ヤマハが3輪バイクのメリットを最新映像で公開!
ヤマハがLMWの最新映像を公開している。
LMW(リーニィング・マルチ・ホイール)とは、ヤマハが手掛けるモーターサイクルのようにリーン(傾斜)して旋回する3輪以上の車両のこと。第一弾として発売された、「TRICITY(トリシティ) 125」に続き、この秋に欧州で発売を控えている「TRICITY 155」にも採用されているシステムである。
ヤマハではLMWをクルマやバイクに続く次世代の主力製品として、開発にも力を注いでいる。トリシティは前2輪、後1輪のスリーホイーラーで、通常のバイクのように車体を傾けて曲がるのが特徴だ。
2輪の機動性と3輪ならではの安定性を併せ持っているのが特徴であり、バイクの運転特性に慣れない人やビギナー、身体能力の衰えた高齢者などにも安全に安心して乗れるメリットがあると期待されている。
今回ご紹介するのは、日進月歩で進化するLMWの優れた特性をリアルな動画で伝える非常に興味深い内容となっている。ぜひチェックしていただけたらと思う。
(1) 滑りやすい路面
最初の動画は滑りやすい路面でのLMWの有効性について。濡れた平滑な鉄板の上をイン側の前輪が通過しようとした瞬間、グリップを失って切れ込み始めるが、次の瞬間にはアスファルト上を走るアウト側のタイヤが踏ん張って、何事もなかったように通過していく。
荷重が瞬時にアウト側に移動してタイヤがつぶれてグリップする様子を、ハイスピードカメラが捉えている。雨の日の鉄板の怖さはライダーなら誰でも経験していることなので、とても説得力がある。
(2) 二人乗り
続いて、二人乗りでの坂道発進や低速ターンでの安定性について。一人で乗っていてもフラつきやすく苦手意識を持つライダーが多いこれらのシチュエーションでも、スムーズに安定して走り出し、クルッと曲がる様子が映像から見て取れる。
しかもライダー役は小柄な女性。もし後ろに乗せられてこんなに簡単にUターンをキメられてしまったら、男として立つ瀬がなくなる、というのは冗談としても、LMWのおかげで今後は女性ライダーが彼氏とタンデムという光景も増えるかもしれない。
(3) 強い横風
風速15メートルの風が急に横から吹きつけた状況を想定したテストでも、フロント2輪の特性を生かして安定して通過。直進してきたラインを大幅に乱すことなく、安全に走り続けることができる。
ちなみに風速15mというのは台風並みで、看板などが飛ぶぐらいの強風。通常のバイクだったら、走るのを思いとどまるレベルだと思われる。LMWは悪天候に対しても強いことがよく分かる。
(4) 急ブレーキ
直進時に何かの理由で強くブレーキをかけざるを得ないときもある。急制動時の安定性についてだが、フロント2輪で踏ん張るため当然安定しているし、タイヤ2個分の摩擦力によって路面にグリップするため制動距離も短くなるなど、LMWならではのメリットが映し出されている。
当然、パニック時の急ブレーキによるホイールロックにも強く、さらにトリシティ125にはABS仕様も用意されているので相乗効果も期待できそうだ。
(5) 段差乗り越え
駐車場に入るときなどのちょっとした段差を乗り越える実験では、LMWらしさが最も顕著に表れている。映像では歩道の段差ぐらいの比較的大きなギャップに対して、しかも斜めに前輪を当てていく過酷な実験が行われている。
通常のバイクであれば下手をすると前輪が切れ込んで、あるいは段差に弾かれて転倒してしまう可能性も高いだろう。
ところが、左右別々に動くリンクを持つLMWの場合、フロント2輪がそれぞれ独立して路面追従しショックを吸収するため、ほとんど姿勢を崩すことなく安定して段差を乗り越えていける。
これはビジュアル的にもインパクト大である。
ヤマハが実現しようとしている「新しい乗り物」の可能性
映像を見ると、通常のバイクであれば、高度なテクニックを持ったエキスパートライダーでしか対応できないような難しいシチュエーションをいとも簡単にいなしていく、LMWのポテンシャルの高さをあらためてよく理解できる。
となると、先の「東京モーターショー2015」にも参考出品され、この先登場してくると見られるLMWのコンセプトモデル「MWT-9」や、さらには研究開発車両として動画が公開されている4輪タイプの「OR2T」にも期待が膨らむ。
▼東京モーターショー2015で参考出品された「MWT-9」
▼研究開発モデルとして試作された「OR2T」(開発呼称)
バイクでもクルマでもトライクでもない、ヤマハが実現しようとしている新しい乗り物の可能性に今後も注目していきたい。