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【高野町(高野山エリア)】高野山にオープンした山椒専門店。なぜ山椒?実は持続可能な農業に貢献するお店

田中寛人地域のあしもとマイスター(橋本市・高野町)

2021年にオープンした山椒専門店「平野清椒庵」さん
初めて私が高野山で店舗を見た時の第一印象は、「どうして宗教のまち高野山に山椒屋さんが???」。

伺ってみると、それには深い理由と繋がりがありました。

高野山の街並みの中で、白い建物は目立っています
高野山の街並みの中で、白い建物は目立っています

初めて見たとき、何屋さんかよく分からず・・・
初めて見たとき、何屋さんかよく分からず・・・

高野山と山椒との繋がり

古来より高野山で提供される精進料理にはスパイスとして山椒が使われてきおり、山椒は漢方薬としても使われていました。
※山椒の果実は、果皮と種子に分かれ、乾燥させた果皮が生薬としての山椒(サンショウ)になります。

薬としての山椒
健胃,整腸,駆風(腹のガスを除く),止痛,駆虫などの作用があり,食欲不振,胃下垂,消化不良,回虫駆除などに用いる.山椒の芳香と辛味の刺激が内臓を活性化する.
漢方処方では,大建中湯,当帰湯などに配合されている.
出来物の吸出しには葉の汁をガーゼに浸して患部に当てる.
うるしかぶれや水虫には葉の煎液や葉の汁を揉んで患部に塗る.
葉や果実は食用にもなり,幹はすりこ木の材料になる.
熊本大学薬学部薬草園 植物データベースより引用

店先にぶどう山椒のかわいい株が展示されています
店先にぶどう山椒のかわいい株が展示されています

ちょうど実を付けていました。畑ではもっと鈴なりに実が成ります
ちょうど実を付けていました。畑ではもっと鈴なりに実が成ります

その高野山を支えた素材のひとつである山椒の産地が、高野山麓の西側に続いている和歌山県の有田川流域(の中でも旧清水町)でした。
※山椒栽培も含まれる「聖地 高野山と有田川上流域を結ぶ持続的農林業システム」が2021年2月に日本農業遺産に認定されています。

高野山に山椒専門店がオープンした理由

「日本一のぶどう山椒の良さ、その生産地の有田川流域のことをもっと知ってもらいたい」

ぶどう山椒とは、
山椒品種のひとつ。ぶどうの房のように実り、粒形は大きく肉厚。食味はピリッと辛味があり、山椒特有の香りが強いのが特徴。
山椒の全国シェア7割を占める和歌山県にあって、有田川町は生産量日本一を誇る。特に、有田川町清水地区はぶどう山椒発祥の地として知られ、古くから香辛料の最高級品として取引業者や市場から高い評価を得ている。

店舗の運営会社「全笑」はもともと山椒含めた香辛料原料のスパイスメーカーへの原料の供給やOEM(相手先ブランド製造)メーカーで、七味や柚子胡椒、ちりめん山椒などの原料の唐辛子や山椒を加工して皆さんもご存じの数多くのメーカーに提供しています。

その工場が和歌山県有田川町清水地区にあるご縁で、地域活性化にも関わり、地域の山椒農家が高齢化し減少していく中で、山椒を適正価格で買い取り、生産地を明確化した良い物(商品)を作り、地域ブランド化や作り手のモチベーションアップに繋げて行きたい、また、若い人にも知ってもらいたい、という想いの元で地域と関わり続けており、「国産でこんな良い素材があり、ここで作られている」ことを発信するために2021年に山椒専門店をオープンされました。

この専門店ならではの特徴として、全笑が取り扱うぶどう山椒の中でも、特に選別した高品質な実だけを高野山の店内で石臼で挽いて粉にしています。
※ちなみに、店内商品の全ての原料が国産。

石臼で挽くと機械挽きよりも熱が発生しないので、山椒本来の風味が残り、えぐ味の発生を抑えます
石臼で挽くと機械挽きよりも熱が発生しないので、山椒本来の風味が残り、えぐ味の発生を抑えます

