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こども食堂2,200か所超える 2年で7倍以上 利用する子どもは年間延べ100万人超

湯浅誠社会活動家・東京大学特任教授
あるこども食堂のメニュー。子どもも一緒に調理し、マドレーヌも手作り(筆者撮影)

こども食堂2,200か所超える

全国のこども食堂が2,200か所を超え、少なくとも2,286か所に達していることが、私たちの調査でわかった。

全国のこども食堂の数を調べたものとしては朝日新聞記事(2016年7月2日)があるが、そのときは「5月末段階で、少なくとも319か所」と報じられていた。

それから2年足らずで、約2,000か所増えたことになる。

2年で7倍以上、約2,000か所の増加
2年で7倍以上、約2,000か所の増加

こども食堂安心・安全向上委員会が実施

この調査は、私たち「こども食堂安心・安全向上委員会」が実施した(メンバーは末尾に記載)。

この団体は、こども食堂の運営者らが集まって、こども食堂の安心・安全を高める「こども食堂安心・安全プロジェクト」を行っている。

こども食堂安心・安全プロジェクトのロゴ
こども食堂安心・安全プロジェクトのロゴ

2,200か所超、2年で7倍以上、が意味すること

これには、次のような意味があると思う。

1)規模感、インフラ感が出てきた

2)改めて、こども食堂が何を提供しているのかを周知する必要がある

3)支えあいの地域づくりが本格化している

4)プチブームで終わらせない、規模感・インフラ感にふさわしい安心・安全が必要

小学校の10分の1、児童館の半分

2,200か所という数字の”規模感”を見ると、

全国に約2万ある小学校の10分の1

約1万ある中学校の5分の1

約4,000ある児童館の半分

となる。

もちろんこれらの公共施設と、手弁当で運営しているこども食堂とでは、施設の大きさも、利用する子どもの人数も、開催頻度もまったく異なる。

こども食堂は、自宅の一室を開放して、また公民館の一室で、数名~数十名の子どもが参加して、週1回とか月1回とかの頻度で運営しているところが少なくないからだ。

ただ、もはや「めずらしいところ」ではない

ふつうに、お住まいの近くにある、ものになりつつある。

利用している子どもたちは、延べ100万人以上

それに応じて、子どもの利用者数も増えている。

「こども食堂安心・安全プロジェクト」には、全国200か所のこども食堂が参加しているが、

そこに来ている子どもの数は、年間で延べ114,580人

全国のこども食堂はこの11倍以上だから、延べにして約100万人以上の子どもたちがこども食堂を利用していることになる。

食事数としても、100万食を超える。

こども食堂で提供される食事例。東京・大田区の「だんだんこども食堂」(筆者撮影)
こども食堂で提供される食事例。東京・大田区の「だんだんこども食堂」(筆者撮影)
こども食堂で提供される食事例。東京・港区の「みなと子ども食堂」(みなと子ども食堂提供)
こども食堂で提供される食事例。東京・港区の「みなと子ども食堂」(みなと子ども食堂提供)

あれよあれよという間に、気がつけばそこにこども食堂!?

このことは、こども食堂にインフラ感が出てきたことを意味する、と思う。

インフラとは、インフラストラクチャーの略。

道路や水道、学校のように、暮らしの基盤となるもの。

公共施設である児童館の半分の個所数で、年間100万人以上の子どもが食事をとっているとなれば、そこには暮らしの基盤としての「あたりまえ」感がただよい始める。

もちろん、「ただよい始める」ので「ただよっている」のではない。

まだまだ、こども食堂はイベント感を抜け出ていないし、「特殊な人たちがやっている特殊な場所」と思われているだろう。

世間一般の認知度も、1割に満たないかもしれない。

他方、大勢の人がそう思っているうちに、あれよあれよという間に広がり続けているのも事実。

いつの間にか「気がつけば、そこにこども食堂」という世の中になるかもしれない。

子ども会の現代版であり、交流と発見の場

では、こども食堂とはどのようなもので、子どもたちに、そして地域と社会に何を提供しているのか。

ひと言でいえば、

こども食堂とは、自治会の子ども会の現代版であり、地域と社会に「交流と発見の場」を提供している。

多くのこども食堂は、

1)地域に開かれた形で、対象を限定せず

2)食事だけでなく、食卓のだんらん、さまざまな体験(季節のイベントなど)や、子どもとじっくり関わる時間を提供している。

3)それは、ママ友でもPTAでもない地域の方たちが子どもと知り合う交流の場でもあり、

4)そこから、困りごとのある子どもがかすかに出すサインを発見する場でもある。

交流が「地域づくり」に、発見が「子どもの貧困対策」に関係している

この2本柱で運営されているのが、こども食堂だ。

こども食堂には、子ども、大人、お年寄りが多様に集う(「だんだん・こども食堂」提供)
こども食堂には、子ども、大人、お年寄りが多様に集う(「だんだん・こども食堂」提供)

