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新型コロナはいつまで人にうつる?オミクロン株に感染し療養解除になった人から感染する心配はない?

忽那賢志感染症専門医
(写真:イメージマート)

2022年9月7日から、新型コロナ患者の療養期間が短縮されました。

短縮された療養期間は安全なのでしょうか?また短縮された療養期間から明けた人はどのようなことに気をつければ良いのでしょうか?

9月7日から療養期間が短縮に

有症状者および無症状者の療養期間(筆者作成)
有症状者および無症状者の療養期間(筆者作成)

9月7日からの療養期間は以下のようになります。

有症状者:発症日を「0日」として、7日間経過し、かつ、症状軽快後 24 時間経過した場合には8日目から療養解除

無症状者:検体採取日を「0日」として、7日間を経過した場合に8日目に療養解除(これまでと変わらず)。ただし、5日目の検査キットによる検査で陰性だった場合は、5日間経過後(6日目)に療養解除

日本ではこれまでに2000万人の人が新型コロナに感染しており、第7波だけでも1000万人が感染しています。

政府は社会機能を維持するために濃厚接触者の待機期間の短縮に続いて、療養期間についても短縮に踏み切りました。

新型コロナはいつからいつまで人にうつるのか?

オミクロン以前の感染性の考え方(Clin Infect Dis. 2021 Apr 26;72(8):1467-1474. を筆者加筆)
オミクロン以前の感染性の考え方(Clin Infect Dis. 2021 Apr 26;72(8):1467-1474. を筆者加筆)

では新型コロナはいつからいつまで周りの人に感染させうるのでしょうか?

これまで新型コロナの感染者は発症3日前から発症10日目くらいまで感染性がある(周りの人に感染させうる)と考えられてきました。

10日以降では感染性は低くなることから、軽症から中等症の人では発症から10日が経過すれば療養は解除となっていました。

人工呼吸器を使用するなど重症であった人は、ウイルス排出期間が長くなることがあるため「発症日から15日間経過し、かつ、症状軽快後72時間経過するまで(発症日から 20 日間経過までは退院後も適切な感染予防策を講じること)」となっています。

中等度・重度の免疫不全のある方では、さらに長期間のウイルス排出が続くことがあります。

オミクロン以前の新型コロナ感染者の感染性のピーク(https://doi.org/10.1038/s41591-020-0869-5を筆者加筆)
オミクロン以前の新型コロナ感染者の感染性のピーク(https://doi.org/10.1038/s41591-020-0869-5を筆者加筆)

またこれまでは特に感染性が強いのは発症前後くらいと考えられてきました。

つまり発症する前の元気な人、症状が出たばかりでまだ活動性の高い方が周囲に感染を広げやすい状態だと考えられてきました。

しかし、オミクロン株が世界に広がって以降、感染性のピークの時期が変わってきています。

オミクロン株では発症後に感染性のピークがある

発症からの日数と感染者のウイルス量の推移(第92回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料)
発症からの日数と感染者のウイルス量の推移(第92回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料)

オミクロン株の感染者は、発症前よりも発症後の方がウイルスを多く排出しているというデータが複数出ています。

日本におけるオミクロン株感染者の発症からのウイルス量の推移について解析した研究では、ウイルス量のピークは発症後3〜6日の時期であったとされています。

同様に、川崎市の調査でも発症前に新型コロナウイルスが検出される症例は少なく、発症後になってから検出される症例が多いことが報告されています。

つまり、オミクロン株ではこれまでよりも「症状が出ている人からの感染」が多くなっていると考えられます。

とは言え、オミクロン株では発症時は「のどの軽い違和感」などごく軽い症状のこともあり、オミクロン株の感染者の56%は自分が感染していたとは気づいていなかったという報告もありますので、自分が発症して周りに感染を広げていることに気づいていない人も実際には多いと考えられます。

感染性のある期間はオミクロン株でも従来と大きな変わりはない

オミクロン株の感染者のうち発症日から感染性があるウイルスが分離される人の割合の推移(第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より筆者加筆)
オミクロン株の感染者のうち発症日から感染性があるウイルスが分離される人の割合の推移(第98回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード資料より筆者加筆)

オミクロン株では、感染性のピークが発症前後から発症後3〜6日にずれていることが分かりました。

ではオミクロン株の感染者はいつまで感染性があるのでしょうか?

オミクロン株では特に感染性のある期間が短くなっているとは言われていません。

感染性のある期間の推定には、生きたウイルスが分離される期間が用いられることが多いですが、デルタ株の感染者と比較してオミクロン株の感染者は特に感染性のある期間に差はないという報告が複数出ており、基本的には発症から10日目くらいまでは周りに感染させうるということになります。

国立感染症研究所の解析では、オミクロン株の感染者のうち16%は発症から8日目の時点でもまだ感染性があると推計しており、療養解除された方の中にも一定の割合でまだ感染性のある人がいることになります。

療養解除後もしばらくは周りに広げないように気をつけよう

以上のことから、療養期間が短縮されたのは「ウイルスの排出期間が短くなったから」ではなく、社会機能を維持するためという政治判断に基づくものです。

早く仕事に復帰して社会を回していくことはこと自体はとても大事なことです。

しかし、療養から復帰してからしばらくは周りに感染を広げないように十分な注意が必要です。

具体的には、屋内ではマスクを着用すること、重症化リスクの高い高齢者や基礎疾患のある方と会うのは避ける、会食は延期すること、などが挙げられます。

また、感染性のあると考えられる期間を過ぎたあとも、時間経過とともに再感染のリスクが高くなってきます。

一度感染した方も、三密を避ける、屋内でのマスク着用、こまめな手洗い、といった基本的な感染対策は引き続き心がけるようにしましょう。

また感染したことがある方も、感染から3ヶ月を目処にぜひワクチン接種をご検討ください。

手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)
手洗い啓発ポスター(羽海野チカ先生作)

※当初、図中の入院以外の有症状者の療養期間が「かつ症状軽快後72時間」となっていましたが、正しくは「かつ症状軽快後24時間です」。失礼致しました。

※大阪大学大学院医学系研究科では、新型コロナに感染したことのある方の後遺症の症状について継続的に調査を行っています。研究の詳細はこちらからご覧ください。これまでに新型コロナと診断されたことのある方は、こちらからアプリをダウンロードいただきぜひ研究にご協力ください。

感染症専門医

感染症専門医。国立国際医療研究センターを経て、2021年7月より大阪大学医学部 感染制御学 教授。大阪大学医学部附属病院 感染制御部 部長。感染症全般を専門とするが、特に新興感染症や新型コロナウイルス感染症に関連した臨床・研究に携わっている。YouTubeチャンネル「くつ王サイダー」配信中。 ※記事は個人としての発信であり、組織の意見を代表するものではありません。本ブログに関する問い合わせ先:kutsuna@hp-infect.med.osaka-u.ac.jp

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