり、協調減産は3月末で終了することになり、4月から目一杯増産する見込みのようである。
いまのところ米国サイドからこの原油価格に関して動きはみえないが、大統領選挙を控えているトランプ大統領にとっては当然、見過ごすことはできないはずである。今後、原油価格の動向を巡って、ロシアとサウジと米国がにらみ合う、いわば石油を巡る三国志が勃発する可能性がある。
世界の金融市場は新型コロナウイルスの感染拡大でリスク回避の動きを強め、原油価格の急落によってそれが加速された。今後の原油価格の動向は金融市場にも影響を与えかねない。さらに原油価格の動向は、輸入に頼る日本などでは物価にも直結するだけに注意する必要がある。