30年でチャレンジ精神が減る若者、増える高齢者
価値観やポリシー、これまでの経験や性格など、多様な要因に左右されるものの、人には人生観や基本的な行動指針的なものとして、「自分の可能性を確かめたい、できるだけ多くの経験をしたい」といった行動的な方向性を持つ人と、「わずらわしいことは避け、平穏無事に暮らしたい」のような安定性を優先する人がいる。この相対する人生観の動向について、統計数理研究所による定点観測的調査「日本人の国民性調査」(※)の結果を基に、その実情を確認する。
今項目では「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」「わずらわしいことはなるべく避けて、平穏無事に暮らしたい」の相反する人生観を挙げ、回答者の気持ちはどちらに近いかと尋ねている。
その2択のうち積極派、つまり「自分の可能性を試すためにできるだけ多くの経験をしたい」の回答値を示したのが次のグラフ。今項目は過去において2013年と1983年で調査が実施されている。つまり30年間における心境の変化を知ることができる。
一般的なイメージとして「若者の方がチャレンジ精神旺盛」「歳を取ると平穏さを好む」というものがある。実際、今回の回答結果もその通りなのだが、30年の間に大きな変化が生じている。
具体的には30年前の1983年当時では、若者の挑戦心は旺盛で、20代で80%、30代でも72%に達している。そして60代以降になると半数を割り込み、70代以上では37%のみ。ところが直近の2013年になると、20代では68%、30代では63%にとどまるのに対し、50代では63%となり、30代と同一値を示す。60代でも58%、70代以上ですら51%に達している。明らかに回答時の年齢階層格差が縮小し、平坦な結果が出ている。
これは回答時の年齢による傾向に加え、何年生まれなのかで区分する「世代別」による差異も生じていると見れば、道理は通る。すなわち1983年当時に20代や30代(加えて40代もだろうか)だった世代は元々アグレッシブなのに加え、若年補正が加わり、大きく「チャレンジ精神」派の回答値を伸ばす。当時の高齢層は低い値。
そして2013年ではその世代が50代・60代、さらには70代以上になるため、元々低めの高齢補正でも、世代特性のアグレッシブさが加わり、高い値を示すようになる。一方で2013年時点の若年層は若年補正のみで世代特有のプラス補正が無いため、さほど高くはない値を示すことになる次第である。2回分しか計測値が無いので判断は難しいが、2013年の若年層は元々の若年補正も低いものとなっているのだろうか。
今の若者が保守的、チャレンジ精神に欠けるとの非難を受けることもあるが、むしろそれは団塊の世代前後の世代層が過度に挑戦的だったことの裏返しなのかもしれない。
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※日本人の国民性調査
統計数理研究所が1953年以降5年ごとに実施しているもので、各回ごとに微妙に細部は異なるものの、基本的に20歳以上の男女個人を対象にした標本調査。層化多段無作為抽出法で2254人から6400人の標本を抽出し、個別面接聴取法で実施している。
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