忌避が、エホバの証人の最大の問題と弁護士が指摘 4月から「親子のための相談LINE」が本格運用予定
立憲民主党を中心とする42回国対ヒアリングが行われて、旧統一教会だけではなく、エホバの証人の問題も取り上げられました。
宗教的虐待を受けてきた宗教2世らの切実なる声が、国と社会を動かしています。
最大の問題は、忌避問題
「エホバの証人の組織のなかでの最大の問題は、忌避問題」と、田中広太郎弁護士は話します。
「エホバの証人は、自分たちのコミュニティ以外の人とは、交流をさせないようにします。それにもかかわらず、信者が正式に脱会すると『排斥・断絶』となり、かつての仲間との交流を失い、家族との関係を断ち切られてしまう。死ぬまで親族に会うこともない人もいます。忌避は他の様々な問題を表面化することを覆い隠しています。特にエホバの証人の子供たちは、信者らとの交流しかないなかでありながら、忌避となれば孤立してしまう恐れがある」と警鐘を鳴らします。
エホバの証人の元2世信者の過酷な忌避体験
家族から無視されるなどの忌避があるために、エホバの証人の組織から抜け出せなくなる方も少なくないなか、エホバの証人の元2世信者の小松猛さんが、同ヒアリングの中で自らの辛い体験を話して下さいました。
「正式な信者になったのは13歳の時です。物心ついた時から、過酷なムチ打ちを受け続けて、エホバの証人だけの中で育った私には、正式な会員になる以外の選択肢はありませんでした」
すべての生活がエホバの証人のコミュニティの中で構築されていたといいます。彼は20歳の頃に恋愛をします。しかしそれは「エホバの証人の掟では『決して許されない罪』でしたので『排斥』の検討の対象となり、私は自分で『断絶』の手続きを取り、正式に脱会しました」
ここから彼の苦悩は始まります。
「『断絶』の手続きを取り、忌避という行為により、人生は一変しました」
それまで唯一の社会で交流していたエホバの証人の信者たちからは声をかけてもらえなくなり、20年たった今も避けられています。
実の家族との関係も一変
「退会とともに、両親と住んでいた家にはいられなくなり、家を出ることになりました。エホバの証人以外の世界を全く知らなかった私は、一般社会へ適合するにも仕事をするにも、語り尽くせないほどの苦労をしました」
小松さんは「断絶」から5年ほどが経ち、子供ができたので何度も頭を下げる形で、両親に連絡を取ります。ところが、信者である両親からは「エホバの証人に戻らないのであれば、家族としての交流は一切ない。孫にも今後も会わない」と断られます。
それでも「家族との交流だけはしてほしい」と土下座をするように頼んでも、今日に至るまで、20年以上も状況は変わっていません。
小松さんは「私が心配しているのは、当時の私よりもっと若い10代後半くらいの人たちが、同じような事態に直面し続けていることです。今、こうしたことが、日本で起きていることを社会の人たちに知ってもらいたい」と強く訴えます。
忌避の問題は海外でも
これは日本のみならず、海外でも問題になっています。
立憲民主党の山井和則議員は「2022年12月のノルウェーのオスロ&ヴィーケン州における宗教共同体としての登録の喪失」を取りあげます。
「エホバの証人の公式ウェブサイトには、ノルウェー政府(オスロ&ヴィーケン県知事)はエホバの証人の宗教共同体の登録を取り消した。それに対して同年12月21日、エホバの証人はノルウェー政府に対して、取り消し訴訟を提起して、12月30日に仮差し止め命令が出されて、登録取り消しが保留となっているとあります。(資料によると)当局は、エホバの証人の忌避の慣習により、信者が自由に自己表現する権利が侵害されていることが、宗教共同体法等に違反するとしています」(山井議員)
エホバの証人の問題における、児童虐待への指導は可能なのか等
続いて事前に厚生労働省に対して行っていた、質問項目への回答がなされました。一部抜粋します。
「たとえ児童虐待防止法に法的根拠がなくても、輸血拒否やムチ打ちについて、また未成年期に対する排斥処分の問題についてエホバの証人に対して、すみやかに指導すべきではないか。指導して頂けませんか」などについて、同省の羽野室長は「宗教法人に対して法的にどんな措置ができるのか、検討したい」と答えます。
「エホバの証人が未成年に対して排斥処分を行い、家族が無視するのは児童虐待に当たるのではないですか」
これに関して「排斥に関しては『宗教の信仰等に関係する児童虐待等への対応に関するQ&A』の3ー1にて「児童を無視する・嫌がらせをする等拒否的な態度を継続的に示すことで、宗教活動等への参加を強制することや進路や就労先等に関する児童本人の自由な決定を阻害することは、いずれも心理的虐待又はネグレクトに該当するとしています」との答えでした。
「189(いちはやく)」と「親子のための相談LINE」の活用
羽野室長は、相談先として「児童相談所虐待対応ダイヤル『189(いちはやく)』に連絡をしてほしい」と話します。この電話は通告・相談は匿名でも行うことができます。
「また『親子のための相談LINE』の運用を2月から始めています。LINEで友達追加をすることで、管轄の児童相談所とやりとりできようになっています。一部の自治体は4月からの本格運用となります」(同室長)
今、宗教的虐待に悩む子供たちがいれば、ためらわず相談先に連絡をして下さい。
輸血拒否の問題にも、忌避の問題が影を落とす
前回のヒアリングでも議論になった「過去10年間で医療拒否、輸血拒否で亡くなった児童は何人ですか。そのうち宗教的ネグレクトやエホバの証人が関係する案件はそれぞれ何件でしたか」や「過去10年で、エホバの証人による医療拒否や輸血拒否に対して親権拒否により医療行為を行ったのは何件ですか」などの質問については「現在、実態把握に向けて、動いています」と厚生労働省からの答えで、まだ時間はかかりそうですが、今後、数字は明らかになってくるものと思われます。
同党の柚木議員からも「18歳未満の輸血に対しては、緊急避難にあたるはずですので、現場の医師の医療行為が罪に問われず、不安にならずに治療ができるように、明確に通知を出してほしい」と強い求めがありました。同省からも、通知に関しては「検討します」との答えでした。
田中弁護士は「自分の所属する唯一のコミュニティから排斥されるという恐怖心が、輸血拒否の動機付けにされている恐れがある」とも話します。まさに冒頭の「忌避が最大の問題」と位置付ける理由を強く感じます。
最後に小松猛さんも、今、忌避や輸血拒否の問題に直面している子供たちを思い「子供たちが救われる社会になってほしい」と強く訴えました。
【42回国対ヒアリングの旧統一教会問題は、下記記事にて報じております】