米長期金利は5%に上昇してくる可能性、円安が加速するリスクも
私が債券ディーラーだった際に、心がけていたことがある。それはロスカットルールを厳守することである。いまなら当たり前ではないかと言われそうだが、1986年にディーラーになって多少経験を積んでから、自主的にロスカットルールを決めていた。
これは債券先物の日足四本値といったチャートを重視しないと、痛い目に遭うことを何度も経験していたためである。チャートは絶対ではないものの、何か見えないものを示唆していたことがあるためである。
下記は4日に私が書いていたものである。
「2日の米10年債利回りは一時、4.40%と昨年11月以来の水準まで上昇した。目先の節目とみられていた2月に付けた直近ピークの4.35%を一時、抜けてきた。ここを本格的に抜けてくると、5%あたりまで節目らしい節目はない。」
これを書いた時点でまさか、米10年債利回り(以下、米長期金利)が5%に向かって上昇してくるということは考えづらかった。少なくともFRBの次の一手は利下げであり、問題はどこでそれを始めるかだけであったとみていたためである。
ただし、チャートそのものは5%へ向けて上昇してくる可能性を示唆していたことになる。そして、材料があとから付いてきた。
もし5%などいくはずがないと、2日の時点で米債のロングポジションをそのまま持っていたとしたら、損失が膨らむこととなった。
10日の米長期金利は4.56%まで上昇したのである。
あとから付いてきた要因のひとつが、3月の米消費者物価指数であり、前年同月比で3.5%と予想を上回った。3月のFOMC議事要旨では利下げ開始に慎重な見方が示された。10日の米10年債入札は低調な結果となったことなどが重なっての米債の急落(米長期金利の高騰)となったのである。
これらを受けてFRBによる利下げは年一回にとどまるとの見方も強まったようだが、年内利下げができるかどうかも不透明になってきている。
米長期金利が5%まで上昇するかどうかは当然わからない。しかし、チャートはその可能性も示していることで、あきらかに米長期金利の上昇トレンドに変化が無い限り、米債のロングポジションはリスクがあるということになる。
さらにドル円と米長期金利との連動性が高まっているとなれば、ドル円が153円あたりで止まることも考えづらくなる。このあたり、今後の米長期金利のチャートも注意して見ておく必要がある。