国連WFPがガザの映像を公開 街は廃墟に 学校に避難する市民に食糧配給も「まもなく底をつく」
イスラム組織ハマスが実効支配するパレスチナ自治区ガザは、イスラエルによる報復攻撃で230万人の住民のほとんどが電気も水も手に入らない状況に置かれている。
ガザ地区唯一の発電所はイスラエルによる報復措置で燃料不足に陥り、操業を停止。WHO=世界保健機関によると、地区にある病院でも数日中に燃料がなくなる可能性があり、人道的な危機に陥っている。
これまでの戦闘でイスラエル、パレスチナ双方での死者は2500人以上にのぼる。
イスラエル側による、ガザへの空爆で、廃墟のように変わり果てた地域もある。
そうした中、国連WFP=世界食糧計画がガザの様子を記録した映像を公開。緊急時の避難先に指定されているUNRWA=国連パレスチナ難民救済事業機関が運営する学校に避難した子どもたちなどへの食糧配給を開始したと発表した。
やっとの思いで避難した子どもたち。配られたパンを頬張り笑顔を見せる子どもたちの姿とは対照的に、国連WFP職員は「このままではまもなく食糧も底をつく」と語り、一刻も早い避難のための「人道回廊」の設置を求めている。
国連WFPが鳴らす警鐘をあらためて記事で共有する。
◆安全で妨げのない「人道的回廊」を
現地での緊急支援を続ける国連WFPパレスチナ サーメル・アブドルジャーベル代表はガザ地区の厳しい状況を次のように語る。
「状況は壊滅的です。私たちは現地で、家を追われた人々や避難所で暮らす人々が生き延びるために必要な食料と支援を得られるよう、全力を尽くしています。今日、私たちはUNRWAとともに、避難所に住む18万人に、ガザでまだ営業しているパン屋から焼きたてのパンを含む、すぐに食べられる食料を届けることにしました。私たちは、まだ営業している店で食料を購入できるよう、電子バウチャーを使った支援を展開する予定です。私たちはできる限りのことをしていますが、ガザでの食糧供給と基本的なニーズへの支援はまもなく底をつきそうです。被災者を支援するためには、人道的回廊が必要であり、その数は日々増加している。安全で妨げのないアクセスが必要であり、これまで以上に資金援助が必要なのです」。
◆閉ざされたガザでの限界 国連職員も11人死亡
緊急時の避難所に指定されているUNRWAの学校では、国連WFPのパンが配給された。この学校は10日現在、自宅からの避難を余儀なくされた60以上の避難家族、750人を受け入れている。これらの家族は食料も持ち物も持たずに着の身着のまま避難してきた人たちだ。
国連WFPは、ガザとヨルダン川西岸地区の80万人以上の人々が食糧、水、必需品へのアクセスを失い、悲惨な状況に直面していることから、重要な食糧支援を提供するための緊急活動を行なっている。
現在国連WFPが求めるのは、ガザへの援助と人道支援の入国を容易にするための人道的回廊の設置だ。
11日、国連のグテーレス事務総長はガザ空爆で死亡した国連職員の数は、少なくとも11人にのぼると発表。UNRWAによると、死亡した職員の内訳は、教員5人と婦人科医、技術者、心理カウンセラーがそれぞれ1人、支援スタッフ3人。中には自宅で家族と共に死亡した職員もいるという。国連学校の児童や生徒も30人が死亡したと発表している。
こうした状況から、国連WFPは「人道的回廊」の設置を求めるとともに、援助を必要としている人々に届けるため、緊急にアクセスと資金を必要としている。この危機的状況に対処するためには、今後4週間で総額1730万米ドル、日本円でおよそ26億円あまりが必要だという。
◆すべての国境と検問所の封鎖で危機はさらに悪化
国連WFPは今後数日間で、受け入れコミュニティの30万人に食糧配給を行い、現金ベースのプラットフォームを利用できるようにし、脆弱な家族に現金やバウチャーを配布している他の人道支援パートナー団体を支援する計画だ。
しかし、紛争により、食糧生産と流通網が寸断。ヨルダン川西岸地区とガザ地区の間のすべての国境と検問所が閉鎖されているため、必要な支援が入らず、危機はさらに悪化している。
イスラエル軍はハマスの殲滅を掲げ、地上戦に向けた準備を進めているとも言われる。今後人道支援のニーズはさらに高まる。
国連WFPは世界各地での紛争の激化や気候変動などによる支援ニーズの高まりで、慢性的に資金が不足し、国連WFP協会や寄付アプリ「ShareTheMeal」などを通じて多くの人たちへの寄付の呼びかけを続けている。