世界各国の「新聞・雑誌」や「テレビ」への信頼度をさぐる(2017~2020年分)
人の価値観は個人ベースでも大きな違いを生じるが、同一環境下に置かれることで一定の同一性を示すことが多々ある。その区分の代表的な様式が「国家」。国毎にインフラの整備状況や法令、文化形態が違い、その環境下で長年暮らしていくうちに、価値観は国家単位で違いを生じるようになる。今回はその国単位の価値観を中長期的に定点観測の形で調査報告している「World Values Survey(世界価値観調査)」(※)から、「主要国における新聞・雑誌やテレビ(要はマスコミ)に対する信頼度」について確認をする。
次に示すのは従来型のメディアのうち新聞・雑誌、およびテレビに対する信頼度。選択項目として「非常に信頼する」「やや信頼する」(以上肯定派)「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」(以上否定派)「分からない」「無回答」が用意されており、どれか一つを選択することになっている(「無回答」は選択する、というよりは結果的なもの)。
この選択肢のうち今回は「非常に信頼する」「やや信頼する」の肯定派を単純に加算して、その値から「あまり信頼しない」「まったく信頼しない」の否定派の値を引き、各メディアへの信頼度(DI値)を算出することにした。つまりこのDI値が大きいほど、その国では対象メディアが信頼されていることを意味する。
なおDI値を算出しているのは現時点で回答値が掲載されている国のうち注目すべき国に厳選している。
第一印象として把握できるのは、日本は先進諸国の中ではずば抜けて、そして全体でも相当の上位に位置していること。特に「新聞・雑誌」ではフィリピンに次ぐプラス41.8%という、「妄信」に近い群を抜いた高値となっている。日本国内では特に高齢層において新聞などの従来型メディアの中でも紙媒体、そしてテレビを信頼する傾向が強いことが知られている。この傾向は世界共通のイメージがあるように思えたが、実のところは日本など少数国の特異的な現象の可能性はある。
例えばアメリカ合衆国では(でも)【アメリカ人がいつテレビを見ているのかがひとめで分かる図】など各種調査結果などのように、高齢者の方がテレビ視聴時間は長い。にもかかわらず「テレビ」への信頼度が全体として低いままなのは、「テレビは信頼できないもの」と割り切った上で、娯楽として視聴しているからなのだろう。
また、国の名前の並びをよく見ると、全般的に中東・アジア系諸国は「テレビ」「新聞・雑誌」への信頼度が高い。民族性との言葉でくくるのは多分にリスクがあるが、メディアや情報に対する考え方が地域単位で根底部分から異なるのかもしれない。
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※World Values Survey(世界価値観調査)
世界100か国以上が参加して実施している国際的プロジェクト「世界価値観調査」によるもの。各国・地域毎に全国の18歳以上85歳以下の男女1000サンプル程度(実際には1000~2000人程度)の回収を基本とした個人対象の意識調査。調査そのものはおおよそ5年おきに実施されているが、調査期間によって一時的に対象外となる国も少なくない。また現時点では集計が完全には終わっておらず、値が掲載されていない国もある。直近の調査結果は2017年から2020年にかけて行われたものだが、記事執筆時点で項目によって調査結果が掲載されていない国が複数確認できる(最終的な報告書は2021年秋に発表予定)。
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(注)グラフ中の「ppt」とは%ポイントを意味します。
(注)「(大)震災」は特記や詳細表記の無い限り、東日本大震災を意味します。
(注)今記事は【ガベージニュース】に掲載した記事に一部加筆・変更をしたものです。