選び抜かれた山椒粉
選び抜かれた山椒粉

実際に試食させて頂くと、市販の山椒とは香りが異なり、山椒のイメージが変わりました。
こちらの商品は市販品には無いフルーティーな香りと爽やかさがあり、後から遅れて舌にくる「これまで山椒感」だと思っていたビリリ感(エグみ)がありません。
上品な風味を残した感じです。

山椒缶
山椒缶

ウナギ以外の山椒のオススメの使い方を店長に伺いました。

・和風だと、味噌汁や丼モノに。

・洋風だと、サラダにふりかけたり、ミートソースや揚げ物のソースの中に入れたり、カレーに入れてもオススメ。

・焼酎に入れると、焼酎臭さが減りまろやかになるとか。

その他に山椒以外のスパイス商品を作られており、
七味は他社は輸入材料がメインのところばかりの中で、こちらは七味を全て国産材料で製造し、オンリーワン企業だそうです。ちょっと高いけど、これが本物・本当の七味の味。

七味缶
七味缶

ゆず一味に使っている材料も和歌山産柚子の皮で、一般的なゆず皮は果実まるごとから果汁を絞ったあとの残渣を乾かしたモノを材料にすることが多いのですが、こちらでは、先に手で剥いた皮を使って香りがなるべく残るように、そして皮のエグみが入らないように作っています。

ゆず一味缶
ゆず一味缶

一味缶もあります。「喜界島」で育ったミネラルたっぷりの国産唐辛子を使用。辛さのなかに甘み
一味缶もあります。「喜界島」で育ったミネラルたっぷりの国産唐辛子を使用。辛さのなかに甘み

ねり七味もあります。唐辛子と山椒の豊かな風味が香ります
ねり七味もあります。唐辛子と山椒の豊かな風味が香ります

山椒胡麻ラー油。一滴一滴時間をかけて珊瑚でろ過した胡麻油をベースに、喜界島唐辛子と花椒を漬け込みました。
山椒胡麻ラー油。一滴一滴時間をかけて珊瑚でろ過した胡麻油をベースに、喜界島唐辛子と花椒を漬け込みました。

などなど、たくさんのコダワリが詰まった商品群でした。
ただ商品を眺めているだけではなかなかそのコダワリは見えなかったのですが、お話を伺ってみて始めてその凄さが分かりました。

店内の壁面のディスプレイ。よく見ると・・・
店内の壁面のディスプレイ。よく見ると・・・

実のついた山椒が一面を飾っています
実のついた山椒が一面を飾っています

店内にサンプルがありますので、ぜひ皆様も気軽に試食してみて下さい。山椒のイメージが変わります。

さらに、店頭では山椒×スイーツも販売されていて、山椒ソフトクリームを通して外国人は初めて山椒を知り、日本の魅力を更に知ってもらう機会にもなっているそう。

山椒ソフトクリーム。濃厚バニラに石臼挽きの山椒をトッピング
山椒ソフトクリーム。濃厚バニラに石臼挽きの山椒をトッピング

伺えば伺うほどいろいろお話が出てきて、山椒を通じて、実は様々なコトをされているお店でした。スパイス好きな方には必見です。

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「平野清椒庵(ひらのせいしょうあん)」

住所:和歌山県伊都郡高野町高野山733
営業時間:9時~17時
定休日;年末年始のみ
電話番号:0736562777
公式サイト

地域のあしもとマイスター(橋本市・高野町)

和歌山県高野町在住。現場のフィールドワークを通してその土地ならではの地域資源を掘り起こし、地域づくりにつながる高付加価値商品開発や体験プログラムの企画造成支援や実践を行っています。そのスキルも活かして皆さまのまだ見ぬ和歌山県をお届けしていきたいと思っています。民俗学と発酵と和の薬草と昆虫食と染色のイベントもしています。

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