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ステフェン・ロメロが来日2年目で初めて味わう長期打撃不振の裏にあるもの

菊地慶剛スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師
打撃練習前にチームスタッフらと談笑するステフェン・ロメロ選手(筆者撮影)

 来日2年目のシーズンを迎えたオリックスのステフェン・ロメロ選手が、開幕から思い通りの打撃を披露できずに苦しんでいる。

 ここまで6月17日現在で59試合に出場し、打率.217、9本塁打、24打点に留まっている。特に得点圏打率は.192とチャンスに打てておらず、クリーンアップの役目を果たせていない。昨年の成績(.274、26本塁打、66打点)を考えれば、まったく実力を発揮できていない。

 そもそもロメロ選手は打率2割そこそこを彷徨うような打者ではない。マイナーリーグ在籍6年間で通算打率は.306に達しており、1Aから3Aまでどのレベルでも高い打率を残している。ロメロ選手本人も現在のように長期間にわたり打率が低迷するのは初めての経験だという。

 「自分の野球人生で打撃に関してこんなに長い期間苦しんだことはない。自分にとっては初めての体験だ。とにかくこうした経験もポジティブに捉え、この苦しい時期を乗り越えれば野球選手としてさらに成長できると考えるようにしている。

 もちろん楽しいものではないし、嫌なことが続いている。だからといってポジティブさを失ってはいけないし、自分のルーティンと準備を信じてやりながらシーズンが終わった時点でしっかり自信を感じているようにしたい」

 ロメロ選手にとって初めて味わう打撃不振なのだから、明確な打開策を持ち合わせていない。日々打席を積み重ねながら不振から抜け出せるよう試行錯誤を繰り返している日々だ。それではロメロ選手は不振に陥ってしまった理由は何だと考えているのだろうか。

 「昨年は来日1年目でまずまずの成績を残せ、より環境になれた2年目はさらにいい成績を残してほしいだろうという期待を感じていた。その期待に答えようと考えすぎてしまった気がする。本来なら結果にとらわれず自分のプレーに集中していかねばならないのに、打てないから何とかしたいと入れ込みすぎてしまった。

 本来ならベース上に来た球をしっかり打つことだけを考えるのに、どうしても打ちたい気持ちが強すぎてボールを追いかけすぎて(ストライク)ゾーンから外れていく球にも手を出すようになってしまった。開幕からそんな2ヶ月間だった気がする。自分としてヒットが打てるアプローチやスイングができるようになれば自信が出てくると思う」

 外国人選手は日本にやって来た時点で活躍が義務づけられている。来日1年目にある程度の活躍をしたら尚更だ。そうした周囲の期待を背負ううちに、結果だけにとらわれてしまい本来の自分の姿を見失ってしまったようだ。外国人選手ならではの苦悩といえるだろう。

 だがここ最近になって、ロメロ選手は長いトンネルの出口が見え始めているようだ。6月の月間打率は.250とやや上昇の兆しを見せ、ヒーローインタビューにも登場する機会が増えてきている。勝率5割以上を維持するチームの好調さがロメロ選手にも伝染し始めているらしい。

 「ここ最近は他の選手たちも打ち始めているし、投手陣もみんな頑張っている。なので自分も他の選手と一緒にチームの勝利に貢献していけるような感じになってきている。打撃というのは伝染しやすいからね。周りの選手が打ってくれれば自分も気分良く打席に立つことができる。そうなれば自然に積極性もでてくるからね。

 打てない時は自信を失いかけることもあるけど、大事な試合で本塁打を打てたり打点を記録できれば自信になる。とにかく今はチームが勝つためのプレーができればポジティブに考えることができるし、そうした気持ちで残りシーズンを過ごしていきたい。今はチームもいい位置にいるし、自分がもう少し安定感を取り戻せばもっともっと勝ち続けることができるんじゃないかな」

 チームの勝利は選手たちの個人成績に支えられている。当然個人成績のいい選手を多く揃えているチームの方が強いものだ。だが時としてチームの勝利が選手たちを波に乗せ、選手の個人成績を引き上げてくれる時もある。まさにロメロ選手も、チームの勝利と周りの選手の活躍が彼を呪縛から解放し、不振から抜け出させようとしている。

 “Be yourself.(自分らしく)”

 ロメロ選手から話を聞き終わった後思わず彼に声をかけてしまったのだが、その言葉に優しい笑みを浮かべながら“Yes!”と応えてくれた。彼が自分本来の打撃を取り戻した時こそ、オリックスの快進撃はさらに勢いを増すことだろう。

スポーツライター/近畿大学・大阪国際大学非常勤講師

1993年から米国を拠点にライター活動を開始。95年の野茂投手のドジャース入りで本格的なスポーツ取材を始め、20年以上に渡り米国の4大プロスポーツをはじめ様々な競技のスポーツ取材を経験する。また取材を通じて多くの一流アスリートと交流しながらスポーツが持つ魅力、可能性を認識し、社会におけるスポーツが果たすべき役割を研究テーマにする。2017年から日本に拠点を移し取材活動を続ける傍ら、非常勤講師として近畿大学で教壇に立ち大学アスリートを対象にスポーツについて論じる。在米中は取材や個人旅行で全50州に足を運び、各地事情にも精通している。

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