ちなみに、農水省はこども食堂を次のように位置づけている。

-「子供食堂」とは?-

近年、地域住民等による民間発の取組として無料または安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する子供食堂等が広まっており、家庭における共食が難しい子供たちに対し、共食の機会を提供する取組が増えています。

-食育の推進という観点から見た子供食堂の意義について-

子供食堂の活動は様々ですが、親子で参加する場合も含め、

(a)子供にとっての貴重な共食の機会の確保

(b)地域コミュニティの中での子供の居場所を提供

等の積極的な意義が認められます。

出典:農水省ホームページ(太字は筆者)

純粋に自発的

こうした取組みが、純粋に自発的な、民間発の取組みとして広がっている。

こども食堂には、制度的な裏づけがない。

つまり、始めてもどこからもお金は出てこない(一部、補助金を出す自治体あり)。

ほとんどのこども食堂は寄付や会費で運営しており、持ち出しで運営しているところも少なくない。

持ち出し金額が年間30万円を超すところも、ある。

多くの人たちが、誰かと出会い、課題と出会い、やむにやまれぬ気持ちで始めている。

東日本大震災などをきっかけに広がりつつある「支えあいの地域づくり」が、「こども」と「食」という切り口で広がったのがこども食堂、とも言えるだろう。

(こども食堂を始めた動機について語る、こども食堂安心・安全向上委員会のメンバー)

心配なこと

同時に、心配なこともある。

延べ約100万人以上の利用といったが、個別に見れば、まだ地域の子どもに情報の届いていないこども食堂はたくさんある。

「誰がやっているのかよくわからないし、そんなところに子どもを紹介して、万が一何かあったら大丈夫か?」という声もある。

まだまだ「特別な人たち」がやっている「特別な場所」と見られていて、だからこそ不安感を抱かれやすい

そして、大人が話題にしてくれなければ、子どもたちには情報は届かない

また、現状がプチブームのような状態だけに、万が一の事態があったときには、一気に「落とされる」可能性もある。

「素人が調子に乗って手を出すようなものじゃなかったんだ」ということになれば、せっかく広がってきた芽が摘み取られてしまうのではないかという心配もある。

子どもが元気に走り回ったがゆえに、あぶなく大ケガに至りかけてヒヤリとしたという「ヒヤリ・ハット事例」も耳にする。

(保険の必要性について語る、こども食堂安心・安全向上委員会のメンバー)

保険加入を進めたい

そこで今回、私たちは「こども食堂安心・安全プロジェクト」を行い、保険加入費用を集めている。

たとえば、全国の社会福祉協議会で取り扱っている「ボランティア行事用保険」は、

傷害はもちろん、食中毒やアレルギーにも対応している。

事前に来る子どもたちの名前がわかっていれば、行き帰りの交通事故にも対応できる。

起こらないほうがいいが、万が一に備えられる。

金額は、1人1回28円。

28円あれば、子ども一人の安心を支えられる

月一開催、毎回30人の子が参加するこども食堂で、年間1万円
月一開催、毎回30人の子が参加するこども食堂で、年間1万円

これについては、すでにたくさんの人が関心を寄せ、応援してくれている

趣旨と必要性を深く理解してくれている人たちの、期待の声に応えたい(以下、一部紹介)。

キッコーマン株式会社 取締役常務執行役員 国際事業本部本部長・茂木修さん

津田塾大学客員教授・前厚生労働省事務次官・村木厚子さん

こども食堂が、だれもが安心して立ち寄れる地域の居場所になることを望みたい。

※こども食堂安心・安全向上委員会メンバー

画像

(前段左より)

栗林知絵子・豊島子どもWAKUWAKUネットワーク(東京)

園田愛美(親子)・森の玉里こども食堂(鹿児島)

近藤亜弥(親子)・おてらde食堂(北海道)

(後段左より)

黄瀬絢加・滋賀県社会福祉協議会(滋賀)

【代表】湯浅誠・社会活動家/法政大学教授

小西由美子・子ども食堂ひがしっこ(滋賀)

大谷清美・チャイルドケアセンター(福岡)

(4月3日16:53一部修正)

社会活動家・東京大学特任教授

1969年東京都生まれ。日本の貧困問題に携わる。1990年代よりホームレス支援等に従事し、2009年から足掛け3年間内閣府参与に就任。政策決定の現場に携わったことで、官民協働とともに、日本社会を前に進めるために民主主義の成熟が重要と痛感する。現在、東京大学先端科学技術研究センター特任教授の他、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえ理事長など。著書に『つながり続ける こども食堂』(中央公論新社)、『子どもが増えた! 人口増・税収増の自治体経営』(泉房穂氏との共著、光文社新書)、『反貧困』(岩波新書、第8回大佛次郎論壇賞、第14回平和・協同ジャーナリスト基金賞受賞)など多数。

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