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【低用量イソトレチノイン】難治性の酒さに有効?最新の研究結果を皮膚科専門医が解説!

大塚篤司近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授
(写真:アフロ)

今回は、難治性の酒さに対する低用量イソトレチノイン療法について、最新の研究結果をご紹介したいと思います。

酒さは、頬や鼻、額などに紅斑やにきびのような丘疹・膿疱ができる慢性の炎症性皮膚疾患です。一般的には、抗菌薬の内服と抗炎症作用のある外用薬の組み合わせが治療の第一選択とされています。しかし、中等症から重症の酒さの場合、この治療法では十分な効果が得られないことがあります。

そこで注目されているのが、ニキビ治療薬として知られるイソトレチノインの低用量療法です。ジョージ・ワシントン大学医学部の研究チームが行ったシステマティックレビューでは、低用量イソトレチノイン(1日0.1~0.5mg/kg、または固定用量で1日10~20mg)を用いることで、酒さの症状が改善し、再発も減少したと報告されています。

【低用量イソトレチノインの酒さへの効果】

研究チームが検討した34件の研究のうち、14件(被験者数1320人)で低用量イソトレチノインが平均16週間以上使用されていました。その結果、丘疹・膿疱の総数と紅斑が71%~83%減少し、完全に消失したケースもあったそうです。特に1日10mgの用量で忍容性が高かったようですが、併用療法の有無により寛解期間には差があったとのことです。

また、52人を対象とした後ろ向き研究では、1日20mgから開始し、患者の反応に応じて用量を調整しながら57週間投与したところ、91%の患者で丘疹・膿疱が完全に消失、または75%~99%減少したそうです。さらに、71%の患者が3ヶ月以内に1日10mgを週3回に減量し、その用量を1年間継続できたと報告されています。

【低用量イソトレチノインの作用メカニズム】

イソトレチノインは、皮脂腺のサイズを減少させ、アポトーシス(細胞の自然死)を誘導し、病態生理に関与するパターン認識受容体の発現を抑制することで炎症を減らすと考えられています。このような作用によって、酒さの症状が改善するのではないでしょうか。

【低用量イソトレチノイン療法の課題と展望】

レビューに含まれた複数の研究結果から、研究チームは難治性酒さに対する低用量イソトレチノイン療法を強い根拠があると結論付けています。ほとんどの研究がランダム化比較試験で、バイアスのリスクは少なく、一貫性があり、同様の臨床結果が得られているためです。

ただし、標準的なプロトコルがないことから日常的な使用は制限されており、最適な用量や治療間隔を決めるためには、さらなる大規模な長期研究が必要だと指摘しています。また、頭痛、倦怠感、肝機能障害、筋肉痛、関節痛、眼の不快感、ドライアイ、乾燥肌、光線過敏症、脱毛、皮膚の脆弱化、爪の変形、顔面紅斑などの副作用にも注意が必要です。

低用量イソトレチノイン療法は、難治性酒さに対する新たな選択肢として期待できます。ただし、副作用のリスクもあるため、皮膚科専門医による適切な診断と経過観察が不可欠だと考えます。今後、日本でも大規模な臨床研究が行われ、安全性と有効性が確認されることを期待しています。

参考文献:

1. New research examines treatment strategy for resistant rosacea. News release. Newswise. May 29, 2024. Accessed June 3, 2024. https://www.newswise.com/articles/new-research-examines-treatment-strategy-for-resistant-rosacea

2. Desai S, Friedman A. Isotretinoin as a treatment strategy for rosacea: A systematic review. JAAD International (2024), doi: https://doi.org/10.1016/j.jdin.2024.04.009.

3. Rademaker, M. Very low-dose isotretinoin in mild to moderate papulopustular rosacea; a retrospective review of 52 patients. Aust. J. Dermatol. 2018;59(1):26-30. doi:10.1111/ajd.12522

近畿大学医学部皮膚科学教室 主任教授

千葉県出身、1976年生まれ。2003年、信州大学医学部卒業。皮膚科専門医、がん治療認定医、アレルギー専門医。チューリッヒ大学病院皮膚科客員研究員、京都大学医学部特定准教授を経て2021年4月より現職。専門はアトピー性皮膚炎などのアレルギー疾患と皮膚悪性腫瘍(主にがん免疫療法)。コラムニストとして日本経済新聞などに寄稿。著書に『心にしみる皮膚の話』(朝日新聞出版社)、『最新医学で一番正しい アトピーの治し方』(ダイヤモンド社)、『本当に良い医者と病院の見抜き方、教えます。』(大和出版)がある。熱狂的なB'zファン。

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