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英国の地ビール、海外で人気 ―中小メーカーに活路広げる

小林恭子ジャーナリスト
ソーンブリッジ醸造所のウェブサイト

(週刊「エコノミスト」11月11日号のワールドウオッチコラムの筆者担当分に補足しました。) 

英国の地ビールの輸出がこのところ、大きく増加している。世界的な地ビール人気と英国製ビールのアピールが増加の要因だ。中小メーカーが次々と海外市場に活路を見出すようになった。

英イングランド地方中部ダービシャー州を拠点とする地ビールメーカー「ソーン・ブリッジ」は過去2年間で輸出量が2倍に増えた。かつては収入全体の10%だったが、現在は30%を越える。ソーシャルメディアが輸出増加に大きな役割を果たしたという。「新しいビールを醸造したとツイートすると、すぐに世界中から注文が入ってくる」(マーケティング担当者、英ガーディアン紙10月21日付)。地ビールを比較するサイトの評価を読んで、メキシコの流通業者から問い合わせが来たこともあるという。輸出先はスウェーデン、米国、イタリア、ノルウェーなど33カ国だ。

英国内でも地ビールは人気が高い。英「独立醸造所協会」が会員に調査をしたところ、地ビールの生産は昨年で前年より7%増えた。

中小の地ビールメーカーは、2002年以降、大手メーカーよりも税金率を低く設定されている。このため、英国の名物の1つパブ(日本で言う居酒屋)の数が急速に減っているのとは対照的に、その数は増える一方だ。しかし、どのパブやレストランで自分たちが醸造したビールを使ってもらえるかで熾烈な競争がある。そこで活路の1つとなるのが海外市場だ。

「ブリュードッグ」のウェブサイト
「ブリュードッグ」のウェブサイト

スコットランドの地ビールメーカー「ブリュードッグ」は2007年に創業。現在までにスコットランド最大の醸造所に成長した。売り上げの60%が輸出による。「良い流通業者を見つけるのが成長の鍵」(同社共同創業者)という。

しかし、自力で海外に出かけ、買い手や最適な流通業者を見つけるのは大部分の中小メーカーにとっては大きな負担だ。そこで、英政府は中小メーカーを対象に定期的に出張ツアーを開催している。今後も輸出を増やせるか、注目だ。

ジャーナリスト

英国を中心に欧州各国の社会・経済・政治事情を執筆。最新刊『なぜBBCだけが伝えられるのか 民意、戦争、王室からジャニーズまで』(光文社新書)、既刊中公新書ラクレ『英国公文書の世界史 -一次資料の宝石箱』。本連載「英国メディアを読み解く」(「英国ニュースダイジェスト」)、「欧州事情」(「メディア展望」)、「最新メディア事情」(「GALAC])ほか多数。著書『フィナンシャル・タイムズの実力』(洋泉社)、『英国メディア史』(中央公論新社)、『日本人が知らないウィキリークス』(洋泉社)、共訳書『チャーチル・ファクター』(プレジデント社)。

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