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まったく正反対の #Amazon#ZOZO の宅配スピードに対する意識の違い

神田敏晶ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント
出典:ZOZO

KNNポール神田です。
大手通販サイトの『Amazon』と『ZOZO』の宅配サービスのリリースで、とても対照的なサービスが開始された。しかも2024年8月5日に同時のリリースだ。まさにウサギと亀のレースのような展開のスタートとなった。

■Amazon 国内47都道府県 翌日宅配可能に!


Amazonは、ついに北海道でも翌日配送が可能になったと2024年8月5日に発表した。

□Amazonはこの夏、北海道への航空輸送利用をスタートし、商品を翌日中にお届けできるようになりました。この航空輸送の実現により、全国47都道府県で翌日配送サービスをご利用いただけます
□Amazonでは、対象商品を前日の一定の時間までにご注文いただくと、翌日中にお届けする翌日配送
700万点以上の対象商品を前日の正午までのご注文で、北海道への翌日のお届けが可能となります。
□また、札幌市、旭川市、函館市、帯広市などの一部の地域においては、約20万点の対象商品のご注文時に、ご注文当日に商品をお届けする「当日お急ぎ便」の利用も可能になります。
https://www.aboutamazon.jp/news/delivery-and-logistics/amazon-launches-next-day-delivery-in-hokkaido

ついに北海道も航空輸送によって、翌日に700万点以上の対象商品が前日の午前中に注文すると翌日配送が可能になるという。驚きなのが、20万点の対象商品に関しては北海道までの『当日お急ぎ便』が利用になれるということだ。


物流2024年問題』は、どこに消えてしまったのかというほどの逆行する発表だ。『ヤマト運輸』『日本郵便』は翌日配送を縮小する中、 Amaonは、あえて逆の戦略をとったということだ。

沖縄県でも2022年11月より、豊見城市でAmazonデリバリーステーションが開設され『航空便』が利用されている。そして、『Amazon Flex』という、『黒ナンバー』の軽車両を活用するシェアリングエコノミーの活用だ。

なんといっても個人事業者の業務請負契約で好きな時間に好きなエリアで働くという『フレックス』な働き方にこそ特徴がある。

物流事業に、個人事業者の配達業務参入という秘策があった。

出典:amazon
出典:amazon


つまり個人事業主たちが、全国の翌日物流を『配送会社』に変わり、『翌日配送』支えているといっても過言ではないだろう。

報酬も『1時間程度の配達で最大1886円、1週間程度の配達で最大94,300円も可能』と謳われている。『物流2024年問題』に対して、物流産業以外からもサービスを調達していたのである。
また、アプリをダウンロードして開始できるというのもとても身軽だ。また、黒ナンバー『軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)』にすることによって、軽自動車の『重量税』『車両税』が安くなるというメリットがある。
自家用車の黄色ナンバーと比較すると重量税は6,600円、自動車税は5,000円、黒ナンバーの場合、重量税は5,200円(▲1400円)、自動車税は3,800円(▲1200円)で13年以下だと年間2600円安くなる。黒ナンバーの登録費用は3,000円程度。車庫証明費用500円(別途、駐車場は必要)などを入れると2年目から安くなる計算となる。『任意保険料』は高めになるが、1台で事業用と個人使用の2台分の利用と考えることもできる。
普段使っている軽自動車を『Amazon Flex』のための『黒ナンバー』にすることによって節税効果を期待しながら、スポットワークとして働くことが可能となるのだ。

■社会実験が変えたZOZOの『ゆっくり配送』という視点

一方、まったく、Amazonと真逆なのが、ZOZOの『ゆっくり配送』も2024年8月5日の同日にリリースがあった。

□ゆっくり配送は、商品注文日の7日後から10日後までに発送する新たな配送の選択肢で、注文から発送までのリードタイムが通常配送に比べ最大で6日長くなります。
□(試験導入の)利用者別では30代から50代の女性のお客様に、地域別では北海道在住のお客様にゆっくり配送を多くご利用いただきました。
働き方改革関連法の施行による「2024年問題」への対応として、2024年4月に試験導入を実施したところ、「注文のおまとめ」促進による配送件数の削減や、繁閑に応じた発送作業の分散による配送の効率化などの効果を確認できた
ゆっくり配送の本格導入により、配送ドライバーの負担軽減CO2排出量の低減等のさらなる効果を見込んでいます。今後は発送までのリードタイムを活用したモーダルシフトも検討していくほか、セール等で特に配送件数が増加する繁忙期に合わせて、ゆっくり配送を選択したお客様へZOZOポイントを付与するなどゆっくり配送の効果を最大化させるための検証を行ってまいります。
□現在、ZOZOTOWNでは、注文の約8割が「あんしん置き配」で配送される
□サステナビリティステートメント「ファッションでつなぐ、サステナブルな未来へ。」と、企業理念である「世界中をカッコよく、世界中に笑顔を。」の実現を目指してまいります。
https://corp.zozo.com/news/20240805-yukkuri-delivery/

ZOZOのリリースを読見込めば読み込むほど、ZOZOのうまさが際立っている

ZOZOの言う、『サスティナブル』というステートメントもあるが、何よりも『注文のおまとめ』が促進されたことが大きい。『ゆっくり配送』を利用することの『エシカル消費』が促進され、サスティナブル意識の高い環境負荷削減もファッショントレンドのひとつとして、30〜50代の女性に利用される。さらにZOZOの8割のユーザーがすでに『あんしん置き配』(デフォルトがすでに置き配設定)という、受取対応の不要のサービスを利用しているところも『2024年問題』の『再配達』をまったく不要としている。『置き配』は日本の盗難率の低さという文化度がもたらしている最大の文化だと筆者は考えている。

Amazonも差別化としての、全国どこでも『翌日配達』はありかもしれないが、『ZOZO』の『ゆっくり配送』方式でポイント還元率を高めたほうが、経営効率は、さらに改善されるのではないだろうか?
また、翌日配送で送料無料だからと思い、個別でいくつも配送されてきても『置き配』対応でないと受取の頻繁さによる対応が煩わしい

かつて、米シリコンバレーで人気だった『Webban』の宅配では、近所に配達がくる曜日と時間に注文すると送料が無料となるスケジューリングデリバリーがあったり、配達指定時間に在宅していると、ポイント還元があったのでとても重宝していた。同時に環境に良いことをしているという満足度も得られた

何よりもエンドユーザーが『翌日配送』や『当日配送』の速さの『便利さ』を求めているのか、むしろ、サスティナブルでエコで人に優しい社会を求めるのかで大きく『2024年問題』は変わりそうだ

ITジャーナリスト・ソーシャルメディアコンサルタント

1961年神戸市生まれ。ワインのマーケティング業を経て、コンピュータ雑誌の出版とDTP普及に携わる。1995年よりビデオストリーミングによる個人放送「KandaNewsNetwork」を運営開始。世界全体を取材対象に駆け回る。ITに関わるSNS、経済、ファイナンスなども取材対象。早稲田大学大学院、関西大学総合情報学部、サイバー大学で非常勤講師を歴任。著書に『Web2.0でビジネスが変わる』『YouTube革命』『Twiter革命』『Web3.0型社会』等。2020年よりクアラルンプールから沖縄県やんばるへ移住。メディア出演、コンサル、取材、執筆、書評の依頼 などは0980-59-5058まで

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